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絡み合う陰謀
44.諭すはフォーズ
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「悪いが今回はもう手加減はしないからな」
「黙れっ・・・!!」
敵のケイスも最初から俺を殺しに来ていると一撃目で理解した。
前回のような余裕のある剣撃では無い。
鬱憤・・・。
そんな感想が脳裏に過る。
「随分と荒いようだな。どうした? 話し聞いてやろうか?」
「黙れと言った!!!」
大振りに振り上げた剣が俺の居た地面を叩き壊した。これじゃあ本当に何かあったとしか思えないな。
何となくではあるが、予想が付く。
「お前がここに配置されてるって事は、俺はここへ来るように差し向けられた。シアマ村で起きた突然の襲撃、保安局の連中かと思ったが。どうやら裏はお前等国安か」
ケイスの攻撃を防ぎながら喋る。確かに前回と比べて更に早く剣撃を繰り出しているが、あまりにも眼鏡らしからぬ動き。一打一打に品性が無いというか、あまりにも汚らしい。
「あの一件。奴隷商の元締めの件からのこれだ、明らかにルビヤへの嫌がらせか? どちらにせよ、こんな事をしたらお前等国安が奴隷商と何かしらの関係を持ってるって言ってるもんだが?」
「くっ・・・!」
また俺の居た地面が吹き飛ぶ。最小限の動きで攻撃を交わした。
息の上がり切ってるケイスと俺は、土煙りの中石の破片の雨を浴びていた。
ケイスは俺を睨む、そして俺はそんなケイスを哀れんだ目で見つめた。
そう、あまりにも哀れだと思ったから見ずには居られなかった。
「罪人・・・確かに俺は何かしらの罪を犯したのだろうから今も牢獄を寝床としている。けど、お前はどうなんだ?」
「・・・れ」
「自分はただ命令されただけです。だから関係ありません」
「・・まれ」
「言う事を聞かない人間は全て罪人。善良な気持ちを持って、みんなの為に奮闘しようが。意そぐわないのなら」
「・・・黙れ」
「消してしまおう。その様子だとあの奴隷商の元締めも――」
「黙れぇええええ!!!!」
図星の雄叫び。施設内に響くその声は、歓声を上げていた囚人達をも黙らせた。
そしてケイスは贈呈具を光り輝かした。この気配は一度感じた事がある。
あの時、サファイナとか言うルビヤの姉が現れて中断されたモノと同じだ。
「均衡は保たれなければならない。正義も悪も我々が決めることでは無い。所詮我々は、一つの駒でしか無いのだ」
おっしゃる通り。俺もお前も大局の駒でしかない。今俺達がやりあってどっちかが命を落としたとしても駒を動かす人間は痛くも痒くも無い。
そんな事、騎士兵時代から痛いほど、いやムカつく程に理解していたつもりだ。
だからこそ・・・。
「ルビヤは・・・あいつは駒じゃないぞ」
「・・・掬え! タイダルッ!!!」
ケイスが地面に剣を突き刺した途端、辺り一面が霧に覆われた。
冷たい霧が頬に触れる。これが奴の贈呈具の力か。
「っ!!?」
「貰ったぁあ!!」
一切の気配が無かった。間一髪で防御する事は出来た。
だが俺は簡単に吹き飛ばされた。
なんだこれ。俺は踏ん張ったはずだ、けれどたった一撃で宙に浮かされて地面に叩きつけられてしまっていた。
「これで終わりだ、罪人!!」
「終われる訳ないだろが!!!」
攻撃された方向とは別の方向からの追撃。あまりにも早すぎる。
それでも俺は、すぐさま結晶石を高出力に変更し迎撃に移りケイスの剣撃を跳ね退けた。
「往生際がっ!!」
「悪いのが取り柄でね!!」
体勢を立て直しすぐさま気を巡らせる。
視界があまりにも悪いというか、全く見えない。聞こえるのは霧で俺達の様子が見えないと豪語している囚人達の声だけ。
完全にこの施設全てがケイスの領域になっているという事か。
「ぐっ・・・!!」
背後からの剣撃。寸前で避け切れたが少しでも反応が遅れれば確実に首が飛んでいた。
迎撃した時に確信した。この霧は奴の力を増長させる物だと。
ルビヤの作った結晶石の力がいとも簡単に弾かれ相殺されるなんて普通じゃああり得ない。前回実際にこれを食らった時の奴の様子を見てもそれは間違いないはず。
だが先ほどの様子から見るに、もはや今の奴にとってそれはもはや脅威じゃなくなってる。
「危っ!!」
「ちぃ!!!」
これだけ四方八方から攻撃し続けているが何よりの証拠だ。
恐らく、何とかしてこっちの攻撃が通ったとしても、奴には届かないだろう。
こうなると、ただのジリ貧だ。
「さっさとくたばれ・・・!」
ジリ貧だとしても、俺は死ぬわけにはいかない。
こんな情緒不安定眼鏡に負ける訳にはいかねぇよなやっぱ。
セルマギアを再装填し直す。光りの刃を一度収め奴の攻撃に備える。
もはや視界なんて意味を為さない、ならば目を閉じ感覚を研ぎ澄ませ――。
「なっ・・・!?」
精魂込めた一撃を防がれて驚いてるのか。
もしくは。
「カッコいいだろう? "盾"にもなる俺の贈呈具」
「何処まで・・・貴様は!」
荒れ狂うかのように連撃を繰り出してくるケイス。けれどその全てを盾で防ぎ切ると更に息を荒くし大振りな攻撃を続ける。
この男の第一印象とはまるでかけ離れた行動に対し逆に俺が冷静になっていく。どれだけの事があろうと戦いは冷静でなければならない。
そうでないと、ただ命を失うだけなのだから・・・。
「もう勝負は付いた。今のお前じゃ勝てない」
「舐めるな、俺は負けない・・・貴様には」
完全にキレてる。
尊厳、プライド。奴がどういった事があったのかなんて詳しくはわからない。
踏み躙られたのは、今までの積み重ねきた物。今まで信じてきていた物。
なんだろうか、昔の自分を見ているような気もしてきた。
「貴様にだけは!!!」
どれだけ貢献しようと、どれだけの功績を上げてこようと、たった一つの出来事でそれは全て消滅する。
もはや抗いようの無い事実を残し、流れる時間に身を投じることしか出来ない。
そして今のこいつには俺は映っていない。もはや誰が相手であろうと関係なくなっている。
形振り構わず・・・か。
「霧が・・・消えていく」
最後の攻撃。充満していた霧の全てがケイスの持つ贈呈具に集約していく。
刃に渦を巻いている。なんか巨大な綿菓子を持っているみたいで少し面白いな。
「とは、言え・・・受け止められるか、あれを」
この一撃を止めることさえ出来れば雌雄は決する。
問題は、あの綿菓子を受け止めれるかどうか・・・。
「今度こそ・・・これで!」
「黙れっ・・・!!」
敵のケイスも最初から俺を殺しに来ていると一撃目で理解した。
前回のような余裕のある剣撃では無い。
鬱憤・・・。
そんな感想が脳裏に過る。
「随分と荒いようだな。どうした? 話し聞いてやろうか?」
「黙れと言った!!!」
大振りに振り上げた剣が俺の居た地面を叩き壊した。これじゃあ本当に何かあったとしか思えないな。
何となくではあるが、予想が付く。
「お前がここに配置されてるって事は、俺はここへ来るように差し向けられた。シアマ村で起きた突然の襲撃、保安局の連中かと思ったが。どうやら裏はお前等国安か」
ケイスの攻撃を防ぎながら喋る。確かに前回と比べて更に早く剣撃を繰り出しているが、あまりにも眼鏡らしからぬ動き。一打一打に品性が無いというか、あまりにも汚らしい。
「あの一件。奴隷商の元締めの件からのこれだ、明らかにルビヤへの嫌がらせか? どちらにせよ、こんな事をしたらお前等国安が奴隷商と何かしらの関係を持ってるって言ってるもんだが?」
「くっ・・・!」
また俺の居た地面が吹き飛ぶ。最小限の動きで攻撃を交わした。
息の上がり切ってるケイスと俺は、土煙りの中石の破片の雨を浴びていた。
ケイスは俺を睨む、そして俺はそんなケイスを哀れんだ目で見つめた。
そう、あまりにも哀れだと思ったから見ずには居られなかった。
「罪人・・・確かに俺は何かしらの罪を犯したのだろうから今も牢獄を寝床としている。けど、お前はどうなんだ?」
「・・・れ」
「自分はただ命令されただけです。だから関係ありません」
「・・まれ」
「言う事を聞かない人間は全て罪人。善良な気持ちを持って、みんなの為に奮闘しようが。意そぐわないのなら」
「・・・黙れ」
「消してしまおう。その様子だとあの奴隷商の元締めも――」
「黙れぇええええ!!!!」
図星の雄叫び。施設内に響くその声は、歓声を上げていた囚人達をも黙らせた。
そしてケイスは贈呈具を光り輝かした。この気配は一度感じた事がある。
あの時、サファイナとか言うルビヤの姉が現れて中断されたモノと同じだ。
「均衡は保たれなければならない。正義も悪も我々が決めることでは無い。所詮我々は、一つの駒でしか無いのだ」
おっしゃる通り。俺もお前も大局の駒でしかない。今俺達がやりあってどっちかが命を落としたとしても駒を動かす人間は痛くも痒くも無い。
そんな事、騎士兵時代から痛いほど、いやムカつく程に理解していたつもりだ。
だからこそ・・・。
「ルビヤは・・・あいつは駒じゃないぞ」
「・・・掬え! タイダルッ!!!」
ケイスが地面に剣を突き刺した途端、辺り一面が霧に覆われた。
冷たい霧が頬に触れる。これが奴の贈呈具の力か。
「っ!!?」
「貰ったぁあ!!」
一切の気配が無かった。間一髪で防御する事は出来た。
だが俺は簡単に吹き飛ばされた。
なんだこれ。俺は踏ん張ったはずだ、けれどたった一撃で宙に浮かされて地面に叩きつけられてしまっていた。
「これで終わりだ、罪人!!」
「終われる訳ないだろが!!!」
攻撃された方向とは別の方向からの追撃。あまりにも早すぎる。
それでも俺は、すぐさま結晶石を高出力に変更し迎撃に移りケイスの剣撃を跳ね退けた。
「往生際がっ!!」
「悪いのが取り柄でね!!」
体勢を立て直しすぐさま気を巡らせる。
視界があまりにも悪いというか、全く見えない。聞こえるのは霧で俺達の様子が見えないと豪語している囚人達の声だけ。
完全にこの施設全てがケイスの領域になっているという事か。
「ぐっ・・・!!」
背後からの剣撃。寸前で避け切れたが少しでも反応が遅れれば確実に首が飛んでいた。
迎撃した時に確信した。この霧は奴の力を増長させる物だと。
ルビヤの作った結晶石の力がいとも簡単に弾かれ相殺されるなんて普通じゃああり得ない。前回実際にこれを食らった時の奴の様子を見てもそれは間違いないはず。
だが先ほどの様子から見るに、もはや今の奴にとってそれはもはや脅威じゃなくなってる。
「危っ!!」
「ちぃ!!!」
これだけ四方八方から攻撃し続けているが何よりの証拠だ。
恐らく、何とかしてこっちの攻撃が通ったとしても、奴には届かないだろう。
こうなると、ただのジリ貧だ。
「さっさとくたばれ・・・!」
ジリ貧だとしても、俺は死ぬわけにはいかない。
こんな情緒不安定眼鏡に負ける訳にはいかねぇよなやっぱ。
セルマギアを再装填し直す。光りの刃を一度収め奴の攻撃に備える。
もはや視界なんて意味を為さない、ならば目を閉じ感覚を研ぎ澄ませ――。
「なっ・・・!?」
精魂込めた一撃を防がれて驚いてるのか。
もしくは。
「カッコいいだろう? "盾"にもなる俺の贈呈具」
「何処まで・・・貴様は!」
荒れ狂うかのように連撃を繰り出してくるケイス。けれどその全てを盾で防ぎ切ると更に息を荒くし大振りな攻撃を続ける。
この男の第一印象とはまるでかけ離れた行動に対し逆に俺が冷静になっていく。どれだけの事があろうと戦いは冷静でなければならない。
そうでないと、ただ命を失うだけなのだから・・・。
「もう勝負は付いた。今のお前じゃ勝てない」
「舐めるな、俺は負けない・・・貴様には」
完全にキレてる。
尊厳、プライド。奴がどういった事があったのかなんて詳しくはわからない。
踏み躙られたのは、今までの積み重ねきた物。今まで信じてきていた物。
なんだろうか、昔の自分を見ているような気もしてきた。
「貴様にだけは!!!」
どれだけ貢献しようと、どれだけの功績を上げてこようと、たった一つの出来事でそれは全て消滅する。
もはや抗いようの無い事実を残し、流れる時間に身を投じることしか出来ない。
そして今のこいつには俺は映っていない。もはや誰が相手であろうと関係なくなっている。
形振り構わず・・・か。
「霧が・・・消えていく」
最後の攻撃。充満していた霧の全てがケイスの持つ贈呈具に集約していく。
刃に渦を巻いている。なんか巨大な綿菓子を持っているみたいで少し面白いな。
「とは、言え・・・受け止められるか、あれを」
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