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三章一節
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「証拠は手に入れたが、どうしたものかな」
ディーンは訓練所を離れ、今後の事を考えていた。
(ガルバルドが黒だということは確定した。後はどうするかだ)
証拠は自分がここに持っているのである。
国王に渡せば間違いなく奴を罪に問うことは出来るだろう。だが・・・
(牢屋に入れられる程度で済むかもしれない。確かに私腹は肥やしている、だが俺達を襲わせた証拠はどこにもないからな)
ならば・・・
(この手で果たす、仲間達の復讐を、絶対に!)
ラズニールをはじめとした仲間達。皆、騎士としての誇りに満ちていた。
それを身勝手な理由で命ごと奪われたのだ。
その無念、晴らさずにはいられまい。
ディーンは目を閉じると、魔剣を鞘から抜き、天に掲げた。
魔剣は鈍く光り、その黒さで全てを塗りつぶしそうなくらいである。
「リリアから預かったこの魔剣、復讐に使いたくはなかったが、すまない、俺に力を貸してくれ」
そう言って語りかけると、剣が鈍く煌めいた気がした。
ディーンがそれを知ってか知らずか、魔剣を鞘に戻すのであった。
「さあ、行くとしようか」
ディーンの目線の先、そこには王城がそびえたっているのだった。
【深夜の王城】
覚悟を決めたディーンは、王宮へと繋がる門の前に姿を現した。
ガルバルドは王宮内に専用の自室を持ち、王城を出ることはない。
また自身の安全の為、常に配下の神官騎士に周りを護衛させており、奴に近づくことすら一筋縄ではいかないだろう。
「帰ってきた・・・か。このような事の為に帰ってきたとは、聖神リーファ様も大変お怒りだろうな」
聖騎士が復讐の為に黒騎士となって戻ってきたのだ、許されることではなかろう。
(まあ、許される必要もないけどな。それよりも問題は・・・)
ディーンの目線の先には、二人の見張りの騎士が立っている。一人は年配の聖騎士、もう一人は従騎士だろう。
傷があるとはいえ、さすがに仲間に顔を見られれば即、ギルであることはバレるだろう。
だからといって兜をつけたまま、すんなりと通してくれるはずなどない。
(・・・仕方ない)
ディーンは堂々と、見張りの騎士達に近づいていく。
騎士達はディーンに気づくと、すかさず剣に手を掛ける。
「このような夜更けに何用か?」
聖騎士がディーンに問い掛ける。
「緊急の要件にて、ガルバルド司祭長にお会いしたい。通してもらえないだろうか」
ディーンの返答に、聖騎士は訝しげに眉をひそめる。
「司祭長に?内容を教えてもらえるかな。申し訳ないが、はいどうぞと簡単には通せないのでな」
そう答える聖騎士に、ディーンは・・・
(まじめだな。まあ、だからこそ聖騎士になれるんだよな)
何か考えている様子のディーンを見て、聖騎士はことばを続ける。
「悪いが話せないなら無理だな。内容は話せない、しかも黒騎士のように真っ黒な鎧、しかも兜まで着けて顔がわからないときた。怪しすぎて通しようがない」
ごもっともだな、とディーンもそう思った。
とはいってもここで引き下がるわけにはいかない。兜に手を掛け、するりと兜を脱いだ。
ディーンの顔を見て、聖騎士が驚いた表情を浮かべる。
「ギ、ギル!?ギルなのか?生きていたのか?それにその格好は・・・」
驚きながら話す聖騎士に、ディーンが近づいていく。
「話せば長くなるが、とりあえずただいま、それとすまない」
そう言って素早く当て身を食らわせ、聖騎士を地に沈めた。
「え、なぜ?ギルさ・・・」
後ろで成り行きを見ていた従騎士にも、同じように当て身を食らわせ、ことばを言い終える前に地に沈んでもらう。
「すまないな、これしか方法が思い付かなかったんだ」
そう言って、二人を門の壁にもたれかけさせた。
「さて、行くとするか。ガルバルドのところに」
ディーンは見張りの居なくなった門をくぐり、城へと入っていった。
深夜ということもあり、王城内は静寂に包まれ、物音一つしていない。
(・・・静かだな。さて)
ディーンは周りの様子を窺いつつ、道を進んで行く。
少し進むと三方向の道へと繋がる広間に出る。
真っ直ぐ進めば国王がいる【謁見の間】並びに私室に繋がる。
常に近衛騎士団が守護しており、安全は保証されている。
とはいえ、今のところ用はない。
左に進めば聖騎士団の詰所があるが。
(寄るわけにはいかないな・・・)
少し悲しそうな表情をしたが、すぐに切り替え、右を向いた。
右の道に討つべき対象である、ガルバルドがいるのである。
だが、簡単にことは成さないだろう。
ここには神官騎士団の詰所があり、その先にガルバルドの部屋は存在する。
つまり、ガルバルドのもとに辿り着くには、配下の神官騎士団を突破しなければならないのだ。
(話し合いでどうにかなるわけないな。武力行使、か)
穏便に行きたいところだが、まあ無理だろう。
こちらとしてはガルバルドだけが狙いだが、向こうはそのガルバルドを守ってくる。傷付けたくはないが難しいだろう。
(いざという時は覚悟しよう)
そう決心し、ディーンは道を進んで行った。
【神官騎士団詰所前】
ディーンは神官騎士団の詰所近くまでやってくると、物陰に身を隠し、詰所の入口の様子を窺った。
見張りが二人立っており、中からも人の気配がしている。
おそらく十数名はいるだろう。
(傷付けないとか、甘いことは言ってられないな)
(まあ、こいつらを別に仲間だと思ってないからかまわないな)
ディーンが詰所の入口へと進んで行く。
見張りがディーンに気づき、槍をディーンへと向ける。
「誰だ、ここは神官騎士団の詰所。何の用か?」
「夜更けにすまない、我が名はディーン。ガルバルド司祭長に火急の報せがあり、こちらを訪れた。司祭長に取り次ぎ出来ないだろうか?」
そう言ったディーンに、見張りが槍を構える。
「そんな見た目の怪しい奴を通すわけがないだろうが。さっさと立ち去れ、さもなくば痛い目にあってもらうことになる」
「どうしても無理か?」
「しつこいぞ!無理なものは無理だ!たく、何でこんな奴を城内に通したんだ。見張りの聖騎士は何をしてたんだ」
悪態をつく神官騎士をしり目に、ディーンは鞘へと手を掛ける。
もう一人の見張りがそれに気づき、声を出す。
「やめておけ、中には18人の神官騎士がいるんだ、いくら腕が立とうと到底勝ち目は無いぞ。潔く引き返せ」
そう言って槍を下げた見張りをチラリと見ると、ディーンは後ろに少し下がった。
「そうだ、それでいい。そのまま帰・・・」
そう言いかけた見張りへとディーンが突っ込んでいく。
剣を抜き放ち、槍の先を切り飛ばす。
そのまま武器を失った見張りを、返す剣でなぎ払った。
鎧ごと体が上下に別れる。
勢いそのままに、血に濡れた剣で、もう一人の神官騎士の首を切り払った。
ヒュッ、と音をたて、首が放物線を描きながら飛んでいく。
一瞬にして詰所入口は血に染まることとなった。
「どうした!?」「なんだなんだ?」「なんの音だ?」
中から神官騎士達が騒ぎを聞きつけ、次々と出てくる。
血だまりが出来たその光景を見て、神官騎士達がことばを失う中、ディーンが彼らに警告をする。
「死にたくないならそこを通してもらいたい。用があるのは奥にいるガルバルドだけだからな」
そう言ったディーンに神官騎士達は一瞬怯んだが、直ぐに武器を構え、向き合った。
「仲間を切っておいてふざけるな!生かして帰すな!」
神官騎士達はディーンへと向かって行く。
一人はメイスで殴りかかり、一人は剣で斬りかかった。
ディーンはそれをかわそうとせず、向かってくる神官騎士二人を、腰を落として剣で横なぎに切り払った。
先ほどの見張りと同じように両断され、彼らは物言わぬ骸へと成り果てた。
「こ、こいつ、か、囲め!包囲して仕留めろ!」
身なりの良い神官騎士が叫ぶと、剣を構えた四人の神官騎士がディーンを取り囲んだ。
「殺せ!!」のことばと共に、一斉にディーンへと斬りかかる。
(逃げ場がないなら!)
ディーンは前方の神官騎士に突っ込んで行く。
神官騎士もディーンと同じく全身鎧であり、動きが鈍く遅い。
だが、ディーンの全身鎧はマジックアーマーであり、その動きは軽く速い。
その差は圧倒的であった。
瞬時に包囲を突破し、目の前の神官騎士を、構えられた剣ごと切り捨てた。
そして振り向くと同時に、投げナイフを投擲する。
ナイフは吸い込まれるように、後ろにいた神官騎士の喉元へと突き刺さる。
血を吹きながら倒れるそれを横目に、ディーンが残りの神官騎士を煽っていく。
「どうした?天下の神官騎士とはこの程度か?弱すぎるな!」
「き、きさま、馬鹿にしやがって!ええい、10人で奴にかかれ!残りは詠唱だ、覚悟しろ!!」
身なりの良い神官騎士が命令を下すと、一部を残して神官騎士達がこちらに向かってくる。
(時間稼ぎをして、魔術で仕留める気か)
「詠唱完了まで持つと思っているのか?甘いなあ!」
そう言って向かってくる神官騎士達を一刀のもと、斬り捨てていく。
一人目は横なぎ、二人目は袈裟斬り、三人目は縦に両断された。
続く四人目も首を飛ばされ、骸の仲間入りとなった。
20秒もしないうちに、神官騎士10人は皆等しく、骸へと成り果てた。
休むことなく、詠唱中の神官騎士へと向かって行く。
向かってくるディーンに、彼らは恐怖の表情を浮かべている。
当然だろう、詠唱中は身動き出来ず、隙だらけであり、接近されれること、それ即ち死なのである。
神官騎士が使用する魔術は、聖魔術と呼ばれる魔術であり、30秒程度の詠唱時間を要するが、軒並み威力が高いため、直撃すればマジックアーマーを身に付けているディーンとはいえ、ただでは済まないだろう。
とはいえ、詠唱が終わるまで待つほど馬鹿ではない。
最初の神官騎士を斬り捨て、次の神官騎士を両断すると、残りの投げナイフを身なりの良い神官騎士に投擲した。
「聖神リーファの名のもとに、裁きをくださん!」
寸前のところで詠唱が終わったようだ。そして迫りくるナイフを・・・
近くにいた神官騎士を引き寄せ、盾にした。
ナイフは盾になった神官騎士に突き刺さる。
「げぶ・・・ひどいぜ、副団・・・」
行き絶えた神官騎士のことばにディーンは気づく。
(ああ、よくみたら神官騎士団の副団長か。いつも嫌みばかり言っていたな。あれで聖職者だからな、世も末だとよく思ったものだ)
そんなディーンに、副団長がメイスを向けて叫ぶ。
「神の裁きを受けるがいい!ホーリーボルト!!」
ディーンに向かって、白い閃光玉が飛んでいく。
【ホーリーボルト】聖魔術の中でも威力の高い魔術であり、魔力だけでなく、聖神への信仰心も関わってくるといわれている。
光の玉が飛んで行き、対象を神の光で焼き尽くす魔術である。
ホーリーボルトはディーンに直撃した。
白い光に包まれ、白く燃え上がっている。
「どうだ!これならば骨すら残るまい、黒い鎧の異端者が思い知ったか!」
勝った、副団長はそう思った。だが、
「・・・この程度か?」
ディーンの声が部屋に響きわたる。
「ば、ばかな、なぜ生きている?直撃したはずだ!」
驚く副団長をしり目に、纏っていたマントを靡かせる。
まとわりついていた白い炎が掻き消され、四散霧散した。
ありがたいことに、マントに耐魔術が付与されていたため、防ぐことが出来た、といったところだ。
勿論、副団長の信仰心の低さもあるのだが。
「聖神への信仰心が低いからかもな?神官が聞いてあきれるよな、ははは」煽りながら副団長に近づいていく。
「ぬうう、馬鹿にしやがって!」
「それしか言えないのか?悪いが馬鹿に付き合っている暇はない。じゃあな」
「な・・・」
何か言おうとしたのだろうが、ことばを紡ぐことは出来なかった。
紡ごうとした時には既に首と体はお別れをしていたからだ。
生者がいなくなり静かになった詰所で、ふと机の上に目を向けると。
「酒とカード・・・賭け事か。これが聖神リーファに仕える神官の有り様か」
切り捨てたことを、少しでも申し訳なく思ったのが馬鹿らしい。
「20人か、まあこんな奴等殺したところで問題ないな」
そう言ったディーンの目に妖しい光が宿っていた。
そして血を吸った魔剣も同じように妖しく煌めくのであった。
「さあ、ガルバルドの部屋は直ぐそこだ、急がなければ。他の騎士団が来る前に片を付ける。奴を斬れば終わる、全てがな」
ディーンは歩いていく、ガルバルドのもとへ。
そして破滅へと踏み出したのであった。
ディーンは訓練所を離れ、今後の事を考えていた。
(ガルバルドが黒だということは確定した。後はどうするかだ)
証拠は自分がここに持っているのである。
国王に渡せば間違いなく奴を罪に問うことは出来るだろう。だが・・・
(牢屋に入れられる程度で済むかもしれない。確かに私腹は肥やしている、だが俺達を襲わせた証拠はどこにもないからな)
ならば・・・
(この手で果たす、仲間達の復讐を、絶対に!)
ラズニールをはじめとした仲間達。皆、騎士としての誇りに満ちていた。
それを身勝手な理由で命ごと奪われたのだ。
その無念、晴らさずにはいられまい。
ディーンは目を閉じると、魔剣を鞘から抜き、天に掲げた。
魔剣は鈍く光り、その黒さで全てを塗りつぶしそうなくらいである。
「リリアから預かったこの魔剣、復讐に使いたくはなかったが、すまない、俺に力を貸してくれ」
そう言って語りかけると、剣が鈍く煌めいた気がした。
ディーンがそれを知ってか知らずか、魔剣を鞘に戻すのであった。
「さあ、行くとしようか」
ディーンの目線の先、そこには王城がそびえたっているのだった。
【深夜の王城】
覚悟を決めたディーンは、王宮へと繋がる門の前に姿を現した。
ガルバルドは王宮内に専用の自室を持ち、王城を出ることはない。
また自身の安全の為、常に配下の神官騎士に周りを護衛させており、奴に近づくことすら一筋縄ではいかないだろう。
「帰ってきた・・・か。このような事の為に帰ってきたとは、聖神リーファ様も大変お怒りだろうな」
聖騎士が復讐の為に黒騎士となって戻ってきたのだ、許されることではなかろう。
(まあ、許される必要もないけどな。それよりも問題は・・・)
ディーンの目線の先には、二人の見張りの騎士が立っている。一人は年配の聖騎士、もう一人は従騎士だろう。
傷があるとはいえ、さすがに仲間に顔を見られれば即、ギルであることはバレるだろう。
だからといって兜をつけたまま、すんなりと通してくれるはずなどない。
(・・・仕方ない)
ディーンは堂々と、見張りの騎士達に近づいていく。
騎士達はディーンに気づくと、すかさず剣に手を掛ける。
「このような夜更けに何用か?」
聖騎士がディーンに問い掛ける。
「緊急の要件にて、ガルバルド司祭長にお会いしたい。通してもらえないだろうか」
ディーンの返答に、聖騎士は訝しげに眉をひそめる。
「司祭長に?内容を教えてもらえるかな。申し訳ないが、はいどうぞと簡単には通せないのでな」
そう答える聖騎士に、ディーンは・・・
(まじめだな。まあ、だからこそ聖騎士になれるんだよな)
何か考えている様子のディーンを見て、聖騎士はことばを続ける。
「悪いが話せないなら無理だな。内容は話せない、しかも黒騎士のように真っ黒な鎧、しかも兜まで着けて顔がわからないときた。怪しすぎて通しようがない」
ごもっともだな、とディーンもそう思った。
とはいってもここで引き下がるわけにはいかない。兜に手を掛け、するりと兜を脱いだ。
ディーンの顔を見て、聖騎士が驚いた表情を浮かべる。
「ギ、ギル!?ギルなのか?生きていたのか?それにその格好は・・・」
驚きながら話す聖騎士に、ディーンが近づいていく。
「話せば長くなるが、とりあえずただいま、それとすまない」
そう言って素早く当て身を食らわせ、聖騎士を地に沈めた。
「え、なぜ?ギルさ・・・」
後ろで成り行きを見ていた従騎士にも、同じように当て身を食らわせ、ことばを言い終える前に地に沈んでもらう。
「すまないな、これしか方法が思い付かなかったんだ」
そう言って、二人を門の壁にもたれかけさせた。
「さて、行くとするか。ガルバルドのところに」
ディーンは見張りの居なくなった門をくぐり、城へと入っていった。
深夜ということもあり、王城内は静寂に包まれ、物音一つしていない。
(・・・静かだな。さて)
ディーンは周りの様子を窺いつつ、道を進んで行く。
少し進むと三方向の道へと繋がる広間に出る。
真っ直ぐ進めば国王がいる【謁見の間】並びに私室に繋がる。
常に近衛騎士団が守護しており、安全は保証されている。
とはいえ、今のところ用はない。
左に進めば聖騎士団の詰所があるが。
(寄るわけにはいかないな・・・)
少し悲しそうな表情をしたが、すぐに切り替え、右を向いた。
右の道に討つべき対象である、ガルバルドがいるのである。
だが、簡単にことは成さないだろう。
ここには神官騎士団の詰所があり、その先にガルバルドの部屋は存在する。
つまり、ガルバルドのもとに辿り着くには、配下の神官騎士団を突破しなければならないのだ。
(話し合いでどうにかなるわけないな。武力行使、か)
穏便に行きたいところだが、まあ無理だろう。
こちらとしてはガルバルドだけが狙いだが、向こうはそのガルバルドを守ってくる。傷付けたくはないが難しいだろう。
(いざという時は覚悟しよう)
そう決心し、ディーンは道を進んで行った。
【神官騎士団詰所前】
ディーンは神官騎士団の詰所近くまでやってくると、物陰に身を隠し、詰所の入口の様子を窺った。
見張りが二人立っており、中からも人の気配がしている。
おそらく十数名はいるだろう。
(傷付けないとか、甘いことは言ってられないな)
(まあ、こいつらを別に仲間だと思ってないからかまわないな)
ディーンが詰所の入口へと進んで行く。
見張りがディーンに気づき、槍をディーンへと向ける。
「誰だ、ここは神官騎士団の詰所。何の用か?」
「夜更けにすまない、我が名はディーン。ガルバルド司祭長に火急の報せがあり、こちらを訪れた。司祭長に取り次ぎ出来ないだろうか?」
そう言ったディーンに、見張りが槍を構える。
「そんな見た目の怪しい奴を通すわけがないだろうが。さっさと立ち去れ、さもなくば痛い目にあってもらうことになる」
「どうしても無理か?」
「しつこいぞ!無理なものは無理だ!たく、何でこんな奴を城内に通したんだ。見張りの聖騎士は何をしてたんだ」
悪態をつく神官騎士をしり目に、ディーンは鞘へと手を掛ける。
もう一人の見張りがそれに気づき、声を出す。
「やめておけ、中には18人の神官騎士がいるんだ、いくら腕が立とうと到底勝ち目は無いぞ。潔く引き返せ」
そう言って槍を下げた見張りをチラリと見ると、ディーンは後ろに少し下がった。
「そうだ、それでいい。そのまま帰・・・」
そう言いかけた見張りへとディーンが突っ込んでいく。
剣を抜き放ち、槍の先を切り飛ばす。
そのまま武器を失った見張りを、返す剣でなぎ払った。
鎧ごと体が上下に別れる。
勢いそのままに、血に濡れた剣で、もう一人の神官騎士の首を切り払った。
ヒュッ、と音をたて、首が放物線を描きながら飛んでいく。
一瞬にして詰所入口は血に染まることとなった。
「どうした!?」「なんだなんだ?」「なんの音だ?」
中から神官騎士達が騒ぎを聞きつけ、次々と出てくる。
血だまりが出来たその光景を見て、神官騎士達がことばを失う中、ディーンが彼らに警告をする。
「死にたくないならそこを通してもらいたい。用があるのは奥にいるガルバルドだけだからな」
そう言ったディーンに神官騎士達は一瞬怯んだが、直ぐに武器を構え、向き合った。
「仲間を切っておいてふざけるな!生かして帰すな!」
神官騎士達はディーンへと向かって行く。
一人はメイスで殴りかかり、一人は剣で斬りかかった。
ディーンはそれをかわそうとせず、向かってくる神官騎士二人を、腰を落として剣で横なぎに切り払った。
先ほどの見張りと同じように両断され、彼らは物言わぬ骸へと成り果てた。
「こ、こいつ、か、囲め!包囲して仕留めろ!」
身なりの良い神官騎士が叫ぶと、剣を構えた四人の神官騎士がディーンを取り囲んだ。
「殺せ!!」のことばと共に、一斉にディーンへと斬りかかる。
(逃げ場がないなら!)
ディーンは前方の神官騎士に突っ込んで行く。
神官騎士もディーンと同じく全身鎧であり、動きが鈍く遅い。
だが、ディーンの全身鎧はマジックアーマーであり、その動きは軽く速い。
その差は圧倒的であった。
瞬時に包囲を突破し、目の前の神官騎士を、構えられた剣ごと切り捨てた。
そして振り向くと同時に、投げナイフを投擲する。
ナイフは吸い込まれるように、後ろにいた神官騎士の喉元へと突き刺さる。
血を吹きながら倒れるそれを横目に、ディーンが残りの神官騎士を煽っていく。
「どうした?天下の神官騎士とはこの程度か?弱すぎるな!」
「き、きさま、馬鹿にしやがって!ええい、10人で奴にかかれ!残りは詠唱だ、覚悟しろ!!」
身なりの良い神官騎士が命令を下すと、一部を残して神官騎士達がこちらに向かってくる。
(時間稼ぎをして、魔術で仕留める気か)
「詠唱完了まで持つと思っているのか?甘いなあ!」
そう言って向かってくる神官騎士達を一刀のもと、斬り捨てていく。
一人目は横なぎ、二人目は袈裟斬り、三人目は縦に両断された。
続く四人目も首を飛ばされ、骸の仲間入りとなった。
20秒もしないうちに、神官騎士10人は皆等しく、骸へと成り果てた。
休むことなく、詠唱中の神官騎士へと向かって行く。
向かってくるディーンに、彼らは恐怖の表情を浮かべている。
当然だろう、詠唱中は身動き出来ず、隙だらけであり、接近されれること、それ即ち死なのである。
神官騎士が使用する魔術は、聖魔術と呼ばれる魔術であり、30秒程度の詠唱時間を要するが、軒並み威力が高いため、直撃すればマジックアーマーを身に付けているディーンとはいえ、ただでは済まないだろう。
とはいえ、詠唱が終わるまで待つほど馬鹿ではない。
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「聖神リーファの名のもとに、裁きをくださん!」
寸前のところで詠唱が終わったようだ。そして迫りくるナイフを・・・
近くにいた神官騎士を引き寄せ、盾にした。
ナイフは盾になった神官騎士に突き刺さる。
「げぶ・・・ひどいぜ、副団・・・」
行き絶えた神官騎士のことばにディーンは気づく。
(ああ、よくみたら神官騎士団の副団長か。いつも嫌みばかり言っていたな。あれで聖職者だからな、世も末だとよく思ったものだ)
そんなディーンに、副団長がメイスを向けて叫ぶ。
「神の裁きを受けるがいい!ホーリーボルト!!」
ディーンに向かって、白い閃光玉が飛んでいく。
【ホーリーボルト】聖魔術の中でも威力の高い魔術であり、魔力だけでなく、聖神への信仰心も関わってくるといわれている。
光の玉が飛んで行き、対象を神の光で焼き尽くす魔術である。
ホーリーボルトはディーンに直撃した。
白い光に包まれ、白く燃え上がっている。
「どうだ!これならば骨すら残るまい、黒い鎧の異端者が思い知ったか!」
勝った、副団長はそう思った。だが、
「・・・この程度か?」
ディーンの声が部屋に響きわたる。
「ば、ばかな、なぜ生きている?直撃したはずだ!」
驚く副団長をしり目に、纏っていたマントを靡かせる。
まとわりついていた白い炎が掻き消され、四散霧散した。
ありがたいことに、マントに耐魔術が付与されていたため、防ぐことが出来た、といったところだ。
勿論、副団長の信仰心の低さもあるのだが。
「聖神への信仰心が低いからかもな?神官が聞いてあきれるよな、ははは」煽りながら副団長に近づいていく。
「ぬうう、馬鹿にしやがって!」
「それしか言えないのか?悪いが馬鹿に付き合っている暇はない。じゃあな」
「な・・・」
何か言おうとしたのだろうが、ことばを紡ぐことは出来なかった。
紡ごうとした時には既に首と体はお別れをしていたからだ。
生者がいなくなり静かになった詰所で、ふと机の上に目を向けると。
「酒とカード・・・賭け事か。これが聖神リーファに仕える神官の有り様か」
切り捨てたことを、少しでも申し訳なく思ったのが馬鹿らしい。
「20人か、まあこんな奴等殺したところで問題ないな」
そう言ったディーンの目に妖しい光が宿っていた。
そして血を吸った魔剣も同じように妖しく煌めくのであった。
「さあ、ガルバルドの部屋は直ぐそこだ、急がなければ。他の騎士団が来る前に片を付ける。奴を斬れば終わる、全てがな」
ディーンは歩いていく、ガルバルドのもとへ。
そして破滅へと踏み出したのであった。
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