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三章二節
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【司祭長執務室兼寝室】
足音、金属音、怒声、様々な音によってガルバルドは目を覚ました。
「うむむ、騒がしい!こんな時間に何ごとですか!」
ベッドから起き上がり、側に控えさせていた神官騎士の一人に様子を見に行かせることした。
どうせいつものように酒を飲み、酔って暴れているのだろう。
毎度のことではあるが、いい加減にしてもらいたいものである。
イライラとそんなことを考えながら、様子を見に行かせた神官騎士を待っていると、すぐに神官騎士は戻ってきた、が様子がおかしい。
青ざめた表情の騎士が、声を震わせながらガルバルドへ状況を伝える。
「ガルバルド様!て、敵襲です!す、既に半数はやられ、外は血の海です」
「そんな馬鹿なことがあるか!詰所には副団長を含めて20人はいるんだぞ!」
ガルバルドの護衛に残っていた神官騎士が、その報告に怒声をあげた。
「嘘じゃない!殆んどが床に転がってたんだ・・・おそらくは既に・・・」
言い合う二人の神官騎士を制し、ガルバルドが口を開いた。
「それでどんな奴です?人数は?」
「一人です、間違いありません。黒の全身鎧で、顔はわかりません。ただ、恐ろしく素早い身のこなしと、鋭すぎる剣を持っていました」
「黒騎士ですか、思い当たるのは・・・いませんねえ」
記憶を辿ってみたが、そのような人物は思い当たらなかった。
まあどこかで恨みはかっているだろうから、知らない内に、と言った所だろう。
「まあいい、取り敢えず私は逃げるとしましょう。話を聞く限り、副団長たちではその黒騎士には勝てないでしょう。君たちはここに残り、部屋に入ってきた黒騎士を抑え、時間を稼ぐのです。いいですね?」
そう言って、逃げ出そうとするガルバルドに、必死に神官騎士たちがすがりつく。
「そ、そんな私たちに死ねというのですか?お願いします、どうか我々も連れていってください!」
そんな騎士たちを見て、ガルバルドは、はあ、と溜め息をつく。
「そんなこと言われましてもねえ、君たちが時間を稼がないと見つかってしまいますからね」
「そこを何とか!」
なおもすがり付いてくる騎士たちに、ガルバルドは観念したかのように声を出す。
「わかりました、仕方ないですねえ。連れてってあげますよ。それでは先ず抜け道を出しませんとね」
そう言って本棚の中の一冊の本を奥に押し込んだ。
本棚は鈍い音をたてながら動き、下に隠されていた階段を露出させた。
「・・・悪いですが気が変わりました。君たちは居残りです!」
そう言うと同時に、いつの間にか持っていた魔術書を使い、騎士たちに魔術をかける。
「汝らは狂信者、邪神イビリスの駒となり、眼前の敵を抹殺する者なり!」
魔術をかけられた二人の神官騎士は、だらりと腕を降ろし、その場に立ち尽くしている。
「せいぜい俺の為に黒騎士とやらを止めてくれや。あばよ!」
汚いことばを吐きながら、ガルバルドは隠し階段を足早に降りていくのだった。
バン!と勢いよく乱暴に扉を蹴り開け、ディーンは室内へと侵入した。
ここにガルバルドが居る筈、そう思い周りを見渡すと二人の神官騎士が佇んでいた。
・・・?様子がおかしい。全員下を向いて、微動だにしないのである。
警戒しつつも、ゆっくりと神官騎士たちに近づいていく。
動かない・・・と思った瞬間だった。
彼らは不意に顔をあげると、ディーンへと飛び掛かって来たのであった。
その目はどこか虚ろで狂気に満ち、口からは涎を垂らしていた。
咄嗟のことに、ディーンは後ろに飛び退き、メイスの一撃をかわした。
メイスは地面に叩きつけられ、地面ごと粉々に砕け散った。
尋常な力ではない。
その証拠にその神官騎士の腕はあらぬ方向を向いている。骨は砕け、筋もズタズタであろう。
だが、そんなことなど気にならないとばかりに、砕けたメイスをその壊れた腕で掴み、プラプラさせながら近づいてくるのだ。
「これはまさか、いや間違いない。ガルバルドの野郎!」
ディーンはこのイカれた様子に覚えがあった。
いつだったか、邪神崇拝の狂信者のアジトを制圧する任務に就いたときがあった。
邪教徒は後がないとわかると、仲間にある魔術をかけ、聖騎士たちに向かってきたのである。
襲い掛かってきた邪教徒に対して、騎士たちは迎撃したがあまりの力に打ち負け、何人かの騎士は叩き潰されその命を絶たれた。
狂気に満ちた目、常軌を逸した力、あの時の邪教徒と同じであった。
その魔術とは・・・
【バーサク】それはかけられた者の精神を操り、自我をなくし、敵と認識したものに襲い掛かるようにする魔術であり、もちろんそのような悪き魔術は聖魔術ではない。
それは忌み嫌われる魔術であり、聖魔術とは反対に属する禁術、【闇魔術】であった。
このガルバルド、聖職者でありながら闇魔術を使う異端者でもあったのだ。
向かってくる神官騎士の攻撃をかわしながら、ディーンが怒りに満ちたことばを口にする。
「仲間にバーサクとは、さすが司祭長様だな!神官騎士には同情しちまうな」
バーサクをかけられた者は痛みを感じず、ただ目の前の相手を殺すまで戦い続けるのである。
彼らを解放する方法、それは死以外にない。一度かかればそれまでなのである。
「とはいえ、どうせ斬り捨てる予定だったからな、殺すことに変わりはないな」
そう呟き、一番近くにいた神官騎士を横なぎで斬り捨てる。
バーサクにかかれば力は恐ろしいほどに強くなる、それこそ筋肉馬鹿のオークに匹敵するほどだろう。
だがそれだけである。
動きは素早く力もあるが単調、防御もしないし連携もない。
しっかりと攻撃を見極め、かわして反撃すればいいのである。
何も恐れることなどない。
ディーンは冷静に対処し、一人ずつ確実に葬っていった。
1分も掛からなかっただろう。二人の哀れな神官騎士は仲良く血の海に沈んだのだった。
二人目の神官騎士を斬り捨てたところで、改めて周りを見渡してみる。
予想はしていたが、ガルバルドの姿はここには見当たらなかった。
「いないな、逃げたか。とはいえ入口は一つ。おそらく隠しかなんかだろうな」
怪しいところがないか調べてみると、壁際に本棚がポツンと置かれていた。
「これか?」取り敢えず押してみるが、とても重く動きそうにない。
「・・・めんどくさいな」
剣を構え、本棚を十字に切り裂いた。
「ふん!」
掛け声と共に、ディーンは思い切り本棚を蹴り飛ばした。
本棚はガラガラと崩れ、その後ろに階段を現した。
「ガルバルド、逃がしはしねえよ。この剣に必ずお前の血を吸わせてやるからな」
ディーンは階段を駆け降りていく、その足取りはどこか楽しげな音を奏で、そして何よりも狂気を纏っているかのようだった。
足音、金属音、怒声、様々な音によってガルバルドは目を覚ました。
「うむむ、騒がしい!こんな時間に何ごとですか!」
ベッドから起き上がり、側に控えさせていた神官騎士の一人に様子を見に行かせることした。
どうせいつものように酒を飲み、酔って暴れているのだろう。
毎度のことではあるが、いい加減にしてもらいたいものである。
イライラとそんなことを考えながら、様子を見に行かせた神官騎士を待っていると、すぐに神官騎士は戻ってきた、が様子がおかしい。
青ざめた表情の騎士が、声を震わせながらガルバルドへ状況を伝える。
「ガルバルド様!て、敵襲です!す、既に半数はやられ、外は血の海です」
「そんな馬鹿なことがあるか!詰所には副団長を含めて20人はいるんだぞ!」
ガルバルドの護衛に残っていた神官騎士が、その報告に怒声をあげた。
「嘘じゃない!殆んどが床に転がってたんだ・・・おそらくは既に・・・」
言い合う二人の神官騎士を制し、ガルバルドが口を開いた。
「それでどんな奴です?人数は?」
「一人です、間違いありません。黒の全身鎧で、顔はわかりません。ただ、恐ろしく素早い身のこなしと、鋭すぎる剣を持っていました」
「黒騎士ですか、思い当たるのは・・・いませんねえ」
記憶を辿ってみたが、そのような人物は思い当たらなかった。
まあどこかで恨みはかっているだろうから、知らない内に、と言った所だろう。
「まあいい、取り敢えず私は逃げるとしましょう。話を聞く限り、副団長たちではその黒騎士には勝てないでしょう。君たちはここに残り、部屋に入ってきた黒騎士を抑え、時間を稼ぐのです。いいですね?」
そう言って、逃げ出そうとするガルバルドに、必死に神官騎士たちがすがりつく。
「そ、そんな私たちに死ねというのですか?お願いします、どうか我々も連れていってください!」
そんな騎士たちを見て、ガルバルドは、はあ、と溜め息をつく。
「そんなこと言われましてもねえ、君たちが時間を稼がないと見つかってしまいますからね」
「そこを何とか!」
なおもすがり付いてくる騎士たちに、ガルバルドは観念したかのように声を出す。
「わかりました、仕方ないですねえ。連れてってあげますよ。それでは先ず抜け道を出しませんとね」
そう言って本棚の中の一冊の本を奥に押し込んだ。
本棚は鈍い音をたてながら動き、下に隠されていた階段を露出させた。
「・・・悪いですが気が変わりました。君たちは居残りです!」
そう言うと同時に、いつの間にか持っていた魔術書を使い、騎士たちに魔術をかける。
「汝らは狂信者、邪神イビリスの駒となり、眼前の敵を抹殺する者なり!」
魔術をかけられた二人の神官騎士は、だらりと腕を降ろし、その場に立ち尽くしている。
「せいぜい俺の為に黒騎士とやらを止めてくれや。あばよ!」
汚いことばを吐きながら、ガルバルドは隠し階段を足早に降りていくのだった。
バン!と勢いよく乱暴に扉を蹴り開け、ディーンは室内へと侵入した。
ここにガルバルドが居る筈、そう思い周りを見渡すと二人の神官騎士が佇んでいた。
・・・?様子がおかしい。全員下を向いて、微動だにしないのである。
警戒しつつも、ゆっくりと神官騎士たちに近づいていく。
動かない・・・と思った瞬間だった。
彼らは不意に顔をあげると、ディーンへと飛び掛かって来たのであった。
その目はどこか虚ろで狂気に満ち、口からは涎を垂らしていた。
咄嗟のことに、ディーンは後ろに飛び退き、メイスの一撃をかわした。
メイスは地面に叩きつけられ、地面ごと粉々に砕け散った。
尋常な力ではない。
その証拠にその神官騎士の腕はあらぬ方向を向いている。骨は砕け、筋もズタズタであろう。
だが、そんなことなど気にならないとばかりに、砕けたメイスをその壊れた腕で掴み、プラプラさせながら近づいてくるのだ。
「これはまさか、いや間違いない。ガルバルドの野郎!」
ディーンはこのイカれた様子に覚えがあった。
いつだったか、邪神崇拝の狂信者のアジトを制圧する任務に就いたときがあった。
邪教徒は後がないとわかると、仲間にある魔術をかけ、聖騎士たちに向かってきたのである。
襲い掛かってきた邪教徒に対して、騎士たちは迎撃したがあまりの力に打ち負け、何人かの騎士は叩き潰されその命を絶たれた。
狂気に満ちた目、常軌を逸した力、あの時の邪教徒と同じであった。
その魔術とは・・・
【バーサク】それはかけられた者の精神を操り、自我をなくし、敵と認識したものに襲い掛かるようにする魔術であり、もちろんそのような悪き魔術は聖魔術ではない。
それは忌み嫌われる魔術であり、聖魔術とは反対に属する禁術、【闇魔術】であった。
このガルバルド、聖職者でありながら闇魔術を使う異端者でもあったのだ。
向かってくる神官騎士の攻撃をかわしながら、ディーンが怒りに満ちたことばを口にする。
「仲間にバーサクとは、さすが司祭長様だな!神官騎士には同情しちまうな」
バーサクをかけられた者は痛みを感じず、ただ目の前の相手を殺すまで戦い続けるのである。
彼らを解放する方法、それは死以外にない。一度かかればそれまでなのである。
「とはいえ、どうせ斬り捨てる予定だったからな、殺すことに変わりはないな」
そう呟き、一番近くにいた神官騎士を横なぎで斬り捨てる。
バーサクにかかれば力は恐ろしいほどに強くなる、それこそ筋肉馬鹿のオークに匹敵するほどだろう。
だがそれだけである。
動きは素早く力もあるが単調、防御もしないし連携もない。
しっかりと攻撃を見極め、かわして反撃すればいいのである。
何も恐れることなどない。
ディーンは冷静に対処し、一人ずつ確実に葬っていった。
1分も掛からなかっただろう。二人の哀れな神官騎士は仲良く血の海に沈んだのだった。
二人目の神官騎士を斬り捨てたところで、改めて周りを見渡してみる。
予想はしていたが、ガルバルドの姿はここには見当たらなかった。
「いないな、逃げたか。とはいえ入口は一つ。おそらく隠しかなんかだろうな」
怪しいところがないか調べてみると、壁際に本棚がポツンと置かれていた。
「これか?」取り敢えず押してみるが、とても重く動きそうにない。
「・・・めんどくさいな」
剣を構え、本棚を十字に切り裂いた。
「ふん!」
掛け声と共に、ディーンは思い切り本棚を蹴り飛ばした。
本棚はガラガラと崩れ、その後ろに階段を現した。
「ガルバルド、逃がしはしねえよ。この剣に必ずお前の血を吸わせてやるからな」
ディーンは階段を駆け降りていく、その足取りはどこか楽しげな音を奏で、そして何よりも狂気を纏っているかのようだった。
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