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18、ホームセンターに行こう

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「ふおお~~~! ひろーい!」

 高い天井とどこまでも続く商品棚に、一花の口から思わず歓声が漏れる。
 週末、一花とリクトは郊外の大型ホームセンターに来ていた。

「特売のトイレットペーパーとボックスティッシュと洗濯洗剤を買いますよ。あ、ボディーソープの買い置きもしとかなきゃ。このメーカーの大容量詰め替えパック1350mlと、あのメーカーの通常サイズの詰め替え用360mlだとml単価はどっちが安いのかな……」

 スマートフォンの電卓機能で1円単位の計算をする一花を横目に、リクトはショッピングカートを押しつつ辺りをキョロキョロ見回す。

「これ全部が売り物なのか。王都の市場並に広いぞ」

「ここは国内最大級の店舗だそうですよ。日用品から家具家電までなんでも揃うらしいです」

 今度はシャンプーの単価計算をし出した一花はスマートフォンから顔を上げずに返す。

「最近、なにもかも値上がってますからね、少しでも安い物を探さないと。かさばる物が多いけど、荷物持ちよろしくお願いしますね、リクトさん」

 篁家のアパートからこのホームセンターまでは徒歩で小一時間。車のない未成年と異世界人のコンビの交通手段は自分の足だ。行きは手ぶらだが、帰りは二人共両手に大荷物になることが予想される。休日にリクトを運搬役に駆り出すのはちょっぴり心苦しかった一花だが……。

「任せておけ」

 獣戦士は自信満々に胸を叩く。

「重い物を持ち上げるのは慣れている」

「毎日全身甲冑で歩いてますもんね」

 言いながら一花はふと顔を上げた。

「そういえば、その甲冑ってどれくらいの重量があるんですか?」

 好奇心で訊いてみると、リクトは兜の顎に手を当てて、「そうだな……」と悩むように一花を頭からつま先まで見下ろした。

「丁度、一花殿と同じくらいだな」

「ふぉ!?」

 途端に一花は真っ赤になって飛び上がる。

「ひ、人の体重を目測するのやめてくれません!?」

 がなり立てる同居人に、リクトはさらりと、

「ただの比較対象だ。持ち上げればもっと正確な目方が判るぞ」

「やーめーてー!!」

 頭を抱える一花を不思議そうに眺めるリクト。

 ……異世界重戦士に乙女心は理解できなかった。
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