森の大樹の魔法使い茶寮

灯倉日鈴(合歓鈴)

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12、初めての仕事(4)

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 温かい茶で一息つくと、起きたばかりのリルにとっては一日の始まりだ。

「では、倉庫にある茶葉の説明をしよう。便宜上『茶葉』と呼んでいるが、草木由来でない素材も多く……」

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 飲み終わったカップをそのままに地下洞窟に下りようとする魔法使いを、街の少女は必死で引き留める。

「その前に私、とってもお腹へってるんですけど。何か食べ物はないですか?」

 昨日は混乱して忘れていたが、前日職場アトリ亭で昼食を摂って以降、固形物を口にしていない。健康で食べ盛りの十代のリルには夜も朝も食事を抜くなんて耐えられない。
 空腹を訴えるリルに、スイウはさして関心がなさげに目で床に直置きされた麻袋を指し示した。

「そこにパンが入っている」

「やった!」

 リルは喜び勇んで袋に飛びついた。中には手のひらほどの丸パンが五個。テーブルに着くと、リルは早速パンをちぎって食べ始める。

「スイウさんも食べますか?」

「いらない。私は気が向いた時にしか物を食べないので気にしなくていい」

 魔法使いは寝食の概念が曖昧なようだ。

「このパンって、魔法で作ったんですか?」

「いや、昨日街で買った」

 随分と平凡な回答だ。昨日、一緒に歩いている時は荷物を持っていなかったが、どこに隠していたのだろう?

「魔法使いも買い物するんですね。なんでも魔法でパパッと出せちゃうのかと思ってました」

 街の一般人リルの感想に、魔法使いは生真面目に返す。

「魔法は因果を紡ぐ技、無から有は生み出せない。この場に完成したパンを召喚するとなると、どこか別の場所にあるパンを奪ってくることになる。余計な災禍の種を撒くより、対価を払って正当に手に入れる方が楽だ」

 言い方はまどろっこしいが、スイウは善人なのだなとリルは理解した。

「ということは、魔法でパンは作れないってことですか?」

 確認してみると、スイウは「いいや」と首を振る。

「小麦粉、酵母、水、塩があれば作れる」

「その材料があれば、一般人わたしでも作れますよ」

「捏ね、発酵、焼成は魔法で一纏めに出来る」

「それはすごい!」

 今度作っている場面を見せてもらおうと思う。

「ところで、この家には他に食材はないんですか? 卵とかハムとか野菜とか」

 パンとお茶だけでは、あまりにも味気ない。おかずを欲しがる食いしん坊に、魔法使いは淡々と、

「そういう物は常備していない。そのうち誰かが持ってくる」

「誰かって……」

 誰ですか? とリルが言いかけた瞬間、

「おーい、スイウー!」

 家の外から魔法使いを呼ぶ声がした。
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