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「ノワ君はどんな料理が好きなの?」
「美味い物ならなんでも」
魚の鱗を落としながら尋ねるリルに、まったく参考にならない回答をするノワゼア。
「うーん。じゃあ、スイウさんはどんな料理をノワ君に出してるの?」
訊き方を変えてみると、狐耳少年は「むむっ」と眉を寄せて、
「あいつは何を持ってきても、塩焼きか塩茹でにしかしない」
シンプルな調理法だった。
(あまり凝った料理はしないのかな?)
それにしては、炊事場には道具も調味料も飲食店並みに揃っているのに、とリルは内心首を傾げる。
「スイウさんも炊事場で料理するの?」
「我が食材を持ってきた時はな」
「魔法で作らないのかな?」
「魔法を使う方が面倒なことは自分の手でやるのだそうだ」
魔法使いといえど、何でも魔法に頼るわけではないらしい。
「お料理は魔法の方が面倒なのか。パンは作れるって言ってたけど」
ぽそりと呟いたリルに、ノワゼアはぎょっと目を見開いた。
「は!? スイウはまたパンを作る気なのか!」
「ううん。作れるって聞いただけで……って、またってことは、ノワ君はスイウさんのパンを食べたことがあるの?」
聞き返すと、ノワゼアは三角耳をペタンと伏せて震え上がる。
「あれをパンと呼ぶな! 真っ当なパンへの冒涜だぞ。あれは小麦粉から作られた厄災の権化、この世に存在してはならん」
……一体、どんなシロモノなのだろう……。
天の祝福を受けた霊獣をここまで怯えさせる物体なんて、逆に気になる。
「まあ、今日は街で買ったパンがあるから安心してね」
「うむ、街のパンなら間違いない。ふわふわもちもちでキツネ色なのもいい」
他愛もない話をしながらも、リルは鱒の内蔵を処理し、身を切り分ける。
「あとは火を通せば出来上がりだけど、野菜がないのが寂しいなぁ」
呟いた言葉を、ノワゼアが耳聡く聞きつける。
「そうか、魚以外にも草を持って来ればよかったな。この森には人が食べられる草がそこかしこに生えているのだが」
「本当!?」
それはいい情報を入手したとリルは喜ぶ。家主が無頓着な分、店子が自ら食料を調達せねば。
「すぐに採取に行きたいところだけど。今回はもうお腹ペコペコだから、炊事場にある塩と香辛料だけで料理しちゃうね。えっと、火打ち石は……」
薪を用意し、火をつけようと道具を探すリルに、
「そんな物いらん」
ノワゼアが隣に並んで、トンッと竈の縁を叩いた。すると、薪の下から火が噴き出て、勢いよく燃え始めた。
「わっ、すごい! ノワ君も魔法が使えるんだ」
思わず拍手すると、彼は「いいや」と首を振る。
「我の魔法ではない。この竈に宿る魔力の作用だ。火をつけたいと願えばつく」
「へぇ、便利」
湯が沸く水差しと同じ原理だろうか?
竈は二基あり、一基はノワゼアが火をつけた。だから……。
リルは大きく深呼吸して、心を鎮めた。そして、精神を集中して冷たい竈の縁をトンッと叩く。
「火よ、つけ!!」
…………しーん…………。
「……リル、竈に嫌われてるのか?」
ノワゼアの憐憫の眼差しを浴びつつ、リルは燻りもしない二基目の竈の前に膝をついた。
「美味い物ならなんでも」
魚の鱗を落としながら尋ねるリルに、まったく参考にならない回答をするノワゼア。
「うーん。じゃあ、スイウさんはどんな料理をノワ君に出してるの?」
訊き方を変えてみると、狐耳少年は「むむっ」と眉を寄せて、
「あいつは何を持ってきても、塩焼きか塩茹でにしかしない」
シンプルな調理法だった。
(あまり凝った料理はしないのかな?)
それにしては、炊事場には道具も調味料も飲食店並みに揃っているのに、とリルは内心首を傾げる。
「スイウさんも炊事場で料理するの?」
「我が食材を持ってきた時はな」
「魔法で作らないのかな?」
「魔法を使う方が面倒なことは自分の手でやるのだそうだ」
魔法使いといえど、何でも魔法に頼るわけではないらしい。
「お料理は魔法の方が面倒なのか。パンは作れるって言ってたけど」
ぽそりと呟いたリルに、ノワゼアはぎょっと目を見開いた。
「は!? スイウはまたパンを作る気なのか!」
「ううん。作れるって聞いただけで……って、またってことは、ノワ君はスイウさんのパンを食べたことがあるの?」
聞き返すと、ノワゼアは三角耳をペタンと伏せて震え上がる。
「あれをパンと呼ぶな! 真っ当なパンへの冒涜だぞ。あれは小麦粉から作られた厄災の権化、この世に存在してはならん」
……一体、どんなシロモノなのだろう……。
天の祝福を受けた霊獣をここまで怯えさせる物体なんて、逆に気になる。
「まあ、今日は街で買ったパンがあるから安心してね」
「うむ、街のパンなら間違いない。ふわふわもちもちでキツネ色なのもいい」
他愛もない話をしながらも、リルは鱒の内蔵を処理し、身を切り分ける。
「あとは火を通せば出来上がりだけど、野菜がないのが寂しいなぁ」
呟いた言葉を、ノワゼアが耳聡く聞きつける。
「そうか、魚以外にも草を持って来ればよかったな。この森には人が食べられる草がそこかしこに生えているのだが」
「本当!?」
それはいい情報を入手したとリルは喜ぶ。家主が無頓着な分、店子が自ら食料を調達せねば。
「すぐに採取に行きたいところだけど。今回はもうお腹ペコペコだから、炊事場にある塩と香辛料だけで料理しちゃうね。えっと、火打ち石は……」
薪を用意し、火をつけようと道具を探すリルに、
「そんな物いらん」
ノワゼアが隣に並んで、トンッと竈の縁を叩いた。すると、薪の下から火が噴き出て、勢いよく燃え始めた。
「わっ、すごい! ノワ君も魔法が使えるんだ」
思わず拍手すると、彼は「いいや」と首を振る。
「我の魔法ではない。この竈に宿る魔力の作用だ。火をつけたいと願えばつく」
「へぇ、便利」
湯が沸く水差しと同じ原理だろうか?
竈は二基あり、一基はノワゼアが火をつけた。だから……。
リルは大きく深呼吸して、心を鎮めた。そして、精神を集中して冷たい竈の縁をトンッと叩く。
「火よ、つけ!!」
…………しーん…………。
「……リル、竈に嫌われてるのか?」
ノワゼアの憐憫の眼差しを浴びつつ、リルは燻りもしない二基目の竈の前に膝をついた。
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