森の大樹の魔法使い茶寮

灯倉日鈴(合歓鈴)

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47、茶葉を作ろう(4)

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「できた!」

 テーブルの上で乾燥したキラキラの欠片は、まるでサファイアだ。失敗すること五回。徐々に要領を掴んできたリルは、ようやく月の映る水面草の茶葉の作成に成功した。

「ふむ、悪くないな」

 茶葉を光に翳して質を確かめるスイウに、リルは「でしょう!」と鼻高々だ。

「なんだか自信がついてきました。残りも全部茶葉にしちゃいますね」

 意気揚々と麻袋に手をかけるリルに、スイウは待ったをかける。

「残りの水面草は街に卸す用に加工しよう」

「街って、アトリ亭ですか?」

 リルは目を輝かせる。彼女が森に来てまだ半月ほどだが、もう人里の生活が懐かしい。

「アトリ亭に卸している茶葉は効能を下げてるって言ってましたけど、どうするんですか?」

「敢えて属性にそぐわない加工を施す」

 言いながらスイウは麻袋をひっくり返した。残っていた月の映る水面草をテーブルいっぱいに広げる。

「水属性の植物は熱に弱い物が多い。なので高温で処理して主要な成分を無効化する」

「高温ってことは……」

 リルは嫌な予感がして訊いてみると、

「火魔法を使う」

 予感的中だった。

「いいいいやですよ!」

 リルは全力で後退る。

「家の中で火魔法を使うなんて! 許してもらうのにどれだけ苦労したことか!」

 ルビータから授かった火魔法を暴走させて大樹を追い出されたことは記憶に新しい。あの後、家に入れてもらうために、リルは丸一日玄関で土下座したのだ。
 しかし、魔法使いにはそんな事情などどこ吹く風。

「直接炎を出さなければ問題ない。湯を沸かした程度なら怒らないだろう?」

 確かに、スイウは日常的に湯を沸かしているが……。

(ルビータさんが家に来た時、大樹この家がざわついたんだよね)

 明言はされていないが、ルビータは火の精霊だろう。大樹と火が相性最悪なのは事実だ。

(でも、炎を出さない限りは室内で火魔法を使うことが許されてるってことは、スイウさんはよっぽど大樹の家に気に入られてるってことかな?)

 うっかりミスしても追い出されないくらいは好感度を上げたいと、リルはしみじみ思った。

「こっちへ」

 スイウに促されて、リルはテーブルの前に立つ。

「火魔法は慣れるまで調整が難しい。補助する」

 そう言ってリルの背後に回ったスイウは覆い被さるようにして、リルの両手の甲に自分の手のひらを重ねた。

「~~~っ!?」

 まるで後ろから抱きしめられている体勢に、リルの心臓は飛び跳ねる。

「ちょっ、スイウさんっ」

「なんだ?」

 振り返った少女のこめかみに、魔法使いの頬が当たる。さらりと肩に落ちかかる髪が甘く香る。

「ななななんでもないですっ」

 リルはぎくしゃく正面に向き直る。うっかり見上げるとキスの距離に秀麗な顔があるなんて!

「肩の力を抜いて、集中して」

 彼の吐息がかかる耳が焼け落ちそうだ。

(力って、どうやったら抜けるんだっけ??)

 ガチガチに体を強張らせたまま、リルは苦行ともご褒美ともつかない時間を過ごすこととなった。
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