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95、来訪(3)
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リビングに入ると、ダイニングテーブルにはヒルデリカとジェレマイヤーが横並びに座っていたので、リルとノワゼアは対面に腰掛けた。子狐だった霊獣は、座りにくいからと人の姿に変化している。
部屋の奥ではスイウがお茶の用意をしていた。
(いつもは私に任せるのに、今日は自分で淹れるんだ……)
それだけ玻璃神殿の聖女は碧謐の森の魔法使いにとって『特別なお客様』なのだろう。リルはちょっぴり落ち込むと同時に緊張してしまう。
しばらくすると、テーブルにティーカップが並べられた。スイウがティーポットから茶を注ぐと、湯気が虹色に輝いた。カップに揺れるオーロラの水面は――
「彩りの宴!」
――だ。四属性の植物をブレンドした定番の想織茶。定番だからこそ淹れる者の技量がよく分かるレシピ。
天井を虹色の粒子が舞う中、各々にカップに口をつける。
(やっぱり美味しい)
リルは感嘆のため息をつく。舌先に一雫乗せただけで理解してしまう。一分の隙もない洗練された味。まさに想織茶のお手本だ。
「うん、やはりスイウのお茶は美味いな」
リルが来る前はいつも彼のお茶を飲んでいたノワゼアは、久しぶりの味に舌鼓を打つ。リルの淹れたお茶しか飲んだことのなかったジェレマイヤーも、あまりの違いに目を白黒させている。そして、
「ええ、本当に美味しいわ」
両手で包み込むようにカップを持った聖女は伏し目がちに息をつく。
「これが八代目のお茶ね。正確で実直、それでいて深い。歴代の森の魔法使いの中でもかなりの腕前だわ」
しみじみと呟く聖女に、リルははて? と首を捻る。
「聖女様はスイウさん以外の森の魔法使いのお茶を飲んだことがあるんですか?」
「ヒルデでいいわ。ええ、あるわよ」
事もなげに頷くヒルデリカに、リルはぎょっとする。スイウが今の地位に就いて百何十年も経つのに、この自分より若く見える少女はもっと年上なのだろうか?
驚くリルの疑問を、ヒルデリカはあっさり解消する。
「……と言っても、今の私自身が飲んだわけではないのよ。聖域の聖者は歴代の聖者の記憶を受け継いでいるの。だから、過去の聖者が飲んだお茶の味を知っている。私の体は生まれて十五年しか経っていないけれど、頭の中にはこの大地がまっさらだった頃からの記憶があるのよ」
「……はぁ」
壮大過ぎて想像もできない。聖域の歴史は、碧謐の森のそれよりずっと永いのだ。
「ごちそうさま。素晴らしかったわ」
空のカップをソーサーに戻すヒルデリカに、スイウは目だけで頷いた。それから彼女は正面を見つめて、
「貴女、リルって言ったかしら?」
青い瞳で赤毛の少女を捉える。
「は、はい。リルです」
反射的に返事するリルに、ヒルデリカは満面の笑みを浮かべた。
「今度はリルが私にお茶を振る舞って頂戴」
部屋の奥ではスイウがお茶の用意をしていた。
(いつもは私に任せるのに、今日は自分で淹れるんだ……)
それだけ玻璃神殿の聖女は碧謐の森の魔法使いにとって『特別なお客様』なのだろう。リルはちょっぴり落ち込むと同時に緊張してしまう。
しばらくすると、テーブルにティーカップが並べられた。スイウがティーポットから茶を注ぐと、湯気が虹色に輝いた。カップに揺れるオーロラの水面は――
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「うん、やはりスイウのお茶は美味いな」
リルが来る前はいつも彼のお茶を飲んでいたノワゼアは、久しぶりの味に舌鼓を打つ。リルの淹れたお茶しか飲んだことのなかったジェレマイヤーも、あまりの違いに目を白黒させている。そして、
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両手で包み込むようにカップを持った聖女は伏し目がちに息をつく。
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しみじみと呟く聖女に、リルははて? と首を捻る。
「聖女様はスイウさん以外の森の魔法使いのお茶を飲んだことがあるんですか?」
「ヒルデでいいわ。ええ、あるわよ」
事もなげに頷くヒルデリカに、リルはぎょっとする。スイウが今の地位に就いて百何十年も経つのに、この自分より若く見える少女はもっと年上なのだろうか?
驚くリルの疑問を、ヒルデリカはあっさり解消する。
「……と言っても、今の私自身が飲んだわけではないのよ。聖域の聖者は歴代の聖者の記憶を受け継いでいるの。だから、過去の聖者が飲んだお茶の味を知っている。私の体は生まれて十五年しか経っていないけれど、頭の中にはこの大地がまっさらだった頃からの記憶があるのよ」
「……はぁ」
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反射的に返事するリルに、ヒルデリカは満面の笑みを浮かべた。
「今度はリルが私にお茶を振る舞って頂戴」
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