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27、没落令嬢と冒険者パーティ(7)
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「無理」
たった二文字で、リュリディアはイニアスの誘いを断った。
男魔法使いは、ガーン! と大岩が頭に落ちたような衝撃の表情をして固まった。
「な……なんでですか?」
涙目の彼に、彼女は淡々と、
「言ったでしょう? 私はパーティを組まなくても、一人で強いの。あなたを無能とは思わないけど、誰かと組む意義を見出だせないの」
それから、逆に質問する。
「イニアスは何故、パーティを組みたいの? 前のパーティで嫌な思いをしたのに。そのローブを上手く使えば、一人でもやっていけるんじゃない?」
「僕は……」
彼は俯いて、
「一人はいやです。独りで冒険なんて、心細くて耐えられない」
だから、理不尽な扱いを受けても、愛想笑いでしがみついていた。
「お願いです、ディアさん。僕を仲間にしてください! どんな雑用でもしますから!」
イニアスは大樹の陰に隠れていたいタイプの人間だ。スティーブより大きな樹の出現に、全力で寄りかかりに来た。
「荷物持ちも料理も、身の回りの世話はみんなします! だから僕を傍に置いてください!」
「そういうのは間に合って……」
縋りつくイニアスに、リュリディアが言いかけた……瞬間。
「リュリお嬢様!」
よく知った声が耳に響いた。振り返ると、執事姿のコウがこちらに駆け寄ってきていた。
「お戻りが遅いのでお迎えに上がりました。お仕事はいかがでしたか?」
「相変わらず心配症ね。仕事は順調に終わって臨時収入もあったわ。でも、コウまで来ちゃったら交通費が倍になっちゃうじゃない」
「それは失礼しました」
みみっちい不満を述べる令嬢に、従者は恭しく頭を下げる。
「して、そちらの方は?」
「さっき知り合った冒険者の魔法使いよ」
イニアスに目を向けるコウに、リュリディアが説明する。
「そうでしたか。主人がお世話になりました」
「え? 主人……?」
丁寧に挨拶されて、魔法使いの青年はぽかんとする。
「では、帰りましょう、お嬢様。次の乗合馬車が最終ですよ」
「ええ。間に合って良かったわ。宿泊になったら経費が嵩むもの」
連れ立って停留所へ向かう主従。残された赤の他人は、それでもめげずにリュリディアを追いかける。
「待ってください! 僕を置いていかない……」
追い縋る手が、彼女に届く……寸前!
グアアアァァァ!
突然、茂みの中からゾンビが飛び出してきた!
ゾンビは黄色い歯を剥き出しにして、リュリディアに襲いかかってきた。瞬きもせず、魔物を見つめる彼女の背後から、長い腕が伸びる。
リュリディアを背中から抱きしめるように片手で引き寄せたコウは、もう片方の手でゾンビの頭を掴んでいた。
「穢らわしい」
吐き捨てると、従者は一握りでゾンビの頭を砕いた。そのままアンデッドは塵と化していく。
コウの体は魔力の塊だ。制限を解除しなくても、小物の魔物くらい簡単に消滅させられる。
「夕食はブイヤベースですよ」
「いいわね。魚介大好き」
残党の気配がないかを確認してから、二人は何事もなかったように歩き出す。
宵闇に消えゆく、仲睦まじい二人の影法師を……。
「同じぐらいの実力を持つ者同士……か」
焦げるような敗北感に苛まれながら、イニアスはただ見送ることしかできなかった。
たった二文字で、リュリディアはイニアスの誘いを断った。
男魔法使いは、ガーン! と大岩が頭に落ちたような衝撃の表情をして固まった。
「な……なんでですか?」
涙目の彼に、彼女は淡々と、
「言ったでしょう? 私はパーティを組まなくても、一人で強いの。あなたを無能とは思わないけど、誰かと組む意義を見出だせないの」
それから、逆に質問する。
「イニアスは何故、パーティを組みたいの? 前のパーティで嫌な思いをしたのに。そのローブを上手く使えば、一人でもやっていけるんじゃない?」
「僕は……」
彼は俯いて、
「一人はいやです。独りで冒険なんて、心細くて耐えられない」
だから、理不尽な扱いを受けても、愛想笑いでしがみついていた。
「お願いです、ディアさん。僕を仲間にしてください! どんな雑用でもしますから!」
イニアスは大樹の陰に隠れていたいタイプの人間だ。スティーブより大きな樹の出現に、全力で寄りかかりに来た。
「荷物持ちも料理も、身の回りの世話はみんなします! だから僕を傍に置いてください!」
「そういうのは間に合って……」
縋りつくイニアスに、リュリディアが言いかけた……瞬間。
「リュリお嬢様!」
よく知った声が耳に響いた。振り返ると、執事姿のコウがこちらに駆け寄ってきていた。
「お戻りが遅いのでお迎えに上がりました。お仕事はいかがでしたか?」
「相変わらず心配症ね。仕事は順調に終わって臨時収入もあったわ。でも、コウまで来ちゃったら交通費が倍になっちゃうじゃない」
「それは失礼しました」
みみっちい不満を述べる令嬢に、従者は恭しく頭を下げる。
「して、そちらの方は?」
「さっき知り合った冒険者の魔法使いよ」
イニアスに目を向けるコウに、リュリディアが説明する。
「そうでしたか。主人がお世話になりました」
「え? 主人……?」
丁寧に挨拶されて、魔法使いの青年はぽかんとする。
「では、帰りましょう、お嬢様。次の乗合馬車が最終ですよ」
「ええ。間に合って良かったわ。宿泊になったら経費が嵩むもの」
連れ立って停留所へ向かう主従。残された赤の他人は、それでもめげずにリュリディアを追いかける。
「待ってください! 僕を置いていかない……」
追い縋る手が、彼女に届く……寸前!
グアアアァァァ!
突然、茂みの中からゾンビが飛び出してきた!
ゾンビは黄色い歯を剥き出しにして、リュリディアに襲いかかってきた。瞬きもせず、魔物を見つめる彼女の背後から、長い腕が伸びる。
リュリディアを背中から抱きしめるように片手で引き寄せたコウは、もう片方の手でゾンビの頭を掴んでいた。
「穢らわしい」
吐き捨てると、従者は一握りでゾンビの頭を砕いた。そのままアンデッドは塵と化していく。
コウの体は魔力の塊だ。制限を解除しなくても、小物の魔物くらい簡単に消滅させられる。
「夕食はブイヤベースですよ」
「いいわね。魚介大好き」
残党の気配がないかを確認してから、二人は何事もなかったように歩き出す。
宵闇に消えゆく、仲睦まじい二人の影法師を……。
「同じぐらいの実力を持つ者同士……か」
焦げるような敗北感に苛まれながら、イニアスはただ見送ることしかできなかった。
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