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そんな大きな事件のあと、修司さんと暁生さんはちゃんと付き合うようになった。
当然ながら僕とのプレイはなくなったし、僕も二人に申し訳なくてバイトをやめようかな、と思っていた。プレイする相手がいなくなって、体調も良くなくて、以前より少し強い薬でごまかすようになった。
なんとなく今回の経験で、次付き合う時は、Domの人じゃないとダメだと思っていた。
そんな時、久しぶりに入ったシフトの時、二人の後輩というすこし軽いノリの男性が来ていた。名前はテルさんといった。
その後もちょこちょこ店で会った。外回りでランチタイムに寄ることもあれば、夜に来ることもあって、客の少ない時は世間話をするような仲になった。
テルさんは修司さんのことが大好きで、はじめはこの人もSubで、修司さんのことが好きなのかな、と思っていた。
でも修司さんの一番は暁生さんだということは誰の目から見ても明らかだったし、望みはないだろうな、と思っていた。修司さんがテルさんにはめちゃくちゃ冷たいのは期待をさせないためかと思っていた。
まさか、その人物が暁生さんとプレイした相手だということを知って驚いた。その図々しさと、この人がDomであるという両方に。
「え? テルさん、Domなんですか? 全く見えないですね!」
思わずきつい言葉が出た。
僕の知っているDomは修司さんしかいなかった。もしかしたら同級生にいたのかもしれないけれど、確認したことはない。だから思わず本音を言ってしまった。いつもヘラヘラしてて、そんなにぱっとしないテルさんがDom?第二の性の特徴は血液型程度の参考にしかならないな、と思った。
修司さんだって今は全く違う仕事をしているけれど、大学はすごく有名な大学出ているし、この店を継ぐ前は有名な証券会社で働いていたことを知っている。
「はは、でしょ? でもDomなんだよねー。秋沢くん、今プレイ相手いないなら、俺と発散してみる?」
そうやってふざけて何度が誘われたけれど、断り続けていた。暁生さんともプレイしてたくせに、とか。だれでもいいんじゃないか、とか。Subだからって軽く見るな、とか。そんな感情。
客として来ているからそれなりに相手はするけど、それだけのつもりだった。
ふと、夜のシフトに入っている時。他のお客さんが帰って、テルさんだけが残っていた時だった。
テルさんは酔っていたのか、ふざけて〝お手〟なんてコマンドを僕に出した。僕は修司さんと一緒にプリプリ怒ったけれど、実は助かったと思っていた。
その日はちょっと体調が悪かったのだ。少しだけ発散ができて、条件反射でしてしまったお手を、テルさんが〝良い子、良い子〟と褒めてくれたので、少し頭痛が和らいだ。
そんな事はその後も時々続いた。そして僕は気づいた。他の客や暁生さんがいるところでは絶対にしないことに。
「秋沢くん、ちょっと〝来て〟」
「今日もバイト頑張ってるね。〝良い子〟」
人がいなくなってから。万が一他の人に見られてもわからないような軽いコマンドを出してくれる。そのおかげで、僕の体調は安定して、結局やめられずにズルズルと働いていた。
そのうち僕も段々心を許してきて、いつの間にか嫌う気持ちもなくなっていった頃、テルさんがまたいつものようにふざけて「してみる?」と聞いてきた。
「いいよ。バイト終わるまで待ってて?」と僕は少し高飛車に言い放ち、そのまま厨房へ消えた。しばらくして暁生さんが、空いた皿を持ってきて言った。
「テルがなんかすんげー挙動不審で気持ち悪いんだけど」
僕は素知らぬ顔で、でも思わずふふっと笑ってしまった。
そして僕は店を出ると、外で待っていたテルさんと一緒にホテルへといった。
「なんか……オッケーもらえると思ってなくて……ちょっと緊張するなぁ……セーフワードは何にしよっか? 普通に『レッド』とかでいいっすか?」
別れた彼女と入ったことはあったけど、プレイのために入るのは初めてで少し緊張した。でもそれ以上にテルさんが緊張している。
「んー、『オレンジジュース』……とか?」
一般的にセーフワードとして使われる『レッド』は修司さんとのプレイの時も使っていた言葉だったけれど、なんとなくふとその言葉が思いついた。
「あぁ、アキくんぽいっすね。体調悪いときよく飲んでるもんね?」
「……え?」
そうなのだろか?あまり気にしていなかった。修司さんのレストランは、夜は賄いが付いていて、飲み物はお酒以外なら好きな飲み物を飲んで良いことになっていた。言われてみれば確かに体調悪いときにはオレンジジュースを飲んでいたかもしれない。
「あれ? 気づいてなかったんっすか? 普段はアイスティー飲んでるのに、顔色悪いときはオレンジジュース飲んでるでしょ?」
この人は意外と周りをよく見てるんだな、そう思った。
その日は服を着たまま、少しだけ手を絡ませたり、頭を撫でられる程度の簡単なスキンシップを加えたプレイをしただけで終わった。
する前は男同士で手を繋ぐとか、軽いスキンシップにも少し抵抗があったけど、してみたら意外と平気だった。テルさんのコマンドが強すぎなくてちょうど良かったのもあると思う。
当然ながら僕とのプレイはなくなったし、僕も二人に申し訳なくてバイトをやめようかな、と思っていた。プレイする相手がいなくなって、体調も良くなくて、以前より少し強い薬でごまかすようになった。
なんとなく今回の経験で、次付き合う時は、Domの人じゃないとダメだと思っていた。
そんな時、久しぶりに入ったシフトの時、二人の後輩というすこし軽いノリの男性が来ていた。名前はテルさんといった。
その後もちょこちょこ店で会った。外回りでランチタイムに寄ることもあれば、夜に来ることもあって、客の少ない時は世間話をするような仲になった。
テルさんは修司さんのことが大好きで、はじめはこの人もSubで、修司さんのことが好きなのかな、と思っていた。
でも修司さんの一番は暁生さんだということは誰の目から見ても明らかだったし、望みはないだろうな、と思っていた。修司さんがテルさんにはめちゃくちゃ冷たいのは期待をさせないためかと思っていた。
まさか、その人物が暁生さんとプレイした相手だということを知って驚いた。その図々しさと、この人がDomであるという両方に。
「え? テルさん、Domなんですか? 全く見えないですね!」
思わずきつい言葉が出た。
僕の知っているDomは修司さんしかいなかった。もしかしたら同級生にいたのかもしれないけれど、確認したことはない。だから思わず本音を言ってしまった。いつもヘラヘラしてて、そんなにぱっとしないテルさんがDom?第二の性の特徴は血液型程度の参考にしかならないな、と思った。
修司さんだって今は全く違う仕事をしているけれど、大学はすごく有名な大学出ているし、この店を継ぐ前は有名な証券会社で働いていたことを知っている。
「はは、でしょ? でもDomなんだよねー。秋沢くん、今プレイ相手いないなら、俺と発散してみる?」
そうやってふざけて何度が誘われたけれど、断り続けていた。暁生さんともプレイしてたくせに、とか。だれでもいいんじゃないか、とか。Subだからって軽く見るな、とか。そんな感情。
客として来ているからそれなりに相手はするけど、それだけのつもりだった。
ふと、夜のシフトに入っている時。他のお客さんが帰って、テルさんだけが残っていた時だった。
テルさんは酔っていたのか、ふざけて〝お手〟なんてコマンドを僕に出した。僕は修司さんと一緒にプリプリ怒ったけれど、実は助かったと思っていた。
その日はちょっと体調が悪かったのだ。少しだけ発散ができて、条件反射でしてしまったお手を、テルさんが〝良い子、良い子〟と褒めてくれたので、少し頭痛が和らいだ。
そんな事はその後も時々続いた。そして僕は気づいた。他の客や暁生さんがいるところでは絶対にしないことに。
「秋沢くん、ちょっと〝来て〟」
「今日もバイト頑張ってるね。〝良い子〟」
人がいなくなってから。万が一他の人に見られてもわからないような軽いコマンドを出してくれる。そのおかげで、僕の体調は安定して、結局やめられずにズルズルと働いていた。
そのうち僕も段々心を許してきて、いつの間にか嫌う気持ちもなくなっていった頃、テルさんがまたいつものようにふざけて「してみる?」と聞いてきた。
「いいよ。バイト終わるまで待ってて?」と僕は少し高飛車に言い放ち、そのまま厨房へ消えた。しばらくして暁生さんが、空いた皿を持ってきて言った。
「テルがなんかすんげー挙動不審で気持ち悪いんだけど」
僕は素知らぬ顔で、でも思わずふふっと笑ってしまった。
そして僕は店を出ると、外で待っていたテルさんと一緒にホテルへといった。
「なんか……オッケーもらえると思ってなくて……ちょっと緊張するなぁ……セーフワードは何にしよっか? 普通に『レッド』とかでいいっすか?」
別れた彼女と入ったことはあったけど、プレイのために入るのは初めてで少し緊張した。でもそれ以上にテルさんが緊張している。
「んー、『オレンジジュース』……とか?」
一般的にセーフワードとして使われる『レッド』は修司さんとのプレイの時も使っていた言葉だったけれど、なんとなくふとその言葉が思いついた。
「あぁ、アキくんぽいっすね。体調悪いときよく飲んでるもんね?」
「……え?」
そうなのだろか?あまり気にしていなかった。修司さんのレストランは、夜は賄いが付いていて、飲み物はお酒以外なら好きな飲み物を飲んで良いことになっていた。言われてみれば確かに体調悪いときにはオレンジジュースを飲んでいたかもしれない。
「あれ? 気づいてなかったんっすか? 普段はアイスティー飲んでるのに、顔色悪いときはオレンジジュース飲んでるでしょ?」
この人は意外と周りをよく見てるんだな、そう思った。
その日は服を着たまま、少しだけ手を絡ませたり、頭を撫でられる程度の簡単なスキンシップを加えたプレイをしただけで終わった。
する前は男同士で手を繋ぐとか、軽いスキンシップにも少し抵抗があったけど、してみたら意外と平気だった。テルさんのコマンドが強すぎなくてちょうど良かったのもあると思う。
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