大嫌い

稲荷きつね

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幸か不幸か

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小学生三年生の夏。
弟が大きな病気にかかった。
パパもママも、弟に余計に付きっきりになった。
弟は入院して、家には私とパパだけが残った。
「ただいま」
学校から帰って、自分一人しかいない薄暗い部屋で宿題を済ませ、自分のおもちゃなんかは何も無いところでぼんやりと過ごす。
冷蔵庫を開けたところで、入っているのはポカリ、薬、ヨーグルト……、弟の看病のために買ったのであろう物しかない。
初めて、料理をした。
料理と言えるのかわからないくらい質素だったけれど。
残っていた豆腐と、ほうれん草を切って炒めただけのおかず。
冷凍庫にカチカチになって入っていた小さなおにぎり。
入院することが決まった時に急いで持っていったらしいお湯で溶いて作るスープの残り。
こんな食事が一週間続いた。
ある日、担任の先生に尋ねられた。
「ご飯食べてる?」
びっくりした。
なんでそんなことを尋ねられたのかわからなくて、怖かった。
その時は咄嗟に、
「作り置きがあったからそれを食べてる」
って答えた。
先生はあの時どこまでわかっていたんだろう。
全て筒抜けだったんだろうか。

幸か不幸か、弟は一週間入院して帰ってきた。
お医者さんによると、完治したとのこと。
パパもママも、心底ホッとしたような表情をしていた。
私にも、
「よかったねぇ。弟くん、元気になれるって」
と、笑顔で話しかけてきた。
数年ぶりに、少しだけど頭を撫でてもらった。
私は別に、そんな理由で頭を撫でられても嬉しくはなかった。
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