本を歩け!

悠行

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4章 本を探す

4章 本を探すー6

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 駅の近くのビジネスホテルに宿を取っていたが、案の定そこにも戸成さんはいなかった。そもそも、上手く一人さんに誤魔化して持って来たものの戸成さんの荷物も置きっぱなしだったから私たちが持っているし、ホテルに先に行っているなどとは思っていなかった。
 二人部屋で取っていたのでがらんとした一室で、私は明子さんの小説を取り出した。読み進めてみると、その話は明子さんがミステリー小説の世界に入って、登場人物と話すものだった。中に入ったら、読んだようなものなので、大体どんな話かは分かっていたが、確認する。特に不思議な所はない。
 重垣にも言われたが戸成さんがこの、遠い所に来ているというタイミングで、いきなり、自らの意志で逃亡したとかで失踪するというのはありえない気がした。私に怒っていても、いきなり消えるようなことをするのは戸成さんのやり方じゃない。
 やはり本の中に入ったと考えた方がこの場合現実的な気がした。本の中に入るのが現実的だとはおかしなことだ。
 本の中に入ったとして、不思議な点は二点ある。何故戸成さんが本の中に入れたのかということと、何故出てこないかということだ。
 部屋のチャイムが鳴る。重垣だ。重垣は私が手にしている原稿を見て、「それは?」と聞いた。
「明子さんの小説。戸成さんが入ったと思う」
「読ませてくれ」
 重垣は小説を読んだ。重垣は文章を読むのが遅かった。
「もう読み終わった?」
「早い。まだだって」
 読み終わって、重垣は
「これに本中は入ったのか」
 と確認した。
「入ったけど、戸成さんはいなかった」
「じゃあなんでこれに入ってると思ったんだ」
「状況証拠だよ、私が部屋を出てきたときにはこの原稿は畳んであったと思うんだけど、戻ってきたら開いてた。戸成さんが読んだから開いてたんじゃないかと思って」
「なるほど、でも会えなかったんだろ、さっき言ってた世界が違うって言うことはどういうことだ」
 私は明子さんとの会話を説明した。
「じゃあこの原稿があっても戸成には会えないのか」
「そう、でもあった方がいいかなと思って。何も手掛かりがないから」
「確かにな。何かヒントはないか? 俺は分からなかったが」
「私も分からない。なんで戸成さんは出てこないんだろ」
「出てこない理由が分からないなら、出られないとかか?」
「そんなことあるか、なぁ」
「出方が分からないってことはあるんじゃないか。俺、初めて漫画に入った時、どうやって出たらいいのか分からなかった。出口か何かから出ると思ってたからさ。まぁ好きな漫画だったから一日くらいは単に好きで入ってたけど、しばらくどうやって出たらいいか分からなくて困った」
「重垣はどうやって出るの」
「『出たい』って叫んだら出れた。漫画の中で追っかけられてさ」
「私と一緒の出方だ。でも戸成さんはそのやり方知ってる。いつも出る所を見てるから」
「じゃあ出ることが不可能、なんじゃないか」
「入れるのに?」
「たとえば、戸成と本中が二人で入って、本中が戸成を置いてきたら、戸成は出れるのか」
「それはやったことが無いから分からない」
 戸成さんと前に話したことだ。
「そもそも、戸成さんは小説に入れないはずなんだよ。そう、だって戸成さんは小説を書かないんだから」
「この能力は作品を作ることと関係してるのか」
「重垣だって漫画を描くでしょ。私も漫画を描く。明子さんも生前小説に入れたって言ってたけど、エッセイを書いてた」
「実は戸成が小説を書いていたとか?」
「うーん、有り得なくはない。でもそんな素振りを見せたことは無かったけど」
「でも入れたってことはそうなんじゃないか」
「じゃあなんで出れないの」
 堂々巡りだった。
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