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4章 本を探す
4章 本を探すー7
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「重垣も、漫画しか入れないって言ってたよね」
「ああ、そうだ。お前みたいに小説には入れない」
「私は戸成さんも小説に入れないと思っていたし、出る力も無いと思う。だから心配なんだ。もし戸成さんがなんでか知らないけれどうっかり入ってしまったとして、出れないんだったら、本の世界はどんなふうになってしまうんだろう。明子さんは本の世界が閉じるって言ってたけど、それがどういうことなのか、もし真っ暗闇だったりしたら、戸成さんは大丈夫かな」
「やってみたらいいんじゃないか」
「やってみる?」
「試せばいいだろ。俺が本中を連れて漫画に入れば、いつもの戸成の状況に本中が置かれることになる。俺一回、物を漫画の中に忘れたことがあるけど、その後取りに行ったらその場所にあったから、俺がすぐ戻れば、大丈夫だと思うし」
重垣は部屋に戻り、「新刊出てたから読もうと思って買った」と漫画を一冊持って来たが、私はそのタイトルを見て顔をしかめざるを得ない。
「もうちょっと平和なのないの」
それは人気作品だったが、もう第一話から恐ろしい展開のディストピアであった。しかも最新刊といえば、直前の巻を読んだがだいぶ恐ろしい展開になっていたはずである。私は好きだが、戸成さんは絶対に読みたくないと言っていた。私も読む分には面白いけれど、経験したくはない。
「無いよ。試すんだろ」
時間が惜しいので大人しく入ることにする。重垣が私の腕を掴み、「入りたい」と叫ぶと漫画本の中に吸い込まれる。いつもと似た感覚だった。しかし、人に引っ張って入れられたのは初めてだ。戸成さんはいつもこんな感覚だったのだ。
どさりと落ちた先は、何かの城の上のようなところだった。漫画の中というものは初めて見たが、小説の中とは全然違う。小説は、視覚的なイメージとしては無のものが目の前にあるという感じだが、漫画は元々絵だから、見たことあるものが、全てリアルなのだ。向こうで話しているキャラクターは全員、漫画で見たキャラクターそのものだった。
「立てるか」
座ったまま茫然と周りを見渡していた私に、重垣が言う。
「すごいだろ。漫画のままなんだ。ほら、見ろよあれ」
重垣が呑気に言うので何の気話にキャラクターを見ていたのを指さす方に向けると、恐ろしい敵が向こうから攻めてきているのだった。
「待って、ていうかこれネタバレじゃん。あんな敵いるの、聞いてない」
キャラクターたちが一斉に反撃を仕掛けようとする。戦闘だ。
「ねえ、ここで私死んだらどうしたらいいの」
「死なないんじゃないか。さすがに」
重垣は呑気だが。私は恐ろしい。しかも、重垣はこのタイミングで、平然と
「じゃあ俺は出てみるわ」
と言う。打合せ通りだが、さすがにここに置いて行かれるのは御免だと思った。もうちょっと比較的平和なシーンは無かったか探せばよかったと後悔する私を尻目に、重垣はぱっと「出たい」と言ってまるで瞬間移動するみたいに、消えてしまった。
「嘘でしょ」
なんて薄情なやつなんだ。私はその瞬間恐怖でほとんど戸成さんのことを忘れていた。
「出たい」
私はとっさに叫んだが、出られなかった。出られない。それだけのことがものすごく不安にさせる。怖い。
しかし、ふと周りを見ればさっきまでの喧騒が止まっているような気がキャラクターたちは止まっているわけではない。しかし、戦闘態勢ではない。肩の荷を下ろしたような、舞台袖から下がった役者のような、そんな状態だった。敵の方もすとんと座り込んだ。
真っ暗闇にはなっていない。しかし、物語が止まっている。読者がいなければ物語は進まない。私は今、読者ではなく「重垣の持ち物」の状態で来ているから、物語は進まない。
戸成さんが本に入ったら、その世界は動いているのだろうか、閉じているのだろうか。どちらにせよ、本の中が恐ろしい場所になっていなくて安心した。
戸成さんも同じように出れなくなってしまったのだろうか。そうだとしたらきっと出られなくて不安だろうと思った。戸成さんはホラー漫画でも、人が死ぬシーン以外は平気な強い心の持ち主だが、それでもきっと予想外の状況に一人で置かれると言うのは、今私が感じている以上の恐怖だろう。
考えながら今いる場所から下を覗きこむ。降りれそうにはなかった。高い所にいるので、向こうの方までよく見える。現実世界でこういう場所にいることはあまりない。遠くまで、だだっ広い平野であった。
「ああ、そうだ。お前みたいに小説には入れない」
「私は戸成さんも小説に入れないと思っていたし、出る力も無いと思う。だから心配なんだ。もし戸成さんがなんでか知らないけれどうっかり入ってしまったとして、出れないんだったら、本の世界はどんなふうになってしまうんだろう。明子さんは本の世界が閉じるって言ってたけど、それがどういうことなのか、もし真っ暗闇だったりしたら、戸成さんは大丈夫かな」
「やってみたらいいんじゃないか」
「やってみる?」
「試せばいいだろ。俺が本中を連れて漫画に入れば、いつもの戸成の状況に本中が置かれることになる。俺一回、物を漫画の中に忘れたことがあるけど、その後取りに行ったらその場所にあったから、俺がすぐ戻れば、大丈夫だと思うし」
重垣は部屋に戻り、「新刊出てたから読もうと思って買った」と漫画を一冊持って来たが、私はそのタイトルを見て顔をしかめざるを得ない。
「もうちょっと平和なのないの」
それは人気作品だったが、もう第一話から恐ろしい展開のディストピアであった。しかも最新刊といえば、直前の巻を読んだがだいぶ恐ろしい展開になっていたはずである。私は好きだが、戸成さんは絶対に読みたくないと言っていた。私も読む分には面白いけれど、経験したくはない。
「無いよ。試すんだろ」
時間が惜しいので大人しく入ることにする。重垣が私の腕を掴み、「入りたい」と叫ぶと漫画本の中に吸い込まれる。いつもと似た感覚だった。しかし、人に引っ張って入れられたのは初めてだ。戸成さんはいつもこんな感覚だったのだ。
どさりと落ちた先は、何かの城の上のようなところだった。漫画の中というものは初めて見たが、小説の中とは全然違う。小説は、視覚的なイメージとしては無のものが目の前にあるという感じだが、漫画は元々絵だから、見たことあるものが、全てリアルなのだ。向こうで話しているキャラクターは全員、漫画で見たキャラクターそのものだった。
「立てるか」
座ったまま茫然と周りを見渡していた私に、重垣が言う。
「すごいだろ。漫画のままなんだ。ほら、見ろよあれ」
重垣が呑気に言うので何の気話にキャラクターを見ていたのを指さす方に向けると、恐ろしい敵が向こうから攻めてきているのだった。
「待って、ていうかこれネタバレじゃん。あんな敵いるの、聞いてない」
キャラクターたちが一斉に反撃を仕掛けようとする。戦闘だ。
「ねえ、ここで私死んだらどうしたらいいの」
「死なないんじゃないか。さすがに」
重垣は呑気だが。私は恐ろしい。しかも、重垣はこのタイミングで、平然と
「じゃあ俺は出てみるわ」
と言う。打合せ通りだが、さすがにここに置いて行かれるのは御免だと思った。もうちょっと比較的平和なシーンは無かったか探せばよかったと後悔する私を尻目に、重垣はぱっと「出たい」と言ってまるで瞬間移動するみたいに、消えてしまった。
「嘘でしょ」
なんて薄情なやつなんだ。私はその瞬間恐怖でほとんど戸成さんのことを忘れていた。
「出たい」
私はとっさに叫んだが、出られなかった。出られない。それだけのことがものすごく不安にさせる。怖い。
しかし、ふと周りを見ればさっきまでの喧騒が止まっているような気がキャラクターたちは止まっているわけではない。しかし、戦闘態勢ではない。肩の荷を下ろしたような、舞台袖から下がった役者のような、そんな状態だった。敵の方もすとんと座り込んだ。
真っ暗闇にはなっていない。しかし、物語が止まっている。読者がいなければ物語は進まない。私は今、読者ではなく「重垣の持ち物」の状態で来ているから、物語は進まない。
戸成さんが本に入ったら、その世界は動いているのだろうか、閉じているのだろうか。どちらにせよ、本の中が恐ろしい場所になっていなくて安心した。
戸成さんも同じように出れなくなってしまったのだろうか。そうだとしたらきっと出られなくて不安だろうと思った。戸成さんはホラー漫画でも、人が死ぬシーン以外は平気な強い心の持ち主だが、それでもきっと予想外の状況に一人で置かれると言うのは、今私が感じている以上の恐怖だろう。
考えながら今いる場所から下を覗きこむ。降りれそうにはなかった。高い所にいるので、向こうの方までよく見える。現実世界でこういう場所にいることはあまりない。遠くまで、だだっ広い平野であった。
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