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本編ー総受けエディションー
02:朝の大学にて~side晴朗~
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side良崎晴朗(ややさきせいろう)
◇ ◇
大学構内で、僕は手元のディスプレイをそっとなぞる。そうすると消えかけた画面は再度光を発し、彼――少し眉の下がって困ったかのように苦笑したよぞらくんの写真を映し出す。
手の平に収まったこの画像は、僕の宝物だ。
過剰な執着などしているつもりはないが、僕にだって浅ましい欲望はある。それは子供のようなワガママで、笑い飛ばせるような単純な願いだ。今の僕だったら叶えようと思えば実現しそうなものでもある。
だが、その願いは叶えない。
――僕がよぞらくんを独占できるのは、きっとよぞらくんが死ぬ時だけなのだから。
先程よぞらくんが時間を気にしてくれていたが、僕は本当に急いでいなかった。何しろ午前に取っている授業は1つも無いのだ。伝え方に足りない部分はあったかもしれないが、嘘は言っていない。
彼の不器用な優しさを思い出しくすぐったい気持ちになる。僕の口角は知らず知らず上がってしまっていた。
「何ニヤニヤしてんだよ」
おい、と不審げに声を掛けられる。
朝から人が集う構内。来たついでにと、掲示板を確認した後僕は近くのベンチに座っていた。雑踏の中に紛れていたつもりだったが、晴朗はその容姿も相まって非常に目立っていたらしい。知り合いに見つかったようだ。
馴染みのある声に僕は顔を上げ、返事の代わりに緩い笑みを返す。何って『コレ』だよ、と言わんばかりに僕はフリフリと手首を揺らした。このよぞらくんの写真はとてもよく撮れているので誰かに自慢したかった所だったから丁度良い。彼に自慢しよう。
「はっ? ……って、うっわ……それゆゆ島じゃん。待ち受けにしてんのかよソレ」
「お前にはあげないよ、見せるだけ」
「いらねーよ、んなもん」
ぺぺぺっと言い捨てる彼、日野出 命(ひのでみこと)は僕とよぞらくんの共通の友人だ。といっても、日野出は一貫した学園の内部生だった為よぞらくんと過ごした時間は僕より長い。今は僕と同じ大学に進み立場は逆転してしまったけれど。
彼とは顔馴染みとして一緒に行動することが多かった。
「お前そんなに大事にしてんのにさ、ゆゆ島こっちに引っ張り込まなかったんだな」
こっち、というのは大学の事だろう。彼にとって僕とよぞらくんが別々の道に進んでいたことは意外だったようだ。
「……うーん。よぞらくんには頭とやる気とお金と朝起きる生活力が足りなかったからね」
「おいそれ全部ダメってことじゃねぇか」
「それによぞらくんは引きこもるのが得意だから」
進学を嫌がるよぞらくんに無理強いさせるほどでも無かったし、それとは逆に僕は就職する気も無かった。この領域は個人が決めることで他者が簡単に踏み入るものではないのだ。晴朗的には物理的な距離が離れなければそれで良かった。
「お前も健気だな、良崎(ややさき)」
「よぞらくん至上主義だからね」
「出たソレ」
だんだん僕との対話に精神的にも疲れてきたのか日野出は僕の座っていたベンチに腰掛けた。すらっとした脚はどこか窮屈そうだ。左足を軽く組んで彼は一息ついた。
「――ゆゆ島、元気?」
つっけんどんな言い方だが、存外彼もよぞらくんの事を気にしているようだった。
「よぞらくんはいつも通りだよ」
何、日野出連絡とってないの? と俺は日野出へと聞き返す。
「はぁ? んなもんしてねーよ、送る要件も無いし」
「すればいいのに」
「すればいいのに……って。あのなあ、別に卒業したら顔合わせることも少ないし、それに……」
「それに?」
「…………俺はお前の気持ちも知ってるし。遠慮するだろうが」
「ふはっ、日野出が、遠慮……? ……っふっ」
「……おい」
遠慮って、そうか遠慮していたのか日野出は。
おかしくて僕は噴き出してしまう。
「そんなことでいちいち嫉妬なんてしないよ」
するだけ無駄だ。
僕は彼によぞらくんの本質を教える。
「僕はね、よぞらくんが楽しいならそれでいいんだ。よぞらくんは一人でいることが好きだからね。……僕が閉じ込めて幸せになっても彼が不幸になるならそれは意味がない事なんだ」
つまりは。僕がよぞらくんを独占できるのは彼が死ぬときの一瞬だけ。
死んでしまった瞬間に、また失ってしまう。
僕は人が思っているよりも生にしぶとい人間だ。きっと彼を殺すことはないだろう。
「よぞらくんの言葉を借りれば僕は【ヤンデレ】未満なのかもね」
「やん……?」
彼の好きなゲームの話で語っていた単語を思い出して思わずつぶやいてしまう。
日野出は聞きなじみが無いのかしばしぽかんとしていたが、
「……じゃあ俺がゆゆ島に手出しても平気だっていうのかよ」
ぽつりとこぼした僕の言葉に対し、眉間にしわを寄せ無意識に低くなった声で問いかける。
「手って……日野出そういう意味でよぞらくんのこと好きだったっけ?」
彼はよぞらくんと同じく中高と男子校だったが、同性との噂は聞いたことが無かった。はて、と首をひねる僕に対し、日野出は続ける。
「そりゃあ俺だってあいつの事気に入ってるしかわいいヤツだって思ってたよ。でもお前の気持ちとか他の奴らとかあからさまな奴が多かっただろ……やだよダチ同士とか知り合い同士で修羅場とか」
面倒はご免だとばかりに吐き出す。
ゆゆ島本人は気づいていないだろうが、そう、彼は……特にやっかいな人種から非常に好かれることが多かった。学校という環境は非常に狭い箱庭だ。自ら壊してしまうよりも身を引いて穏やかな生活を送る方が日野出には重要だったようだ。
日野出命(ひのでみこと)は思慮深い。彼は僕と似ているようで価値観が異なる存在だった。
「バカだなあ日野出は」
「おいこら、俺の優しすぎる気持ちをバカで片づけるな!」
「でもきっとそんなバカなところが、よぞらくんは心地良かったんだろうね」
「…………」
本当にそう思う。何しろ、あの窮屈な箱庭は『よぞら至上主義クラブ』と言われたところだ。今はその名称も意味合いは変わっているが、学生時代よぞらくんが良い塩梅で人間関係を続けてこられたのは日野出の存在も大きいのだろう。
「まあ僕の方がよぞらくんのことわかっているけどね!」
「いらんところでマウントをとるな!」
僕は日野出にニッコリ笑いかけるが気持ち悪がられてしまった。
「オイ」
日野出をおちょくっている声は思いのほか大きくなっていたようだ。
突然後ろの方から冷ややかな声がかけられた。
「ここをどこだと思ってる。バカでかい声で騒ぐな」
「菊くん」
「何を騒いでるかと思えば……気持ち悪い」
名前を呼ぶ僕に嫌そうな顔で菊 日和(きくひより)は指摘した。菊も同じ大学に通っている高校時代の同級生だ。
「……しかもゆゆ島だと……本当に、何度聞いても虫唾が走る」
「お前も相変わらずだな、菊」
日野出はいつもと変わらないなあと菊を見る。
「ああ、いつも、いつも……そうやって男同士でバカの一つ覚えみたいに騒ぎ立てて――」
――心底腹が立つ。
メガネを光らせ僕たちを睨みつけた後、これ以上話するのは無駄だと言わんばかりに彼は去っていった。
菊は言葉の通り、ゆゆ島よぞらを現在進行形で嫌っている。
「にしても、あのゆゆ島でも嫌われることあるんだな」
あいつが嫌味言う度にああそうだった目が覚めるわ、と日野出は頭を掻く。確かに客観的にみれば菊くんの様な反応が正しいのだろうと、僕もゆっくりと頭を傾げた。僕らの中では珍しい存在だった菊。
ここによぞらくんが居たら昔と同じように「菊ちゃんに嫌われた~」と泣き真似をして僕や日野出に縋るのだろうな。彼は菊のことを嫌いではなかったから。
「そりゃあよぞらくんだって全知全能の神じゃあるまいし誰も彼もに好かれることは無いよ」
「ん、そらあ、なあ……そうだけど」
「ふふ……でも菊くん相変わらず、よぞらくんにメロメロだよね」
よぞらくんも隅に置けないなあ。このひとたらしめ。
「……っはぁ? お前今の菊の反応見て何言ってんだ!?」
「だって彼、よぞらくんのことになるとああやっていつも突っかかって……ツンデレってやつだよね」
くすくすと笑いながら、僕はよぞらくんがハマっているゲームを思い出していた。なんでも、冷たい態度をとってしまうのは嫌よ嫌よも好きなうちだとか。うん、菊くんにぴったりの言葉だな。
「……なんか良崎、お前もゆゆ島に似てきたな……」
それは最高の誉め言葉だ。
◇ ◇
大学構内で、僕は手元のディスプレイをそっとなぞる。そうすると消えかけた画面は再度光を発し、彼――少し眉の下がって困ったかのように苦笑したよぞらくんの写真を映し出す。
手の平に収まったこの画像は、僕の宝物だ。
過剰な執着などしているつもりはないが、僕にだって浅ましい欲望はある。それは子供のようなワガママで、笑い飛ばせるような単純な願いだ。今の僕だったら叶えようと思えば実現しそうなものでもある。
だが、その願いは叶えない。
――僕がよぞらくんを独占できるのは、きっとよぞらくんが死ぬ時だけなのだから。
先程よぞらくんが時間を気にしてくれていたが、僕は本当に急いでいなかった。何しろ午前に取っている授業は1つも無いのだ。伝え方に足りない部分はあったかもしれないが、嘘は言っていない。
彼の不器用な優しさを思い出しくすぐったい気持ちになる。僕の口角は知らず知らず上がってしまっていた。
「何ニヤニヤしてんだよ」
おい、と不審げに声を掛けられる。
朝から人が集う構内。来たついでにと、掲示板を確認した後僕は近くのベンチに座っていた。雑踏の中に紛れていたつもりだったが、晴朗はその容姿も相まって非常に目立っていたらしい。知り合いに見つかったようだ。
馴染みのある声に僕は顔を上げ、返事の代わりに緩い笑みを返す。何って『コレ』だよ、と言わんばかりに僕はフリフリと手首を揺らした。このよぞらくんの写真はとてもよく撮れているので誰かに自慢したかった所だったから丁度良い。彼に自慢しよう。
「はっ? ……って、うっわ……それゆゆ島じゃん。待ち受けにしてんのかよソレ」
「お前にはあげないよ、見せるだけ」
「いらねーよ、んなもん」
ぺぺぺっと言い捨てる彼、日野出 命(ひのでみこと)は僕とよぞらくんの共通の友人だ。といっても、日野出は一貫した学園の内部生だった為よぞらくんと過ごした時間は僕より長い。今は僕と同じ大学に進み立場は逆転してしまったけれど。
彼とは顔馴染みとして一緒に行動することが多かった。
「お前そんなに大事にしてんのにさ、ゆゆ島こっちに引っ張り込まなかったんだな」
こっち、というのは大学の事だろう。彼にとって僕とよぞらくんが別々の道に進んでいたことは意外だったようだ。
「……うーん。よぞらくんには頭とやる気とお金と朝起きる生活力が足りなかったからね」
「おいそれ全部ダメってことじゃねぇか」
「それによぞらくんは引きこもるのが得意だから」
進学を嫌がるよぞらくんに無理強いさせるほどでも無かったし、それとは逆に僕は就職する気も無かった。この領域は個人が決めることで他者が簡単に踏み入るものではないのだ。晴朗的には物理的な距離が離れなければそれで良かった。
「お前も健気だな、良崎(ややさき)」
「よぞらくん至上主義だからね」
「出たソレ」
だんだん僕との対話に精神的にも疲れてきたのか日野出は僕の座っていたベンチに腰掛けた。すらっとした脚はどこか窮屈そうだ。左足を軽く組んで彼は一息ついた。
「――ゆゆ島、元気?」
つっけんどんな言い方だが、存外彼もよぞらくんの事を気にしているようだった。
「よぞらくんはいつも通りだよ」
何、日野出連絡とってないの? と俺は日野出へと聞き返す。
「はぁ? んなもんしてねーよ、送る要件も無いし」
「すればいいのに」
「すればいいのに……って。あのなあ、別に卒業したら顔合わせることも少ないし、それに……」
「それに?」
「…………俺はお前の気持ちも知ってるし。遠慮するだろうが」
「ふはっ、日野出が、遠慮……? ……っふっ」
「……おい」
遠慮って、そうか遠慮していたのか日野出は。
おかしくて僕は噴き出してしまう。
「そんなことでいちいち嫉妬なんてしないよ」
するだけ無駄だ。
僕は彼によぞらくんの本質を教える。
「僕はね、よぞらくんが楽しいならそれでいいんだ。よぞらくんは一人でいることが好きだからね。……僕が閉じ込めて幸せになっても彼が不幸になるならそれは意味がない事なんだ」
つまりは。僕がよぞらくんを独占できるのは彼が死ぬときの一瞬だけ。
死んでしまった瞬間に、また失ってしまう。
僕は人が思っているよりも生にしぶとい人間だ。きっと彼を殺すことはないだろう。
「よぞらくんの言葉を借りれば僕は【ヤンデレ】未満なのかもね」
「やん……?」
彼の好きなゲームの話で語っていた単語を思い出して思わずつぶやいてしまう。
日野出は聞きなじみが無いのかしばしぽかんとしていたが、
「……じゃあ俺がゆゆ島に手出しても平気だっていうのかよ」
ぽつりとこぼした僕の言葉に対し、眉間にしわを寄せ無意識に低くなった声で問いかける。
「手って……日野出そういう意味でよぞらくんのこと好きだったっけ?」
彼はよぞらくんと同じく中高と男子校だったが、同性との噂は聞いたことが無かった。はて、と首をひねる僕に対し、日野出は続ける。
「そりゃあ俺だってあいつの事気に入ってるしかわいいヤツだって思ってたよ。でもお前の気持ちとか他の奴らとかあからさまな奴が多かっただろ……やだよダチ同士とか知り合い同士で修羅場とか」
面倒はご免だとばかりに吐き出す。
ゆゆ島本人は気づいていないだろうが、そう、彼は……特にやっかいな人種から非常に好かれることが多かった。学校という環境は非常に狭い箱庭だ。自ら壊してしまうよりも身を引いて穏やかな生活を送る方が日野出には重要だったようだ。
日野出命(ひのでみこと)は思慮深い。彼は僕と似ているようで価値観が異なる存在だった。
「バカだなあ日野出は」
「おいこら、俺の優しすぎる気持ちをバカで片づけるな!」
「でもきっとそんなバカなところが、よぞらくんは心地良かったんだろうね」
「…………」
本当にそう思う。何しろ、あの窮屈な箱庭は『よぞら至上主義クラブ』と言われたところだ。今はその名称も意味合いは変わっているが、学生時代よぞらくんが良い塩梅で人間関係を続けてこられたのは日野出の存在も大きいのだろう。
「まあ僕の方がよぞらくんのことわかっているけどね!」
「いらんところでマウントをとるな!」
僕は日野出にニッコリ笑いかけるが気持ち悪がられてしまった。
「オイ」
日野出をおちょくっている声は思いのほか大きくなっていたようだ。
突然後ろの方から冷ややかな声がかけられた。
「ここをどこだと思ってる。バカでかい声で騒ぐな」
「菊くん」
「何を騒いでるかと思えば……気持ち悪い」
名前を呼ぶ僕に嫌そうな顔で菊 日和(きくひより)は指摘した。菊も同じ大学に通っている高校時代の同級生だ。
「……しかもゆゆ島だと……本当に、何度聞いても虫唾が走る」
「お前も相変わらずだな、菊」
日野出はいつもと変わらないなあと菊を見る。
「ああ、いつも、いつも……そうやって男同士でバカの一つ覚えみたいに騒ぎ立てて――」
――心底腹が立つ。
メガネを光らせ僕たちを睨みつけた後、これ以上話するのは無駄だと言わんばかりに彼は去っていった。
菊は言葉の通り、ゆゆ島よぞらを現在進行形で嫌っている。
「にしても、あのゆゆ島でも嫌われることあるんだな」
あいつが嫌味言う度にああそうだった目が覚めるわ、と日野出は頭を掻く。確かに客観的にみれば菊くんの様な反応が正しいのだろうと、僕もゆっくりと頭を傾げた。僕らの中では珍しい存在だった菊。
ここによぞらくんが居たら昔と同じように「菊ちゃんに嫌われた~」と泣き真似をして僕や日野出に縋るのだろうな。彼は菊のことを嫌いではなかったから。
「そりゃあよぞらくんだって全知全能の神じゃあるまいし誰も彼もに好かれることは無いよ」
「ん、そらあ、なあ……そうだけど」
「ふふ……でも菊くん相変わらず、よぞらくんにメロメロだよね」
よぞらくんも隅に置けないなあ。このひとたらしめ。
「……っはぁ? お前今の菊の反応見て何言ってんだ!?」
「だって彼、よぞらくんのことになるとああやっていつも突っかかって……ツンデレってやつだよね」
くすくすと笑いながら、僕はよぞらくんがハマっているゲームを思い出していた。なんでも、冷たい態度をとってしまうのは嫌よ嫌よも好きなうちだとか。うん、菊くんにぴったりの言葉だな。
「……なんか良崎、お前もゆゆ島に似てきたな……」
それは最高の誉め言葉だ。
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