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異世界サバイバル
三人は確かな道を行く(浅利)
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浅利晴子、47歳。独身。
大学卒業後、教師になっておよそ25年。
ドラマの影響を多分に受けて教師になったせいか、担任になってから初めて受け持った生徒の問題に真剣に取り組みすぎて、婚期を逃した女性である。
当時の教職は完全にブラック企業のそれであり、恋人を作る時間もなかったのだ。
そんな熱血教師だった浅利だが、現在は教師になりたての頃と違い、そこまで仕事に熱心ではない。
結婚を諦めたあたりから、情熱が失われたのだ。
今となっては、教師になった事を後悔することすらある。
そんな浅利だが、ここ最近は教師冥利に尽きるといった状態である。
「アサリせんせー! 鬼島津のお話聞かせてー!」
「えー! 丹羽長秀のお話が聞きたいー」
「わたしは宇喜多直家!」
純真でとても可愛い、ゴブリン三人娘の先生をしているからだ。
外見は人間ではないから問題だらけだが、それでも自分を慕ってくれる三人に、浅利の心は癒やされる。
日本の高校生相手では、こうはいかない。
四堂や花咲は悪い生徒ではないが、癒やしと言うには可愛げが足りない。
頼もしい生徒ではあるが、それとこれとは別問題である。
こんな事を日本で言っては大問題になるだろうが、浅利だって人の子なのだ。自分を慕ってくれる、頼ってくれる幼子にものを教える方が楽しいのである。
ゴブリンと手をつなぎ散歩をしながら日本史を語る浅利の表情は、とても穏やかで幸せそうだ。
それこそ、まるで最愛の子供を連れた母親のように。
「びゅーーん!!」
一人、浅利と手を繋がず走り回るのは、夏鈴。
体を動かすことが大好きで、頭を使うのは苦手な長女。
「今日のお昼、なにかなぁ」
食いしん坊で地味っ子の二女、里奈。
夏鈴とは逆に、体を動かすよりもじっとしている事を好む。
頭の良さは三人娘随一である。
「あ、お花」
末娘、三女の式部はマイペース。
周囲への視野が広く、周りと違う景色が見えているため、他の誰かとペースが合わない。
やや腹黒気味で、問題解決に手段を選ばず効率を重視するきらいがある。
癖はあるが、それでも浅利にとっては大切な子供たちだ。
四堂に言われるまでもなく、大事に育てていく決意がある。
国語、算数、日本史と、体育。おまけで家庭科。
教える内容は随分偏っているが、それらをじっくりと学ばせている。
「今日も、いい天気ねぇ」
歩き疲れた浅利は、木蔭で休憩を取る。
火照った体に風が気持ちいいと、ノンビリもする。
詰め込み教育など、ここでは誰も幸せにならないからやらないのである。
里奈は浅利と一緒に休憩し、式部はそこいらの地面をじっと見ている。夏鈴は休むことなど考えず、走り回ったままだ。
そんな三人が、浅利には愛おしくて。
「この子達が戦場に行かないように、行かなくて済むように、四堂君とはじっくりお話しなきゃ」
もう一つの決意も固めるのであった。
大学卒業後、教師になっておよそ25年。
ドラマの影響を多分に受けて教師になったせいか、担任になってから初めて受け持った生徒の問題に真剣に取り組みすぎて、婚期を逃した女性である。
当時の教職は完全にブラック企業のそれであり、恋人を作る時間もなかったのだ。
そんな熱血教師だった浅利だが、現在は教師になりたての頃と違い、そこまで仕事に熱心ではない。
結婚を諦めたあたりから、情熱が失われたのだ。
今となっては、教師になった事を後悔することすらある。
そんな浅利だが、ここ最近は教師冥利に尽きるといった状態である。
「アサリせんせー! 鬼島津のお話聞かせてー!」
「えー! 丹羽長秀のお話が聞きたいー」
「わたしは宇喜多直家!」
純真でとても可愛い、ゴブリン三人娘の先生をしているからだ。
外見は人間ではないから問題だらけだが、それでも自分を慕ってくれる三人に、浅利の心は癒やされる。
日本の高校生相手では、こうはいかない。
四堂や花咲は悪い生徒ではないが、癒やしと言うには可愛げが足りない。
頼もしい生徒ではあるが、それとこれとは別問題である。
こんな事を日本で言っては大問題になるだろうが、浅利だって人の子なのだ。自分を慕ってくれる、頼ってくれる幼子にものを教える方が楽しいのである。
ゴブリンと手をつなぎ散歩をしながら日本史を語る浅利の表情は、とても穏やかで幸せそうだ。
それこそ、まるで最愛の子供を連れた母親のように。
「びゅーーん!!」
一人、浅利と手を繋がず走り回るのは、夏鈴。
体を動かすことが大好きで、頭を使うのは苦手な長女。
「今日のお昼、なにかなぁ」
食いしん坊で地味っ子の二女、里奈。
夏鈴とは逆に、体を動かすよりもじっとしている事を好む。
頭の良さは三人娘随一である。
「あ、お花」
末娘、三女の式部はマイペース。
周囲への視野が広く、周りと違う景色が見えているため、他の誰かとペースが合わない。
やや腹黒気味で、問題解決に手段を選ばず効率を重視するきらいがある。
癖はあるが、それでも浅利にとっては大切な子供たちだ。
四堂に言われるまでもなく、大事に育てていく決意がある。
国語、算数、日本史と、体育。おまけで家庭科。
教える内容は随分偏っているが、それらをじっくりと学ばせている。
「今日も、いい天気ねぇ」
歩き疲れた浅利は、木蔭で休憩を取る。
火照った体に風が気持ちいいと、ノンビリもする。
詰め込み教育など、ここでは誰も幸せにならないからやらないのである。
里奈は浅利と一緒に休憩し、式部はそこいらの地面をじっと見ている。夏鈴は休むことなど考えず、走り回ったままだ。
そんな三人が、浅利には愛おしくて。
「この子達が戦場に行かないように、行かなくて済むように、四堂君とはじっくりお話しなきゃ」
もう一つの決意も固めるのであった。
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