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episode Q. オーキョの場合 / 性奴隷施設の幽霊
Okyo 002. 幽霊の心
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性奴隷を大切に、より良く活かそうと、工夫をこらし、調教師が必死にあみだした策であるが、それにもかかわらず、又、人間、死んでしまえば、それまでさ、アクセクするな、と言ってしまえば、それまでだ。
だが、それでは終わらなかった幽霊が此処(性奴隷収容施設)にひとり。
性奴隷のオーキョ Okyo は、真っ白い調教室で調教中に、脳ミソがブチンとイッて逝ってしまった。
この事故を教訓に、性奴隷収容施設と館のメディカルシステムは見直され、緊急時に地域の大病院への速やかな移送が可能となり、調教師と上級職員は生体・医療の基礎知識の習得を必須とされた。
今日、館から帰還した性奴隷や肉便器が、マッサージやスパ、セラピストによるケアを受けられるようになったのも、
安全性の高い拘束具が導入されたのも、
オーキョの突然死がきっかけだ。
オーキョは、天国に行くでも地獄に堕ちるでも無になるでもなく、
気が遠くなるほど長い年月、三桁もの春夏秋冬を気温を感じぬ透明なカラダと、情緒を感じぬ空虚で過ごし、
性奴隷収容施設のナカを人知れず、ぷかぷか浮かび、彷徨っていた。
オーキョは、それはそれは沢山の性奴隷、調教師、職員
が此処で生き、年齢を重ねて、此処から居なくなるのを見てきた。
ただただ、暇潰しに見ていただけ。
オーキョは、自分の心臓も脳も火葬場で燃やされ灰になったのだから、思想的な生成変化など見られないと実体の無い何処かで思っていた。
が、
今、とある性奴隷がオーキョの空虚を埋めつつある。
今も、オーキョの眼には、その子の姿が映っている。
栗毛の癖っ毛の、未だに「おとこのこ」の印象を色濃く残す、ジャン。
ピンク色のトレーナーなんか着ちゃって、かわいいやつだな。
・・・---・・・
・・・---・・・
とある雨の日に、
あの日もオーキョは性奴隷収容施設をふわふわと徘徊していた。
こもるともなき雨の音に、唄のようなノイズが混じり、
オーキョはあるはずのない足を止めた。
Hello.
Can you hear my voice ?
"S"trawberry "O"n the "S"hortcake
"S"lave "O"n the "S"carycake
SOS
SOS
オーキョは、声にならぬ声を、
幽霊的超能力でキャッチしたのだ。
メッセージの主は、職員が押す車椅子に乗せられ、バスルームに向かっていた。
全裸の上に、ふわふわのバスタオルをかけられた子犬のような坊やだ。slave 刻印入りの首輪をしている。
どういう訳だか、唇の周りに生クリームをべっとり付着させている。唇どころか、長い栗色の睫毛にまでクリームがポツポツと。
「なんだ、コイツ」と訝るのを余所に、
坊やの げっぷが、廊下に響き渡ったから、
オーキョは、超久しぶりに笑った。
げっぷを吸い上げる天井カセット型空調室内機の隙間で、
死んでから初めて、笑った。
その日から、
坊やを見つけては付け回すのがオーキョの趣味となったのだが、
このジャンという性奴隷は、兎にも角にも、不器用な奴だ。おまけに、弱虫。泣き虫。意気地無。
調教師のちょっとした動作に、一々ビビる。
フェラチオは超へたっぴ、相手のぺニスを勃起させたり、イカせるまで、他の新人性奴隷の何倍も時間がかかる。
受け取ったバイブレーターを落っことす。
スイッチを入れるのも、まごつく。
しょーもない奴。
オーキョは、半ば呆れながらも、
その度に発せられる
ジャンの声にならぬ声の底に、何か針の如く耳を刺すものがあることに気がつきはじめていた。
「幽霊には、心なんて無いんだろ?」
「なんで、きゅーんと、何処かが痛むんだ?」
・・・---・・・
・・・---・・・
そして、今、オーキョの眼に映るジャンは泣いている。
ピンク色のトレーナーに涙が零れ、そこが濃いピンク色になる。
彼は、三日前に、館で処女を捧げたのだ。
憩いのスペースで、若い性奴隷同士で遊んでいる時はよく笑うが、
個室に戻ると、ポロポロと。
あの日、降っていた雨みたいに泣くんだ。
Hello.
Can you hear my voice ?
SOS
SOS
:
:
” I hear you. "
自分は、悪党の人殺しの泥棒の、ろくでなしのまま人生を終えたが。
どんなに青くさくても構わない、幼稚でもいゝ、
ジャンが、この子が、よりよく生きるため
オーキョは、生まれてはじめて、死んではじめて、
あるはずの無い心で思った。
キミを、
守りたい。
だが、それでは終わらなかった幽霊が此処(性奴隷収容施設)にひとり。
性奴隷のオーキョ Okyo は、真っ白い調教室で調教中に、脳ミソがブチンとイッて逝ってしまった。
この事故を教訓に、性奴隷収容施設と館のメディカルシステムは見直され、緊急時に地域の大病院への速やかな移送が可能となり、調教師と上級職員は生体・医療の基礎知識の習得を必須とされた。
今日、館から帰還した性奴隷や肉便器が、マッサージやスパ、セラピストによるケアを受けられるようになったのも、
安全性の高い拘束具が導入されたのも、
オーキョの突然死がきっかけだ。
オーキョは、天国に行くでも地獄に堕ちるでも無になるでもなく、
気が遠くなるほど長い年月、三桁もの春夏秋冬を気温を感じぬ透明なカラダと、情緒を感じぬ空虚で過ごし、
性奴隷収容施設のナカを人知れず、ぷかぷか浮かび、彷徨っていた。
オーキョは、それはそれは沢山の性奴隷、調教師、職員
が此処で生き、年齢を重ねて、此処から居なくなるのを見てきた。
ただただ、暇潰しに見ていただけ。
オーキョは、自分の心臓も脳も火葬場で燃やされ灰になったのだから、思想的な生成変化など見られないと実体の無い何処かで思っていた。
が、
今、とある性奴隷がオーキョの空虚を埋めつつある。
今も、オーキョの眼には、その子の姿が映っている。
栗毛の癖っ毛の、未だに「おとこのこ」の印象を色濃く残す、ジャン。
ピンク色のトレーナーなんか着ちゃって、かわいいやつだな。
・・・---・・・
・・・---・・・
とある雨の日に、
あの日もオーキョは性奴隷収容施設をふわふわと徘徊していた。
こもるともなき雨の音に、唄のようなノイズが混じり、
オーキョはあるはずのない足を止めた。
Hello.
Can you hear my voice ?
"S"trawberry "O"n the "S"hortcake
"S"lave "O"n the "S"carycake
SOS
SOS
オーキョは、声にならぬ声を、
幽霊的超能力でキャッチしたのだ。
メッセージの主は、職員が押す車椅子に乗せられ、バスルームに向かっていた。
全裸の上に、ふわふわのバスタオルをかけられた子犬のような坊やだ。slave 刻印入りの首輪をしている。
どういう訳だか、唇の周りに生クリームをべっとり付着させている。唇どころか、長い栗色の睫毛にまでクリームがポツポツと。
「なんだ、コイツ」と訝るのを余所に、
坊やの げっぷが、廊下に響き渡ったから、
オーキョは、超久しぶりに笑った。
げっぷを吸い上げる天井カセット型空調室内機の隙間で、
死んでから初めて、笑った。
その日から、
坊やを見つけては付け回すのがオーキョの趣味となったのだが、
このジャンという性奴隷は、兎にも角にも、不器用な奴だ。おまけに、弱虫。泣き虫。意気地無。
調教師のちょっとした動作に、一々ビビる。
フェラチオは超へたっぴ、相手のぺニスを勃起させたり、イカせるまで、他の新人性奴隷の何倍も時間がかかる。
受け取ったバイブレーターを落っことす。
スイッチを入れるのも、まごつく。
しょーもない奴。
オーキョは、半ば呆れながらも、
その度に発せられる
ジャンの声にならぬ声の底に、何か針の如く耳を刺すものがあることに気がつきはじめていた。
「幽霊には、心なんて無いんだろ?」
「なんで、きゅーんと、何処かが痛むんだ?」
・・・---・・・
・・・---・・・
そして、今、オーキョの眼に映るジャンは泣いている。
ピンク色のトレーナーに涙が零れ、そこが濃いピンク色になる。
彼は、三日前に、館で処女を捧げたのだ。
憩いのスペースで、若い性奴隷同士で遊んでいる時はよく笑うが、
個室に戻ると、ポロポロと。
あの日、降っていた雨みたいに泣くんだ。
Hello.
Can you hear my voice ?
SOS
SOS
:
:
” I hear you. "
自分は、悪党の人殺しの泥棒の、ろくでなしのまま人生を終えたが。
どんなに青くさくても構わない、幼稚でもいゝ、
ジャンが、この子が、よりよく生きるため
オーキョは、生まれてはじめて、死んではじめて、
あるはずの無い心で思った。
キミを、
守りたい。
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