なんやかんやで蘇っちゃったので異世界でアイドルになる事にしました

氷華

文字の大きさ
28 / 61

第19話

しおりを挟む
校舎を出ると、もう太陽は沈みかけていて赤と青が綺麗に混ざりあっていた。

学校から家までは徒歩10分以内で通える距離だ。
だけど、今日はとても長く感じた。

最悪な日だ。

『もう色々とありすぎて、、、』

そうだね、、、。

夜風が吹き始めて、怒りで熱くなった心を冷やしていく。

この服で、学校行かなきゃならないのかよ。

『パーカーはショッピングモールで買えるからいいけど、タートルネックは制服だからね、なんとも言えないよ。コー監督に言えば?』

あの人に言う前に「似合ってるじゃないか。そのままにしなさい。しなかったら私の次回作に出てもらうよ」って言われると思う。

『うわぁ、言いそう』

本当に最悪だ。
いろんな意味で。

『チーム、入るの?』

ユキは?
どうしたい?

『えっ?』

僕はユキじゃないだろ。
元々はユキの身体だ。
ユキの意思に僕は従う。

そう言うと、ユキは言葉を失ってしまった。そんな風にするつもりは微塵もなかったが、言ってしまったから今更取り消す事なんでできない。

『、、、、た』

ん?

『アイツらのバンド、聴いてて楽しかった』

そうだね。
気分良かった。

『また聴きたいと思った』

そうだね。

『だから』

だから?

『アイツらと合わせたイチ兄の歌聴いてみたい』

、、、えっと、それはどういう意味?

『イチ兄の歌は綺麗で上手い。いつものアカペラも凄いけど、バンドと合わせて歌ったらもっと凄くなる、、、と思ったから、なんだけど変かな?』

早口で興奮したように。
その声は僕の中で響いた。

笑ってしまいそうになる。
緩くなる口元を必死に押さえ込む。
側から見ればおかしな奴かもしれないが、それくらい僕は意表を突かれてしまったのだ。
返事を待つユキに僕は声をかける。

変じゃないよ。
わかった。
ユキが喜んでくれるなら、喜んで。

ユキは芸能界に戻るのを怖がってる。
でも、周りの人はユキが戻る事を求めている。
バンドなんか始めたら、周りはもっと戻る事を求めて来るだろう。
それでも構わない。
ユキが、双子として産まれて来る筈だった弟が喜んでくれるなら、僕は君と一緒にどんな壁も超えてみせるよ。

『えへへ、やった♪』

静かな夜に、ユキは久し振りに心から喜んでくれた。




〆◼️〆◼️〆◼️〆




帰って申込書に必要な事を記入して、風呂に入る。上がって髪を乾かして、ラフな黒ジャージに着替えてベッドに
寝転がる。
フワフワの掛け布団に包まればすぐに睡魔が襲って来た。

ウトウトと瞼が落ちてきたのに身を任せているとピロロロロンピロロロロンとAIパットから音が流れ始めた。

朦朧とする意識の中でパットを見ると【着信・内田ヒカル】と表示されていた。3回ほど無視を続けていたが一向に鳴り止む気配がないので、諦めるように電話に出た。

「はい、もし『あー!やっと出た!姫ちゃん、死んじゃったかと思ったじゃん!電話くらいちゃんと出てよ』今何時だと思っ『え?まだ9時半だよ?もしかして姫ちゃん、もう寝てるの?って事は寮生じゃないんだぁ、いいないいなぁ』人の話を聞『ねね!チームの話、考えてくれた?僕、姫ちゃんには絶対に入って欲しいんだ♪』」

言葉という言葉を掻き消されて、うんざりする。
あぁ、もう、眠い。

「言い、たいの、は、それだけ?」

『えっ?うん、そうだよ』

「そう、じゃ、お休み」

『ちょ、待って!待っててば!』

「、、、何?」

『姫ちゃん、本当に考えてる?シュウゴの幼馴染として言っとくけど、シュウゴは欲しいものは必ず手に入れるタイプだからね。しつこく、ねちっこく、グループに入れようとするからね。早めに諦める事をお勧めするよ。じゃないと姫ちゃんが持たなくな「決めてるから」へっ?』

間抜けな声が電話のから聞こえてくる。

「決めてる。入るって」

『まじ?』

「よ、ろこんで、くれるって、いうか、なん、というか、だから、はい、るつもり」

『はあああ♡うん!うん!待ってる♡待ってるよぉ♡あ、他のメンバー内緒にするから安心して♡驚かせる方がいいよねぇ♡、、、って姫ちゃん聞いてる?』

言うだけ言って、瞼は限界を迎えた。
ゆっくりと閉じられていく世界にヒカルのなんて言ってるかわからない声が響いていた。

明日、学校行ったらコー監督に申込書を提出しよう。
理由を聞かれそうだけど、はぐらかしながら答えよう。
多分、ハルキさんにもコー監督を通して、連絡がいくだろう。

今日だけで、僕は随分と変わったな。

見た目も、おそらく中身も。

ほんの少し。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。

蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。 これで、貴方も私も自由です。 ……だから、もういいですよね? 私も、自由にして……。 5年後。 私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、 親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、 今日も幸せに子育てをしています。 だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。 私のことは忘れて……。 これは、すれ違いの末に離れ離れになった夫婦の物語。 再会したとき、二人が選ぶのは「離婚」か、それとも「再構築」か。 妻を一途に想い続ける夫と、 その想いを一ミリも知らない妻。 ――攻防戦の幕が、いま上がる。

転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる

ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。 レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。 これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...