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第32話
しおりを挟む「ピギィー! 」
猪は一度だけ甲高い鳴き声を上げ、その場で倒れた。
ルナは二射目の準備に入る。
しばらく待つが動く気配は無い。
ルナと離れた位置で弓を構えていたアレクスが警戒しながらゆっくりと近づく。
猪にそばにより状態を確認する。ルナはその間にも弓を構えたまま周辺を警戒している。
アレクスは猪を足で蹴り刺激を与える。反応が無い。
猪は目を大きく開いたまま死亡しているみたいだ。
ルナに向かって大きく手を振り安全を知らせる。
それを確認したルナは「ふぅー」と大きく息を吐き弓を下した。そのままアレクスの元に小走りで近づいた。
「お見事、ルナ。心臓を見事一発だ」
「えへへ。ありがと」
ルナが放った矢は猪に半分以上刺さっている。五十キロぐらいあるだろうか。さほど大きくないサイズだ。
変換器を装備した人は力や体力が大きく上昇する。変換器が無かったら村に着くまでもう一日はかかるだろう。
その効果は勿論武器を振るうさいにも発揮する。普通の女の子であるルナが使っただけでこの結果である。
二人は猪の隣に座り手を合わせて、命を貰う事に感謝を捧げる。
アレクスは立ち上がり処理の準備を始める。
「じゃあ、取り敢えず血抜きしないとな」
アレクスはナイフを取り出し首の付け根を一文字に切る。
後ろ足をロープで縛り木の枝に吊るす。この時頭を下にしておく。十分ぐらいで完了する。
その後川に待って行き、血や汚れ、ノミやマダニ等を洗い落とす。
次に内臓類を傷つけないよう慎重に取り出す。
最後にもう一度綺麗に洗えば、取り敢えずは終了だ。
「これはどうするの? 」
ルナが内臓を見ながら聞いてきた。
「うーん、そうだなぁ」
食べる事の出来る内臓箇所は少なくない。心臓や肝臓(レバー)は新鮮な内に調理すれば食べる事が出来るし、腸は綺麗に洗ってソーセージに使う。
しかし下処理に時間がかかる。冒険の途中でやるには時間は無い。
「もったいないけど今回は埋めよう。下処理してたら日が暮れっちまう」
「そうでね、そうしようか」
二人は持ってきていたスコップを使い、猪が居た辺りに穴を深く掘る。あんまり浅いと獣に掘り返されてしまう。
その穴に内臓を埋めてしっかり土を被せる。
「さて、これでいいか」
「うん。じゃあ、お肉の方はどうするの? 持って行く? 」
「お土産になるし、アンリおばさんに持って行こう。ここで捌くのも大変だしさ」
猪をロープで縛りアレクスが荷物と一緒に担ぐ。ただでさえ重かった荷物に猪が加わりずっしりと肩に重みがかかる。
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