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第33話

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「大丈夫、アーちゃん? 重いんじゃない? アーちゃんの荷物私が持とうか? 」

「うーん、意外と大丈夫だよ。あんまり重くない。やっぱり変換器が効いてるんだな」

 後ろから見ると大きな荷物に足が生えている様に見える。


「少し早く歩くか。せっかくの肉が痛んじまう」

「わかった」
 
 そうこうしているうちに風景が変わってきた。道が綺麗になってきたのだ。段々と日が暮れてきた時やっと村の入口が見えてきた。


「ルナ。見えてきてぞ」

「ほへー、やっとか。やっぱり暗くなってきちゃったね」

 予想通り夕方になる頃にオムタ村に到着した。こんな田舎には見張りもいないので、そのまま村の中に入りアンリおばさんの家を目指す。

 おばさんの家は村の市場が並ぶ広場を抜けて行った先にある。夕方になったが広場には人が多くいて賑わっていた。そろそろ夕飯の準備が始まる頃なのだろう。

 広場を抜けようとしたアレクスとルナを村の人たち少し距離を置いて見ていた。協会の人間にも見えないし、行商人にしては初めて見る顔に興味半分警戒半分の表情をしている。


「なんか見られてるよ、アーちゃん」

「気にすんなって。珍しいんだろ、新しい人が来んのは。俺たちだって村に新しい人が来たら見るだろ。それにこれもあるし」

 背負っている猪の方をチラリと見る。

「……そうだね。これは見ちゃうね」

「だろ。だから気にする必要無し」

 おっかなびっくりしているルナに対しアレクスは気にもしないで、父親に教えてもらったおばさんの家を目指す。

 広場を抜け、村外れの方に歩いて行く二人。アレクスが最後に来たのはもう数年前なので記憶が曖昧だったが、とある家を見た時に確信した。ここがアンリおばさんの家だ。赤い屋根、向かって右側にある納屋。その近くに井戸がある。

 幼い頃の記憶が蘇り「あーこんなんだったなぁ」と懐かしくなった。するとドアが開き一人の女性が出てきた。小柄で恰幅が良く、黒髪で短い髪の毛。エプロンと頭に三角巾をしている。水汲み桶を持っているから井戸に水汲みに出たところだろう。


「おや、アレクスちゃん。やっと来たの」

 こちらに気づいたアンリおばさんがドカドカと音をたてながら近づいてくる。

 アンリおばさんはアレクスの父親アルバートの妹で、アレクスが産まれる前にこのオムタ村に嫁いでいる。アレクスや兄弟が産まれると何回か会いに来てくれたが、アンリおばさんに子供が産まれると、アレクスたちの方から行くようになった。


「アンリおばさん、お久しぶりです」

「あらまぁ、こんなに大きくなちゃって。おばさんビックリだわ」

 アレクスの肩をバンバンと叩きながら挨拶を済ませる。するとルナの方を向き。


「こっちの美人さんはルナちゃんだよね。覚えてるかなぁ、おばさんの事? あんなに小っちゃかったもんねぇ」

「やだわおばさん、美人だなんて。薄っすらとですけど、なんとなく覚えていますよ」

 アンリおばさんはアレクスとよく一緒に遊んでいたルナの事も知っている。小さかった二人の遊び相手をよくしていてくれたのを、ルナはかすかながら覚えていた。

 そんなルナをアンリおばさんはぎゅっと抱きしめ、まじまじとルナの顔を見つめている。


「いやー良かったねアレクスちゃん。ルナちゃんがこんな美人さんになっちゃって。あっはっは」

「ん? ルナが美人だと俺になんかいい事あるの? 」

「ちょ、ちょっとおばさん」

 大笑いしているアンリおばさんを横にルナは顔を真っ赤にして下を向いてしまった。状況が呑み込めていないアレクスはキョトンとしている。
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