異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

文字の大きさ
105 / 174

オルドの悩み オルド視点

しおりを挟む
オルド視点

 僕は、名門ジオニール侯爵家の次男として、15歳の春、念願の魔法学院に入学した。魔法、剣術、そして貴族としての社交。すべてを学び尽くせるこの場所で、僕は自分の人生を切り開くはずだった。
 
 だが、学院で最も注目を集めているのは、僕ではない。間違いなく、マッドたち八人の一年生だ。彼らの社交におけるマナーは、熟練の高位貴族をも思わせるほどに洗練され、教師陣もその完璧な振る舞いに舌を巻いている。特にマリアに関しては、国の重要な外交の場でも完璧にこなせるだろうとまで噂されるほどだ。
 
 商売の授業に関しても同じだ。授業を取っていない僕ですら、彼らが既に店を持ち、驚くほどの利益を上げていることを知っている。他の生徒がまだ計画書すら書けていないのに、彼らはまるで遊ぶかのように商売を成功させている。その姿は、僕たちがいる世界とはまるで別の次元にいるようだった。
 
 彼らは休み時間に中庭で本を読んでいるだけでも、なぜか絵になる。彼らが放つ圧倒的な存在感は、僕がこれまで積み重ねてきた努力を、まるで小さな砂山のように感じさせた。
 
 僕の今の悩みは、魔獣討伐の授業のメンバーだ。成績に大きく響くこの授業のため、慎重に選んだはずだった。だが、僕は彼らの本性を見誤っていたようだ。
 
 長期休暇が迫る中、僕は幼馴染のアヤナと、ブレイブス港街への旅行を計画していた。
 
「オルド、長期休暇にブレイブス港街に行くのであれば、私も帰省するので一緒に行きましょう」
 
 アヤナの提案に、僕たちのグループの四人も「暇だからついていく」と軽々しく言った。
 
 だが旅費の話になった時、彼らの態度は一変した。
 
「オルドは高位貴族なんだろ?そんな費用、お前ならはした金だろう」
 
「そうよ、ケチなこと言わないで全部出してくれればいいじゃない」
 
「僕はしがない男爵だからな、オルド頼むよ」
 
「自分で出すなら行くわけないだろう」
 
 彼らの言葉に、僕は唖然とした。僕は侯爵家の次男だが、学院では身分は関係ないはずだ。そもそも彼らに侯爵家だと話したことも、態度に出したこともない。なのに、彼らは僕を金蔓としか見ていなかったのだ。
 
 僕の心は凍りついた。結局、ブレイブス港街への旅は断念せざるを得なかった。このグループで魔獣討伐の授業を乗り切れる自信も、完全に失ってしまった。
 
 僕はやはり貴族学校へ行くべきだったのだろうかと真剣に悩んだほどだ。
 
 僕はすっかり意気消沈して、アヤナにこう言った。
 
「今からだと、新しいグループなんて見つからないだろうか?」
 
「私は二人ほど心当たりがあるわ」
 
 アヤナがそう言ってくれた直後だった。
 
 控えめな声に振り返ると、そこにいたのは、小柄な女子生徒だった。
 
「私はクミと言います。魔力量は多くないですが、少しだけなら回復魔法が使えます」
 
 彼女の隣にいた男子生徒が続いた。
 
「僕はレイ。クミとは幼馴染なんだ。僕自身はあまり魔力がないんだけど、偵察や罠を仕掛けるのが得意だ。それと、もう一人、僕たちのグループに入れて欲しい奴がいるんだ」
 
 こうして、僕たちのグループは七人になった。彼らの言葉に、僕は不思議な安堵を覚えた。彼らは僕の身分など気にせず、ただ僕という個人を見てくれているように感じられた。
 
 そして、長期休暇の話になった時、クミが素晴らしい提案を僕たちにしてくれた。
 
「王都の郊外に我が家の別荘があるので、よかったらどうですか?」
 
 クミの提案を受けて、レイが言った。
 
「別荘へ行く途中の森でキャンプするのも良くないか?訓練にもなるだろうし、お金を出し合って護衛を雇えば危険も少ないはずだ」
 
 お金を出し合うという、僕にとっては当たり前でなくなったその行為に、僕は胸が熱くなった。僕にも、ようやく本物の仲間ができたと思った。
 
 僕には、彼ら八人のような圧倒的な力はない。それでも、自分の未来のために、今できることを少しずつ、着実にやっていこうと、希望を胸に、改めて決意した。

 最初にグループを組んでいた者たちは、僕たち二人が抜けた後も四人のままだった。先生方はグループ作りには一切関わらないし、彼らがどうするつもりなのか、僕には分からない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

旧転生者はめぐりあう

佐藤醤油
ファンタジー
リニューアル版はこちら https://www.alphapolis.co.jp/novel/921246135/161178785/

処理中です...