異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

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東レ島 1

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 東レ港街から15時出航の高速船に乗り、3日間は船でのんびりと過ごした。波の揺れが心地よく、日中はデッキに出て潮風に当たったり、皆でトランプをしたりして過ごした。あと3時間ほどで東レ島に到着する予定だ。
 
 船内放送が流れ、間もなく到着のアナウンスがあった後、ジルが到着後のスケジュールを説明してくれた。
 
「今回は5日間の滞在になります。到着が夕方4時になり、入島検査もありますので、宿泊に関しては4泊既に手配済みです。今日は宿でゆっくり寛いでください。宿泊する宿はブライトン侯爵様が手配してくださった高級宿で、期待できると思います」
 
 皆が頷く中、ジルは続ける。
 
「明日は私とレティは土地探しと聞き込みをします。船の操縦許可は海域により異なりますので、ここでも許可証が必要になります。ボンドンとドナには講義を受けてもらいます。可能であればリオ様にもお願いしたいんですが、よろしいですか?」
 
 リオは目を輝かせた。
 
「ああ、もちろん! マリアも一緒でいいだろう?」
 
「はい、私もリオとご一緒させていただきます」マリアも嬉しそうだ。
 
「じゃあ、俺とキャロルも受けるよ」
 
 マッドも名乗り出てくれたので、ジルはにこやかに答えた。
 
「分かりました。そのように手配させていただきます。では、夕方までには土地を探しておきますので、全員で見に行きましょう。問題なければ翌日には購入手続きをして、魔法陣を描けるようにします。魔法陣を描き終えてからマレ島に行く予定なので、残り日数によってはマレ島は今回は諦めてもらうことになるでしょう」
 
 ジルの言葉に、リオは明るい声で言った。
 
「魔法陣ができ上がれば週末にもまた来られるしね!」
 
 彼の言葉に、皆が「そうだね」と同意した。
 

 島が見えてくると、周囲の乗船客たちが騒ぎ始めた。
 
「おおー、島が見えてきたぞ! 思ったより大きな島だな!」
「それに、なんて美しい島なんだ!」
 
 皆が言うように、海に浮かぶ島は紫色の夕焼けが辺り一面を照らし、海面もキラキラと光っていて、息をのむほど美しい光景だった。空と海と島が織りなすグラデーションは、まるで神が特別な祝福を与えたとでも言いたくなるほどだった。
 
「キャロル、本当に綺麗だよな。まるで俺たちを歓迎してくれているようだ」
 
 マッドの言葉に、私も同じように思った。明日からがとても楽しみだ。
 
 入島検査を終え、港に降り立つと、鼻腔をくすぐる独特のスパイスの香りと、湿気を帯びた潮の匂いが混じり合っていた。私たちが向かったのは、お父様が手配してくれた宿だ。
 
 東レ島はブレイブス港街とは全く違い、茅葺き屋根の家が多いようだ。既に陽は落ちているので海の色はよく見えないが、湿度も高く、肌にまとわりつくような熱気が、本で読んだ東方大陸に似ている気がする。
 
 宿に到着すると、いつものようにジルとレティが受付に行き、手続きをしてくれている。
 
 案内された部屋は、茅葺き屋根の一軒家で、ブレイブス港街の時と同じように全員が一緒に泊まれるようになっていた。玄関の扉を開けると、広くて淡い色を基調にした明るいリビングになっていて、品よくまとまっていた。大きなふかふかの茶色いソファは、船旅で疲れた体を優しく包み込む。本当に持ち帰りたいくらいだ。
 
「後ほどこちらに軽い食事が届きます。遅い時間なので軽食にさせていただきました。海側のテラスでは釣りが楽しめますし、ここから海に潜ることも可能です。釣った魚は宿で買い取ってもらうことも可能ですし、調理してもらうことも可能です。ここにはキッチンもありますので、料理もできます」
 
 ジルの説明を聞いて、リオもマリアも目を輝かせて喜んでいた。
 
「寝室は地下になります。こちらの宿の売りで、寝室は水中になりますので、窓からは魚を見れるそうです。行ってみましょう」
 
 ジルの言葉に、皆から驚きの声が漏れる。寝室に行ってみると、その言葉通りだった。大きな窓の向こうには、色とりどりの魚が悠然と泳いでいるのが見えて、まるで海の中にいるようだった。窓の外からは、遠くで囁くような波の音と、夜の生き物たちの微かな鳴き声が聞こえてくる。幻想的な光景に、皆から感嘆の声が漏れた。
 
「これはすごいな。窓は特殊な作りでできているんだな。とても参考になるよ」
 
 マッドがそう言うと、リオが嬉しそうに言った。
 
「マッド、今度の家はこういうのもいいよね!」
 
「ああ、そうだな。でも窓は特注だろうな」
 
 マッドが言うと、ジルが続けて答えてくれた。
 
「はい、窓は特注で、この島の職人さんが特許をとっており、ここでしか製造ができませんし、使用もこの島だけにしか許されておりません。使用されるだろうと思いましたので、先ほど宿の方に頼んでおきましたから、すぐに連絡をくれると思います」
 
 さすがはジルだ。マッドやリオの興味をよく理解している。
 
 それからしばらくすると食事が運ばれてきたので、全員で軽い食事を取った。窓ガラスの件も問題なく手配ができ、土地を購入後に大きな窓ガラスを3枚用意してくれることが決まった。本来は数ヶ月待ちになるようだが、たまたま3枚のみ大きさが合わずに返品されたものがあったので、手に入れることができたようだった。マッドは自分で建築するので、ガラスの大きさに合わせて作るのも面白いと思ったようだ。
 
 明日は朝早くから操縦許可証を得るための講習と試験があるので、私たちは早めに寝ることにした。
 
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