142 / 174
三年生へ進級
木々の葉が色づき始め、涼しい風が吹く九月。私たちは学生最後の三年生になった。進級できたのは38人中の30人で、留年生が2人いるため、今期は32人で授業が始まる。受講していた魔物討伐以外の授業は、学院で教育できる範囲を全て終了したため、今期は八人全員が新たな授業を受けることになった。
私とドナは人類学を、マッドとジルは経済学を、リオとボンドンは教育学を、マリアとレティは福祉学をそれぞれ選択した。
今期は貴族学校での授業は受けないが、十一月に行われる貴族学校でのダンスパーティーには八人揃って参加する予定だ。これからは、こうしたパーティーにも度々出席するようになるだろうから、少しずつ慣れていかなければならないだろう。
そして、その翌月には私がマッドと結婚する。当初はマッドの誕生日である八月に予定していたのだが、ミシェランの教会で盛大に執り行われることになった都合で、十二月の私の誕生月に変更になったのだ。
ウエディングドレスは、以前ブレイブス港で購入した家に残されていたものを、私なりに忠実にリメイクして作り上げたドレスを着る予定でいる。お母様は当初反対していたが、出来上がったドレスを見せたら納得してくれた。それほどに素敵なドレスに仕上がっている。
そんなわけで、今期はイベント事が多く、忙しい毎日が予想される。
「マッド、キャロル、今少し良いか?」
リオはまっすぐ私たちの目を見つめ、静かに切り出した。
「僕たちが自由に動けるのは今期が最後だから、相談があるんだ」
リオの声は、その決意を物語っていた。
リオは、私たち両親の故郷である北方大陸に行ってみたいと言い出した。雪と氷の大地で、今では誰も住んでいないと言われている大陸だ。実は、私もリオと同じ気持ちでいた。両親については何も知らないけれど、血の繋がりからくるものなのか、どうしても行かなければならない気がしていたのだ。
「そのうちに言い出すだろうと思っていたよ」
マッドがリオに、どこか見透かしたように話している。
「俺が無性にルルソン村に行きたかったのと同じ気持ちなんだろうな。今期の授業は少ないから、早めに終業できるよう学院長に話してみるよ。それと、父さんと母さん、お爺様にも許可を貰わないといけないな」
北方大陸まではかなり遠く、移動手段についても何が最適なのかも分からないため、詳細な調査が必要だ。それでも、私たちは行くことを決意した。
お父様もお母様もお爺様も、最初は危険すぎると反対していたが、私たちの胸の内にある「使命」のようなものを感じ取ったらしく、最終的に許可をしてくれた。そして、学院長や陛下のお許しも得て、魔獣討伐期間を利用して北方大陸へ行くことが正式に決まった。
今日はマッドと二人で、久しぶりにピピ島に来ている。静かな波の音を聞きながら、他愛ない会話を交わす。
「学生最後の年は本当に忙しくなるな」
「本当ね。田舎でゆっくりのんびりするのが好きな私たちなのに、不思議だよね」
「でもキャロルとの結婚は、俺はすごく待ち遠しいよ」
マッドが優しく言うと、私も自然と笑顔になった。
「ありがとう、マッド。もちろん私も同じ気持ちよ」
澄み切った青空の下、二人並んで座り、穏やかな時間を過ごす。マッドがそっと私の手を取り、指を絡ませてきた。彼の大きな手のひらから伝わる温かさに、心が満たされていくのを感じる。
「結婚しても、こうして二人で此処に来ような」
「ええ、もちろんよ、此処で二人でのんびりと過ごすのはとても癒されるもの」
私がそう言うと、マッドはくすりと笑って、私の頭を優しく撫でた。
「そうだな。二人でのんびり過ごすのは俺にとっても最高の癒しだよ。どんな時も、キャロルが隣にいてくれれば、俺はどんなことでも乗り越えられる気がする」
その言葉に胸が温かくなり、私は彼の肩にそっと頭を預けた。波の音と、彼の穏やかな呼吸だけが聞こえる。このかけがえのない瞬間が、いつまでも続いてほしいと願った。
私はピピ島に何度も来るうちに、最初に訪れた時に見つけた石碑の文字を、概ね解読していた。その内容は既にマッドとリオにも話してある。
石碑には、こう刻まれている。
『女神イシスはこの地を聖なる地として清め、邪な心を持つ者を遠ざけた。男神アマスはイシスの愛する子らを護る盾となる子を育て、守り抜くと此処に誓った』
少し離れた箇所にも、続きが刻まれていた。
『男神アマスと女神イシスは愛する子等に喜びを与えると誓う。時が来れば、優しい光を放つだろう』
この話をマッドにした時、彼はなぜかあまり驚かなかった。それどころか、「俺はキャロルやリオを守る力を与えてくれたアマス神様に感謝している」とまで言ってくれたのだ。
そして、この「喜びを与える」とは、何だろうか?神様は多くの力を私たちに与えてくれた。何よりかけがえのない絆で私たちを結んでくれた。
石碑に刻まれた言葉は、私たちへの約束のようだった。この言葉が私たちの未来にどのような意味を持つのか、私たちにはまだ分からない。それでも、このかけがえのない絆と、与えられた力に、神様たちの想いには感謝するばかりだ。
私とドナは人類学を、マッドとジルは経済学を、リオとボンドンは教育学を、マリアとレティは福祉学をそれぞれ選択した。
今期は貴族学校での授業は受けないが、十一月に行われる貴族学校でのダンスパーティーには八人揃って参加する予定だ。これからは、こうしたパーティーにも度々出席するようになるだろうから、少しずつ慣れていかなければならないだろう。
そして、その翌月には私がマッドと結婚する。当初はマッドの誕生日である八月に予定していたのだが、ミシェランの教会で盛大に執り行われることになった都合で、十二月の私の誕生月に変更になったのだ。
ウエディングドレスは、以前ブレイブス港で購入した家に残されていたものを、私なりに忠実にリメイクして作り上げたドレスを着る予定でいる。お母様は当初反対していたが、出来上がったドレスを見せたら納得してくれた。それほどに素敵なドレスに仕上がっている。
そんなわけで、今期はイベント事が多く、忙しい毎日が予想される。
「マッド、キャロル、今少し良いか?」
リオはまっすぐ私たちの目を見つめ、静かに切り出した。
「僕たちが自由に動けるのは今期が最後だから、相談があるんだ」
リオの声は、その決意を物語っていた。
リオは、私たち両親の故郷である北方大陸に行ってみたいと言い出した。雪と氷の大地で、今では誰も住んでいないと言われている大陸だ。実は、私もリオと同じ気持ちでいた。両親については何も知らないけれど、血の繋がりからくるものなのか、どうしても行かなければならない気がしていたのだ。
「そのうちに言い出すだろうと思っていたよ」
マッドがリオに、どこか見透かしたように話している。
「俺が無性にルルソン村に行きたかったのと同じ気持ちなんだろうな。今期の授業は少ないから、早めに終業できるよう学院長に話してみるよ。それと、父さんと母さん、お爺様にも許可を貰わないといけないな」
北方大陸まではかなり遠く、移動手段についても何が最適なのかも分からないため、詳細な調査が必要だ。それでも、私たちは行くことを決意した。
お父様もお母様もお爺様も、最初は危険すぎると反対していたが、私たちの胸の内にある「使命」のようなものを感じ取ったらしく、最終的に許可をしてくれた。そして、学院長や陛下のお許しも得て、魔獣討伐期間を利用して北方大陸へ行くことが正式に決まった。
今日はマッドと二人で、久しぶりにピピ島に来ている。静かな波の音を聞きながら、他愛ない会話を交わす。
「学生最後の年は本当に忙しくなるな」
「本当ね。田舎でゆっくりのんびりするのが好きな私たちなのに、不思議だよね」
「でもキャロルとの結婚は、俺はすごく待ち遠しいよ」
マッドが優しく言うと、私も自然と笑顔になった。
「ありがとう、マッド。もちろん私も同じ気持ちよ」
澄み切った青空の下、二人並んで座り、穏やかな時間を過ごす。マッドがそっと私の手を取り、指を絡ませてきた。彼の大きな手のひらから伝わる温かさに、心が満たされていくのを感じる。
「結婚しても、こうして二人で此処に来ような」
「ええ、もちろんよ、此処で二人でのんびりと過ごすのはとても癒されるもの」
私がそう言うと、マッドはくすりと笑って、私の頭を優しく撫でた。
「そうだな。二人でのんびり過ごすのは俺にとっても最高の癒しだよ。どんな時も、キャロルが隣にいてくれれば、俺はどんなことでも乗り越えられる気がする」
その言葉に胸が温かくなり、私は彼の肩にそっと頭を預けた。波の音と、彼の穏やかな呼吸だけが聞こえる。このかけがえのない瞬間が、いつまでも続いてほしいと願った。
私はピピ島に何度も来るうちに、最初に訪れた時に見つけた石碑の文字を、概ね解読していた。その内容は既にマッドとリオにも話してある。
石碑には、こう刻まれている。
『女神イシスはこの地を聖なる地として清め、邪な心を持つ者を遠ざけた。男神アマスはイシスの愛する子らを護る盾となる子を育て、守り抜くと此処に誓った』
少し離れた箇所にも、続きが刻まれていた。
『男神アマスと女神イシスは愛する子等に喜びを与えると誓う。時が来れば、優しい光を放つだろう』
この話をマッドにした時、彼はなぜかあまり驚かなかった。それどころか、「俺はキャロルやリオを守る力を与えてくれたアマス神様に感謝している」とまで言ってくれたのだ。
そして、この「喜びを与える」とは、何だろうか?神様は多くの力を私たちに与えてくれた。何よりかけがえのない絆で私たちを結んでくれた。
石碑に刻まれた言葉は、私たちへの約束のようだった。この言葉が私たちの未来にどのような意味を持つのか、私たちにはまだ分からない。それでも、このかけがえのない絆と、与えられた力に、神様たちの想いには感謝するばかりだ。
あなたにおすすめの小説
【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!
桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。
「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。
異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。
初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!
【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
【完結】異世界転移した私がドラゴンの魔女と呼ばれるまでの話
yuzuku
ファンタジー
ベランダから落ちて死んだ私は知らない森にいた。
知らない生物、知らない植物、知らない言語。
何もかもを失った私が唯一見つけた希望の光、それはドラゴンだった。
臆病で自信もないどこにでもいるような平凡な私は、そのドラゴンとの出会いで次第に変わっていく。
いや、変わらなければならない。
ほんの少しの勇気を持った女性と青いドラゴンが冒険する異世界ファンタジー。
彼女は後にこう呼ばれることになる。
「ドラゴンの魔女」と。
※この物語はフィクションです。
実在の人物・団体とは一切関係ありません。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆