異世界の片隅で、穏やかに笑って暮らしたい

木の葉

文字の大きさ
20 / 174

図書館

 今日は、冒険者ギルドで受けた図書館での本整理のクエストの日だった。
 
 私たち3人は朝6時に起き、準備を始めた。といっても、服に着替えて朝食を済ませ、軽く部屋を掃除する程度なので7時過ぎには支度が整った。ここから図書館までは歩いて20分ほど。まだ少し早かったが、初めて行く道なので早めに出発することにした。
 
 図書館は公園の中にあり、整えられた花壇や木々のほかにも広々とした芝生もあり、朝の散歩のようで歩いていても気持ちが良かった。20分ほど前に到着し、図書館の前で待っていると、一人の女性が私たちに向かって走ってきた。
 
「あなたたちが今日、手伝ってくれる子たち?」
 
 リオがにこやかな笑顔で答えた。
 
「初めまして。本日はお世話になります。リオとマッド、そしてキャロルです。どうぞよろしくお願いします」
 
 私とマッドも深く頭を下げてお辞儀をした。
 
「こちらこそよろしくね。さあ、中に入りましょうか」
 
 お姉さんが図書館の鍵を開け、中へ招き入れてくれた。通路を渡った先に、大きな扉が見える。
 
「この扉の向こうが図書室よ。中に入ったら、私語は厳禁だから気をつけてね。食べ物や飲み物の持ち込みも禁止。とても貴重な本がたくさんあるから、本は丁寧に扱ってちょうだい。今から手袋を渡すから、はめてね」
 
 そう言って渡されたのは、肌触りの良い薄手の手袋だった。
 
「お願いするのは、昨日返却された本を所定の場所に戻す作業よ」
 
 そう言いながら、本棚の見取り図が書かれた用紙を手渡された。
 
「渡した用紙に本棚の記号番号が書いてあるでしょう?本の裏面に書かれた記号番号と同じ棚に、本を戻していくのよ」
 
 まさに私たちが想像していた通りの仕事だった。
 
 図書室の扉を開けて中に入った瞬間、私たちは思わず声を上げてしまい、すぐに怒られてしまった。声を出さずにはいられないほど、そこには壁一面にずらりと本棚が並び、本、本、本……。口を開けたまま天井近くに届く本棚を見上げていると、お姉さんが小声で話しかけてきた。
 
「上の方にある本は、貸し出しも持ち出しも不可の本だから、上に戻す必要のある本はないから安心して。昨日返却された本は『3A』の部屋にあるから、取ってきて始めてちょうだい。何か分からないことがあれば、『8A』の部屋にいるから聞きに来てね」
 
 そう言うと、お姉さんは足早に去っていった。説明が少なすぎないかしら、と私は思った。
 
 この作業は、私たちには向いていた。特に私は、こういった黙々と集中する作業が嫌いではない。むしろ好きな方だ。マッドもリオも苦手ではないようだった。
 
 戻すべき本はかなりの量があったが、戻す場所は大体同じなので、意外と早く片付いた。棚がジャンル別に記号で分けられていたため、私が本を記号別に分類し、リオとマッドがそれぞれの棚に戻していく。私は分類を終えた後、二人が本を戻した棚を見回り、間違いがないかを確認し、もしあれば修正するという作業を行った。
 
 12時には全ての作業が終わり、お姉さんに報告に行った。彼女は俯いたまま、私たちに指示を出した。
 
「そう。お昼に行っていいわよ。1時には戻ってきて、作業を再開してちょうだい」
 
 私たちは公園の近くにある飲食店でサンドイッチを買い、公園のベンチで食べた。
 
「うわー、うまそう!」リオが包装紙を破りながら目を輝かせる。
 
「もう、リオったらそんなにお腹が空いていたの?」
 
 そう言って笑った私だったが、自分も一口大きく頬張ると思わず笑みを浮かべてしまった。
 
 公園を吹き抜ける風が心地よく、隣で談笑するリオとマッドの声が、心を穏やかにしてくれる。
 
 昼休憩も終わり、図書室へ戻ると、お姉さんが駆け寄ってきた。
 
「あなたたち、本当に全ての作業を終わらせたのね!驚いたわ、すごいわね!こんなに早く終わるなんて思っていなかったから、つい素っ気ない態度を取ってしまってごめんなさい。今日はこれで終わりよ。ありがとう、本当に助かったわ。図書館の本を読みたければ、好きなだけ読んで構わないからね。入館料も必要ないわ。また今度、依頼させてもらうから、その時もよろしくね」
 
 そう言うと、お姉さんは足早に仕事に戻っていった。
 
 今日の私たちの予定は図書館三昧だったので、閉館時間である夕方5時までは、各自好きな本を読むことにした。あと4時間もある。
 
 私はこの先、この世界で生きていくのに必要な知識を得るため、それぞれの大陸の特徴や身体能力の違いについて書かれた本を何冊か手に取り、読み始めた。
 
 人種によって肌や髪の色の特徴はあるが、中には魔力が肌や髪の色に影響する者もいるらしい。

大陸と人々の特徴
 
 * 北方大陸
   雪と氷の大地で、昼は短く夜が長い。魔力に長けている者が多いと言われている。
   北方大陸の者たちはノーステリア人と呼ばれており、色素が薄く、白い肌、薄茶色の髪が多い。また王族は金髪で水色の瞳をしていたと言われており、疫病により滅亡したと言われている。
 
 * 南方大陸
   荒野と砂漠の大地で、昼間は灼熱の暑さだが夜は気温が下がり、寒暖差が激しい。作物は育たず、主食は魔獣や虫、サボテンになる。身体能力に優れている者が多い。
   南方大陸の者たちはサースランド人と呼ばれており、浅黒い肌、黒や焦茶色の髪、筋肉質で大柄の者が多い。
 
 * 東方大陸
   山もあり川もある、四季のある土地。主食は米。
   東方大陸の者たちはイースキャロン人と呼ばれており、肌色、黒や焦茶色の髪と瞳で、小柄な者が多い。
 
 * 西方大陸
   湿気が強く草木がよく育つ熱帯雨林。四季はなく乾季と雨季がある。
   西方大陸の者たちはウエスニール人と呼ばれており、やや浅黒い肌、茶系の髪をしている者が多い。
 
 * 中央大陸
   穏やかな四季があり、多種類の作物が育っている。千年前は大地が枯れ果て、人が住める環境ではなかったが、偉大な魔法使いによって蘇ったとされる大陸。
   中央大陸の者たちはイミグラント人と呼ばれており、今では混血が多い。
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜

月城 蓮桜音
ファンタジー
仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。 ※この作品は、カクヨムでも掲載しています。

伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦

未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?! 痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。 一体私が何をしたというのよーっ! 驚愕の異世界転生、始まり始まり。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜

青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ 孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。 そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。 これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。 小説家になろう様からの転載です!

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

アラフォー幼女は異世界で大魔女を目指します

梅丸みかん
ファンタジー
第一章:長期休暇をとったアラフォー独身のミカは、登山へ行くと別の世界へ紛れ込んでしまう。その場所は、森の中にそびえる不思議な塔の一室だった。元の世界には戻れないし、手にしたゼリーを口にすれば、身体はなんと6歳の子どもに――。 ミカが封印の箱を開けると、そこから出てきたのは呪いによって人形にされた大魔女だった。その人形に「大魔女の素質がある」と告げられたミカは、どうせ元の世界に戻れないなら、大魔女を目指すことを決心する。 だが、人形師匠はとんでもなく自由すぎる。ミカは師匠に翻弄されまくるのだった。 第二章:巷で流れる大魔女の遺産の噂。その裏にある帝國の侵略の懸念。ミカは次第にその渦に巻き込まれていく。 第三章:異世界で唯一の友人ルカが消えた。その裏には保護部屋の存在が関わっていることが示唆され、ミカは潜入捜査に挑むことになるのだった。