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VI
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ふんわりとした白いシフォンのウェディングドレスを着た姫乃は、世界で一番愛らしい花嫁だった。霞草のような小さな小花のブーケが彼女の愛らしさを引き立てる。
(これで、良かったんだよな......)
「二人は永遠の愛を誓いますか?」
神父様の問いかけに、姫乃も猿山も”違います”と言葉を一つにした。
姫乃が離れていってしまう。
身体が引き裂かれるような痛みだった。
私達はずっと一緒にいた筈なのに。
*
宴もたけなわ。二次会で姫乃と猿山を囲って誰もが盛り上がる中、そっと私はテラスへと夕方の風にあたりに行った。
あと1時間もすれば解散だ。私を追って一人の男がやってくる。今日はずっと視線を感じていた。
「岸さんのお色直しはないんですか?」
「花嫁じゃあるまいし」
「それは残念。スーツ姿もかっこいいですけど、僕は岸さんのドレスを見に来たのに」
これは三隅だ。三隅はこんなに冗談を言うタイプだったのだろうか。思ったより、三隅のことを私は知らなかった。
「今日、良い結婚式でしたね」
三隅は相変わらずの烏龍茶のグラスを近くのテーブルに置いた。今日も素面だったらしい。そういえばいつ飲みに誘っても三隅はアルコールを飲まない。お酒に弱いのかもしれない。三隅の切れ長の目が少しだけ切なく揺れた。
「岸さん、最近俺のこと避けてますよね」
「何のこと?」
「惚けないでください。前は二週間に一回は一緒に飲みに行ってたのに」
それは最初は私が姫乃を三隅にゴリ押しするために誘っていたものだった。三隅はガンとして頷かなかったけれど。その内に私の愚痴を聞いてくれたり、相談相手になってくれたりして、心地よいと感じてしまうようになっていた。
猿山の件があってから私は三隅に何故か近寄れなくなっていた。四ヶ月ちょっと。こんなに離れて居たのは初めてだ。
いや、正確には三隅がーー私をーー。
“わたしを思い出して”
頭痛がする。
今日は飲みすぎたかもしれない。三隅の真剣な顔を見ていると、心が騒つく。
「今日で騎士役はおしまいですよね」
「何を言っているんだ」
「だって、岸さんは酔ったときに言ってました。姫乃がいい人とくっつけば私も安心できるって」
それは三隅と姫乃をくっつける為に言った方便だ。
三隅は私の胸ポケットのコサージュを簡単に奪い取った。
「岸 姫乃さんは猿山と結婚したんですよ。姫乃さんのお姉さんの岸 愛乃さん。ねぇ、もう、岸さんは姫乃さんの騎士じゃなくて良いんです。女の子の愛乃さんに戻りませんか?」
(これで、良かったんだよな......)
「二人は永遠の愛を誓いますか?」
神父様の問いかけに、姫乃も猿山も”違います”と言葉を一つにした。
姫乃が離れていってしまう。
身体が引き裂かれるような痛みだった。
私達はずっと一緒にいた筈なのに。
*
宴もたけなわ。二次会で姫乃と猿山を囲って誰もが盛り上がる中、そっと私はテラスへと夕方の風にあたりに行った。
あと1時間もすれば解散だ。私を追って一人の男がやってくる。今日はずっと視線を感じていた。
「岸さんのお色直しはないんですか?」
「花嫁じゃあるまいし」
「それは残念。スーツ姿もかっこいいですけど、僕は岸さんのドレスを見に来たのに」
これは三隅だ。三隅はこんなに冗談を言うタイプだったのだろうか。思ったより、三隅のことを私は知らなかった。
「今日、良い結婚式でしたね」
三隅は相変わらずの烏龍茶のグラスを近くのテーブルに置いた。今日も素面だったらしい。そういえばいつ飲みに誘っても三隅はアルコールを飲まない。お酒に弱いのかもしれない。三隅の切れ長の目が少しだけ切なく揺れた。
「岸さん、最近俺のこと避けてますよね」
「何のこと?」
「惚けないでください。前は二週間に一回は一緒に飲みに行ってたのに」
それは最初は私が姫乃を三隅にゴリ押しするために誘っていたものだった。三隅はガンとして頷かなかったけれど。その内に私の愚痴を聞いてくれたり、相談相手になってくれたりして、心地よいと感じてしまうようになっていた。
猿山の件があってから私は三隅に何故か近寄れなくなっていた。四ヶ月ちょっと。こんなに離れて居たのは初めてだ。
いや、正確には三隅がーー私をーー。
“わたしを思い出して”
頭痛がする。
今日は飲みすぎたかもしれない。三隅の真剣な顔を見ていると、心が騒つく。
「今日で騎士役はおしまいですよね」
「何を言っているんだ」
「だって、岸さんは酔ったときに言ってました。姫乃がいい人とくっつけば私も安心できるって」
それは三隅と姫乃をくっつける為に言った方便だ。
三隅は私の胸ポケットのコサージュを簡単に奪い取った。
「岸 姫乃さんは猿山と結婚したんですよ。姫乃さんのお姉さんの岸 愛乃さん。ねぇ、もう、岸さんは姫乃さんの騎士じゃなくて良いんです。女の子の愛乃さんに戻りませんか?」
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