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VII
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か弱くて可愛い女の子の私は消したじゃないか。
姫乃は同じ年に産まれた年子の妹。最初の悲劇が起きたのは保育園に通っている頃で例の雲梯の事件の少し前。私達の4つ上の兄が事故で亡くなった。両親は悲しみに耽り、私達の面倒をあまり見なくなった。
私が姫乃を守らなければ。
次の悲劇は母が私達が小学生の頃に自殺したこと。兄に跡取りとしての期待を目一杯かけていた母にとって、兄の死は特別だったらしい。このことで悲しみにばかりくれていた父は目が覚めたけれど、気がついた頃には岸家は借金に追われていた。父はマグロ漁船に乗り込み、私達の学費を稼いでくれたけれど、家庭には殆ど帰ってこなかった。
私が姫乃を守らなければ。
最後の悲劇はマグロ漁船で父が滑落死したこと。莫大な保険金は私達が大人になるまで一応は不自由のない生活をさせてくれるほどだったけれど、日々の営みはお金だけでは解決できないことばかりだ。
私が姫乃を守らなければ。
大学には行かずに働きたいという私を姫乃は必死に止めた。せめて一緒に卒業証書を受け取りたいと。私は大学に通いながら働いてなんとか2人分の学費を払いつつ大卒の認定を得て良い就職を果たした。
私の人生にドレスのお姫様に憧れている暇はなかった。王子様との恋愛に焦がれる時間はなかった。
愛乃という名前は余りにも私の人生に合っていなくて、周囲から呼ばれるのを嫌がった。姫乃にさえ許していない。
人生はやっと立てるようになったと思った瞬間に膝を後ろから蹴ってくる。だからせめて姫乃だけは私の手で守ろうと思った。
“お前はもう姫乃を守らなくていいんだよ”
“キシちゃんは自分のことを第一に考えて”
ねぇ、今更そんな生き方は出来ないよ。
姫乃は同じ年に産まれた年子の妹。最初の悲劇が起きたのは保育園に通っている頃で例の雲梯の事件の少し前。私達の4つ上の兄が事故で亡くなった。両親は悲しみに耽り、私達の面倒をあまり見なくなった。
私が姫乃を守らなければ。
次の悲劇は母が私達が小学生の頃に自殺したこと。兄に跡取りとしての期待を目一杯かけていた母にとって、兄の死は特別だったらしい。このことで悲しみにばかりくれていた父は目が覚めたけれど、気がついた頃には岸家は借金に追われていた。父はマグロ漁船に乗り込み、私達の学費を稼いでくれたけれど、家庭には殆ど帰ってこなかった。
私が姫乃を守らなければ。
最後の悲劇はマグロ漁船で父が滑落死したこと。莫大な保険金は私達が大人になるまで一応は不自由のない生活をさせてくれるほどだったけれど、日々の営みはお金だけでは解決できないことばかりだ。
私が姫乃を守らなければ。
大学には行かずに働きたいという私を姫乃は必死に止めた。せめて一緒に卒業証書を受け取りたいと。私は大学に通いながら働いてなんとか2人分の学費を払いつつ大卒の認定を得て良い就職を果たした。
私の人生にドレスのお姫様に憧れている暇はなかった。王子様との恋愛に焦がれる時間はなかった。
愛乃という名前は余りにも私の人生に合っていなくて、周囲から呼ばれるのを嫌がった。姫乃にさえ許していない。
人生はやっと立てるようになったと思った瞬間に膝を後ろから蹴ってくる。だからせめて姫乃だけは私の手で守ろうと思った。
“お前はもう姫乃を守らなくていいんだよ”
“キシちゃんは自分のことを第一に考えて”
ねぇ、今更そんな生き方は出来ないよ。
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