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④砂金を売る-2-
しおりを挟むアームズの町の商業ギルドは、一言で言えば銀行のロビーのように落ち着いた雰囲気のクラシックな造りだった。
「すみません。売りたいものがあるのですが・・・」
受付に向かった奈緒美はカウンターに居る受付嬢に話しかける。
「売りたいもの、ですか?何でしょうか?」
受付嬢の言葉に奈緒美はリュックから砂金が入った袋を出した。
「こ、これは!・・・私では判断しかねますので暫くお待ち下さい!」
袋を開けて中身を確かめた受付嬢が二階にある奥の部屋に慌てふためきながら駆けて行く。
「お待たせいたしました!ギルドマスターがお客様とお話ししたいとの事です」
そう言った受付嬢は奈緒美を二階の奥の部屋───ギルドマスターの執務室へと案内する。
コンコンコン
「王て、ではなく・・・ギルドマスター、お客様をお連れしました」
受付嬢が奈緒美を連れて来た事を告げると、ギルドマスターが部屋に入るようにと扉の向こうから告げる。
「失礼いたします・・・」
(こ、この人がギルドマスター・・・?ここ、冒険者ギルドじゃないよね?)
商業ギルドのギルドマスターだから商人っぽい雰囲気を纏った人だと思い描いていたのに、歴戦の猛者を思わせるムキムキのゴリマッチョで長身な四十代前半の男性だったものだから奈緒美は驚いてしまう。
「・・・・・・黒髪のお嬢さん、呼び出して済まないな」
ゴリマッチョな商業ギルドのギルドマスターは受付嬢に二人分のお茶の用意を命じた後、奈緒美に近くのソファーに座るようにと声を掛ける。
暫くして受付嬢が二人分のお茶をテーブルの上に置いていく。
「黒髪のお嬢さん、まずは貴女の名前を教えてくれないか?いや、私から名乗るのが筋だな。私は商業ギルドのギルドマスターをしているフェリクス=ヴェルフェルトだ」
「私は霧沢 奈緒美・・・パールディア王国では苗字が先に来ますから、貴国風に言えばナオミ=キリサワです」
互いに名乗った後、フェリクスが本題に入る。
「ナオミ殿、貴女が売りたいと持ってきたこの砂金だが・・・これは貴女の故郷で採れたものかな?」
「いえ、亡き両親の形見と言えばいいのでしょうか。島を出た私が新天地で生活をする為に持ってきたものですから、どこで採れたのか聞いた事がないので分からないのです」
(黒髪黒目で膨大な魔力。異世界人だと思っていたのだが・・・)
小柄という言葉から程遠い奈緒美は異世界人ではないと思うが世界は広いのだ。
もしかしたら異世界には奈緒美のように長身の人間が居るのではないか?
目の前に居る女性が異世界人かも知れない可能性を視野に入れながら、フェリクスは元王族らしく美しい洗練された仕種でお茶に口を付ける。
それがどうかしたのか?と首を傾げる奈緒美にギルドマスターことフェリクスが、ナゲットが混じった砂金は質の良いものだったので純粋に砂金とナゲットの価値だけで金貨二十一枚───二十一ゴールドで買い取る事を告げる。
「・・・・・・それでお願いいたします」
(金貨一枚って確か現代の価値に換算すると十二万円くらいだと聞いた事があるわ。砂金の相場は一グラムで一万円を超えていてナゲットはその倍だったかな?という事は二百五十万円以上!?)
二十ゴールドが入った革袋をリュックに入れた後、スキル【種】で出した砂金が一気に大金になったという事実に奈緒美は表情を変えなかったが、心の中では金儲けの方法を見つけたという事実に喜びのダンスを踊っていた。
「ナオミ殿、貴女は新天地で生活をすると言っていたな。これからどうするつもりでいるのかね?」
「・・・そうですね。故郷では女性向けにエステ・・・マッサージをしていましたから、それを活かして何れはマッサージの店を開きたいと思っています」
「マッサージの店であれ、料理屋であれ、店を開きたいのであれば、まずは商業ギルドに登録する事だ」
店を開くには商業ギルドに登録しないと出来ない事を、フェリクスが奈緒美に教える。
「分かりました」
そう答えた奈緒美はフェリクスの言葉に従い一階の受付へと降りて行った。
※フェリクスは王妃腹の第二王子で、現国王のアルベール&親子ほど年の離れている第三王子のディーフリードとは母親が同じの実の兄弟。姉妹もいます。
フェリクスとディーフリードとの間に兄弟が居るけど、愛妾であるエメラル夫人とガーネ夫人が母親なので王子ではないし王位継承権もありません。
現国王&第三王子もフェリクスのようにムキムキのゴリマッチョです。ディーフリードはイケメン、アルベール&フェリクスはイケオジ。
この話を書いた当初は金の相場は10,000円を超えていませんでしたが、9月現在は10,000円以上となっているのでそれに合わせています。数百円単位は切り捨てです。
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