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王妃になった男爵令嬢-1-
しおりを挟む君の望みは私が叶えましょう
その対価として君の魂を貰いますよ
君の魂はどのような花を咲かせるのでしょうか
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
キャンサー王国の王立学園には問題児が居る。
問題児の名前はスピカというクラウン男爵家の令嬢だ。
母親がメイドだという理由で平民として育ったスピカだが、母親が死んだと同時に正妻との間に子供が産まれなかったクラウン男爵家に引き取られたという経歴を持っている。
「えっ?あたしって本当は男爵家のお姫様だったの!?」
母親の葬儀が終わると同時に父親と名乗る男の登場にスピカは驚いたが、母親からは『スピカ、貴女の父親は男爵様なのよ』と幼い頃から言われていたし、何と言っても彼女はピンク色の髪に青い瞳という父親の特徴をそのまま受け継いでいたのだ。
男爵が自分を娘と認めてくれた=贅沢が出来る=お姫様になれる
そう認識したスピカは男と共に馬車に乗ってクラウン男爵家へと向かうのだった。
男爵令嬢になったらお姫様のような暮らしが出来ると思っていた。
だが、現実はスピカにとって残酷だった。
自分の事は『あたし』ではなく『私』と称するようにとか、スープを飲む時に音を立ててはいけないとか、パンはそのまま齧るのではなく小さく千切って食べるとか等───。
例を挙げたらキリがないが、男爵が幼い頃から教育係として仕えている老女はスピカのやる事なす事に対して金切り声で叱るのだ。
顔は母親に似て儚い美少女だから、そこに淑女としての立ち居振る舞いと華やかさを身に付けさせたら裕福な子爵家、或いは伯爵家にスピカを嫁がせる事で男爵家に自分達が贅沢出来るだけの援助をして貰おうと考えていたクラウン男爵は頭を抱える。
「旦那様!私が口にするのは憚れますが、お嬢様からは貴族としての在り方を学ぼうという気概が一切感じられません!!」
自分ではスピカを一人前の淑女にするのは無理だ。ならば、いっその事王立学園に入学させればいいのだと、老女が男爵に提案する。
王立学園とは、その名が示す通り王国が設置した学園で、そこに入学する事が出来るのは王侯貴族の子女だけである。
例え家が貧しくとも優秀であれば授業料に教科書代に制服代といった金銭面が免除される等、ありとあらゆる面で優遇されるのだ。
老女が提案した事はクラウン男爵も考えていた。
だが、スピカの取り柄は顔と平民として育ったが故の天真爛漫な振る舞いだけだ。
そんなスピカが王立学園に入学出来ない事くらい───仮に入学出来たとしても悪い意味で目立つ事くらいクラウン男爵にも分かる。
「せめてスピカが貴族の娘としての振る舞いが出来ていたら・・・」
(そうだ!)
そんな時、男爵にある考えが浮かぶ。
天真爛漫で儚い美少女なスピカの姿は、高位貴族の子息の目には新鮮に映るのではないか?
彼等の目に留まれば高位貴族の愛妾・・・上手く事が運べば王太子殿下の愛妾になれるのではないか?
話すだけ話してみようと思ったクラウン男爵はスピカの部屋へと向かう。
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