赤ずきんは狼(おとこ)から逃げられない

白雪の雫

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10話

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 「お、お兄ちゃん?何だか、擽ったい・・・」

 胸の突起を刺激されるのはヴィルヘルミナにとって初めての経験であるが、こそばゆいような、もっと弄って欲しいような───上手く言えないがそれは決して悪いものではないので少女はウォルフが与えてくれる未知の感覚に身を委ねていた。

 「ウォルフお兄ちゃん・・・何だか赤ちゃんみたい」

 大人の男の人であるはずのウォルフが赤ちゃんのように自分の胸に顔を埋めている姿がおかしいのか、ヴィルヘルミナは思わず楽しそうに笑ってしまった。

 「ヴィルヘルミナのお父さんも今の俺がヴィルヘルミナにやっている事をお母さんに対してしているんだよ」

 「そ、そう・・・なの?」

 「ああ。ヴィルヘルミナが寝ている時に君のお父さんとお母さんはこうやって・・・愛し合っているんだ」

 「お、お兄ちゃん!?・・・ひゃっ!」

 自分でも気付かぬうちに固くなっている片方の胸の突起を舌先で突かれ、甘噛みされ、もう片方の胸の突起を指先で摘ままれたものだから悲鳴に似た声を上げて恥ずかしくなってしまったヴィルヘルミナは慌てて掌で口を塞いでしまう。

 「ヴィルヘルミナの声が聴きたい・・・」

 「お、お兄ちゃん?ウォルフお兄ちゃんは、あたしがさっきみたいに変な声を上げても・・・おかしくなったと思ったりしない?」

 「ああ」

 穏やかな笑みを浮かべて色気を含んだ低い声で言ったウォルフは、不安になっているヴィルヘルミナの掌を掴むと指を絡ませる。

 「俺がヴィルヘルミナに変な声を上げさせるんだ。だからおかしくなったとは思わない・・・」

 寧ろそれに喜びを感じるし、愛しさを感じるのだと、ウォルフは泣き出しそうになっているヴィルヘルミナを宥めながら再び少女と口唇を重ねる。

 さっきは軽く触れるだけの口付けだったが、今のキスは深く、そして侵入してきた男の舌が少女の舌に絡むものだった。口付けを交わす水音が部屋に響く。

 (あ、あれ?何だか凄く、気持ちいい・・・)

 口端からは一筋の唾液を伝わせ、頭がふわふわするような感覚のキスにヴィルヘルミナはうっとりとした表情を浮かべている。

 「んっ、んぅ・・・」

 (い、息が出来ない・・・っ!)

 苦しくなったヴィルヘルミナはウォルフから逃れようと必死になって足掻いていた。

 「ヴィルヘルミナ?」

 「く、苦しい・・・」

 (苦しい?・・・・・・ああ)

 何が言いたいのかが分かったウォルフは名残惜しそうにヴィルヘルミナから離れる。

 「ヴィルヘルミナはまだ子供だから知らなくて当然だが、キスする時は鼻で息をするんだ」

 自分から逃れようとする少女の姿と態度に傷ついてしまった狼であったが、酸素を求めるかのように肩で息をしているヴィルヘルミナにウォルフは笑いながらキスの仕方を教える。

 「子供のヴィルヘルミナに大人のキスは早すぎたな」

 「・・・・・・・・・・・・子供じゃないもん!」

 六年後にはウォルフお兄ちゃんのお嫁さんになれるくらいの立派な淑女レディーになっているんだもん!

 大好きなお兄ちゃんに子供扱いされて何だかちょっぴり悔しくなったヴィルヘルミナはぷく~っと頬を膨らませながらウォルフをポカポカと叩く。

 「そうだな。ヴィルヘルミナは立派な淑女レディーだもんな」

 ウォルフにとって子供のポカポカ攻撃など痛くも痒くもない。寧ろ可愛くて微笑ましいものでしかない。ウォルフはそんなヴィルヘルミナのポカポカ攻撃を軽く笑いながら受け止めた後、少女を抱き締める。

 (この子は俺の・・・俺だけの雌になる為に生まれてきた女だ)

 「ウォルフお兄ちゃん?」

 「ヴィルヘルミナを愛しても」

 いいかな?とウォルフが言葉を続けようとしたその時、部屋の扉をノックした母親が、そろそろ精霊祭りが始まるからメインストリートまで向かいなさいと二人に告げる。

 ((・・・・・・・・・・・・))

 「行こうか」

 「うん!」





 身支度を終えメインストリートに向かった二人は精霊祭りを楽しんだ。












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