神々の箱庭

白雪の雫

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②創造神から語られる衝撃の事実-1-

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 辻馬車に乗ってアンダリュサイト王国を出奔した俺は隣国であるホワイトベリル王国で栄えている都市の一つジルコンに到着した。

 王宮に居た頃の俺は騎士団と騎士団長を相手に模擬戦、ゴブリンとオークに限られていたけど魔物討伐をしていたから冒険者になった方が手っ取り早く大金を稼げると思う。

 という訳で俺は冒険者ギルドに行って冒険者登録を済ませた。

 例え実力が【剣聖】とか【大魔導士】と称されるくらいであったとしても冒険者としての心得など何一つ知らない初心者。

 だから登録する時はFランクからになるんだよ。

 Fランクだから町の掃除に屋根の修理、配達に薬草採取といった雑用系クエストしか出来ないけど。

 こういうのって雑用系クエストを地道にクリアしてランクを上げていくのがお約束だからな。

 お約束に従って・・・ではないけど、薬草採取やバルの皿洗いといった雑用系クエストを順調にクリアしていったんだ。

 ある日、俺は食堂の女将が依頼した食器の配達を終えた後、俺は宿屋に行く前に神殿へと向かったんだ。

 前世の俺は仕事を除けば冠婚葬祭以外に神社と寺社に行かなかったけど、アレクサンドライトという異世界はどこか紀元前世界のような雰囲気がある。

 だから神々の息吹を肌で感じると言えばいいのかな?

 或いは子供の頃からの習慣が身に付いているという事もあるのか、七日に一度だけど創造神であるアレクサンドラ女神を祀る神殿に赴いて祈りを捧げているんだ。

(アレクサンドラ様・・・)

 パールティアちゃん?いいえ、潤くんと呼んだ方がいいのかしら?

(あれ?気のせいかな?)

 俺の現世と前世の名前を呼ぶ声が聞こえたような気がしたから思わず顔を上げてしまったのだけど、熱心に祈っている信者達が居るだけ──・・・。

 普通に考えれば、神に祈りを捧げている時に声を出すなんて居るはずがないもんな。

 空耳だと判断した俺は再び祈り始めた・・・のだけど、俺の現世と前世の名前を呼ぶ声が再び聞こえてきたんだ。


 私はアレクサンドライトを創造した女神アレクサンドラ。・・・美奈月 潤にしてパールティア。この世界が荒廃と破壊の道を歩むか、栄えるかは貴女が大いに関わっているのです


(世界の荒廃と崩壊?言っておくけど俺には戦隊ものや特撮に出てくる悪役のような科学力も技術力も持ち合わせてないけど?戦隊ヒーローや特撮ヒーローのように地球を護れるような力もないけど?)

 これってもしかして念話、テレパシー・・・そういう類のものだと思った俺は心の中で中二病を発している誰かに対応したんだ。


 言っておきますけど!?

 私は中二病を発していませんよ!

 それに先ほど名乗りましたが、私はこの世界を創造したアレクサンドラです!

 今から貴女の意識を神界に招いて私の言葉の意味を教えます!


(えっ?)

 気が付けば俺の意識は神界とやらに招かれたのだと思う。

 だって、俺の目の前に広がっている景色が神殿の祭壇ではなく、古代の宮殿を彷彿とさせる部屋だったから。
「パールティアとしての貴女と顔を合わせるのは初めてだから初めましてという挨拶が正しいのかしら?」

 初めまして、パールティア。私はアレクサンドラよ

(凄い美人っていうか佳人・・・)

 愛と美の女神?

 いや、違うかも知れないな。

 これは俺の勝手なイメージなんだけど、愛と美の女神って妖艶という感じで、目の前に居る女性は佳人だけど妖艶というより優しくて穏やかなオーラを纏っている。

 神話に出てくる地母神が人間の形を取るとしたらこんな感じになるのか?と思い描く女性が俺の目の前に現れたんだ。

「挨拶もせず失礼いたしました。私はパールティアと申します」

 相手が創造神であるのだから俺の方から名乗るのが礼儀だと思う。

 己の非礼を詫びてから俺はスカートを軽く摘んで頭を下げたんだ。

「今回は私が一方的に人間である貴女を招いたのだから気にしなくてもいいわ」

 固い挨拶はなしでいいから、私の話を聞いて欲しいの

 アレクサンドラ様は語り始めたんだ。







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