カフェ・ユグドラシル

白雪の雫

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54.聖女との対決-6-

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 「シーラ様、オリビア様。はっきり言って聖女様の魔法は初心者以下です!!」

 茉莉花の治癒魔法は擦り傷ですら完治出来ないレベルなのだ。

 「もしかして・・・邪神・サマエルを倒したのはラルクとカーラ、そしてサユキ様なの?」

 「正確に言えばサユキ様が操るホワイトタイガーの精霊です。あのような高位の精霊を操るのは私では・・・いえ、神に近いと言われているエルフでも不可能です!!」

 ラルクとカーラが、紗雪が精霊使いである事をシーラとオリビアに打ち明ける。

 「精霊使い・・・だからサユキ様は魔法が使えなかったのですね?!」

 異世界は科学が発達しているからなのか、魔法や精霊というのは存在せず迷信でしかないというのが常識だと、過去の迷い人や召喚された者達がそう言っていた。





 魔法が存在しない故に魔法を使う事が出来ない

 精霊使いのように精霊と言葉を交わせず契約が出来ない





 それが迷い人なのだと、ウィスティリア王国ではそのように教わっている。

 その思い込みがあったからこそ、魔法が使えない紗雪をエドワードとギルバードは見下して無下に扱った。そして、紗雪に対してはフリューリングの常識を一切教える事なくウィスティリア王国を追放したのだ。

 当時、エドワードの婚約者だった自分が公爵家の権力と立場を使えばウィスティリア王国に紗雪を留めておく事も、茉莉花よりも淑女らしい淑女である彼女を高位貴族の養女にする事も出来たはずだ。

 「ウィスティリア王国が国王陛下。私が発言する事をお許しいただけるでしょうか?」

 「うむ、許そう」

 「近藤さん。エドワード王太子殿下。ギルバード殿」

 「「「ひっ!」」」

 それまで黙って彼等の遣り取りを眺めていた紗雪が国王から許可を得た事で、伯爵令嬢が持つに相応しい扇子で口元を隠しながら茉莉花達に声を掛ける。

 今の紗雪に邪神・サマエルを倒した時に自分達に向けた目が冷たかった事を思い出したのか、或いは淑女らしい振る舞いに誰よりも貴族の役目を理解している元婚約者達を重ねてしまったのか、茉莉花、エドワード、ギルバードの三人は寄り添いながら身体を震わせていた。

 「実は私、巫女にして退魔師・・・こっち風に言えば精霊使いになるのでしょうか?式神・・・貴方達には使い魔と言えば想像出来るのでしょう。式神を使って除霊したり浄霊したり、後はそうですね。妖怪・・・主にアンデッド系の魔物を倒してきた「そ、そうだったのか!だったらそれを早く言わぬか!邪神・サマエルを倒した貴様であればフェニックスやドラゴンなど赤子の手をひねるようなものであろう?」

 我等の為にエリクサーと万能薬を作ってくれたら貴様を私の側室にしてやる!!

 これはウィスティリア王国の王太子としての命令だ!

 逆らう事は許さぬ!

 紗雪が元の世界で何をしていたのかを知ったエドワードがフェニックスとドラゴン退治を命じる。

 「エドワード!!」

 養女とはいえ、ウィスティリア王国とは関係のない他国の伯爵令嬢に対して命令する権利などエドワードにはない。

 その事に対してもあるが、息子に向けられる幾つもの殺気を肌で感じ取った国王がエドワードを黙らせようと怒鳴りつける。

 「父上、魔法が使えない無能で何の使い道もない異世界人を私の側室にしてやると言うのです!泣いて喜びこそすれ神が作り給うた生ける美神たる私を拒絶する娘が居ない訳ないでしょう!?」

 (この男、馬鹿なの?真性の馬鹿なの?レイモンドと比べたら月とスッポンだという事くらい一目で分かるでしょうが!!それが分からないという事は真性の馬鹿なのね)

 自分の顔を鏡で見てみろや、モブ面王子!と、エドワードに中指を立てながら怒鳴りたい気持ちを紗雪は何とか堪える。

 「巫女にして退魔師の私ですが、不思議な事にこの世界の精霊とは契約が出来ませんし、邪神・サマエルを倒してからというものホワイトタイガーを召喚する事が出来なくなりましたの。そのような私にどうやってドラゴンやフェニックスを倒せと仰るのです?」

 極一部の人間を除いてウィスティリア王国に恨み骨髄な紗雪は貴族達が居並ぶ中、貴族令嬢らしく優雅な気品に溢れていながら、気高く毅然とした態度で事実と偽りを語る。

 「エドワード王太子殿下が仰る通り無能な私ですが、生きている人間には見えない霊や精霊を見えるようにする事は出来ますわ」

 「そ、そうか!ならば、貴様のその力を使って私達を精霊使いにするんだ!」









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