幸福の庭

はつしお衣善

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 私は手紙を読み終えると、丁寧に折りたたんで机の抽斗に入れた。抽斗の中には、たくさんのアイちゃんからの手紙が整然と入っている。私たちふたりだけの思い出の軌跡だ。
 ――そろそろ別のところに保管しなくちゃ、そう思って布団に潜り込み、目蓋を閉じる。まだ眠るわけではない。彼女の言葉を反芻して、余韻に浸るんだ。アイちゃんの手紙は自然と頬を緩ませる。
「返事、何書こうかな」
 ついつい独り言がこぼれてしまった。前回、私が彼女に手紙を出したのは、十日前のことだ。その間に起きた書きたい出来事はたくさんある。私は手紙に書く内容を思い描きながら寝返りを打った。
 時刻は太陽もとっぷり沈んだ深夜だ。今夜は新月。月のない空は、ほかの星の姿もなく一面真っ黒だ。横になって、あれこれと夢想していると、いやでも睡魔は押し寄せてくる。ゆっくりと、体が軽くなっていく。
 ――夢を見ているようだ。いつの間にか、私は眠ってしまったらしい。その夢は、大空にぷかぷか浮かんだクラゲの姿になる、心地のいい夢だった。
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