63 / 70
隻眼の俺と魔女の香り
しおりを挟む
謎の集団——魔術研究組織『メサイヤメシア』——の幹部といわれる男を、黄金甲冑アウルムは連行していった。
いつまでも妹の心配をしていたので部下に促されていたが、シュラクがしっかり守ったということで、何とも複雑な表情で俺たちの元を去った。
ガドウ率いるマギアハウンド部隊は、ガドウが遺跡前を守り、レウィンリィとクロエが遺跡調査を行ってきたらしい。レウィンリィのこれまでの研究成果もあり、あたりを付けて探索を行った結果、収穫といえば当時の石板のみといっていた。
見せてもらうと俺にはどうもフロッピーディスクにしか見えなかった。
遠野の話では記録媒体だし、中身は分からないが再生できるものを開発できないだろうから、魔法には繋がらないと思うと話していた。
「結局何だったのかしら今回の襲撃は」
俺の左わきに抱え込まれながら、遠野は顎に指をあてる。
「首謀者も掴まったし、遺跡も結局は二国共同の研究対象としてまとまった。なんだか狐につままれた気分だわ」
「アウルムたちが奴らがグロウスを使役している理由などを突き止めるだろうが、今後はグロウスを狩るやつらは、より一層増えるのかもしれない」
人はより扱いやすいと思ったものに集まる性質がある。グロウスを使役するのは今は隠れた技術だが、更に民間まで広がれば争いの火種にもなるだろう。
「そうじろう、シエロ気になる事があるの」
俺の右わき腹に抱えられながら、シエロはぼんやりといった。
「人の魂とグロウスを繋げるのは、当たり前だけど出来ないんだよ。もし行うにもそれなりの術式の構築が必要になるの。なんだかこれは——魔女の匂いがするの」
「シエロ以外の極彩色の魔女……?」
「魔女にもいろいろな役割を持った者がいるけど、魔術側に着く魔女も勿論いるの」
「なら早くその情報を手に入れた方が良いな、人にグロウスを憑りつかせまくる技術は危険だ」
俺が身体の中にパルカルを飼っているように、アトラスを着用しなくてもそれなりの火力を発揮する。
「ガドウの話じゃ、ここからずっと先に海沿いの街がある。そこにマギアハウンドの本拠地がある」
アトラスで夜通し走れば休憩を入れても数日で到着するだろう。
だから俺はこうして直線距離で山や谷を、少女を二人担ぎながら疾走している。
マギアハウンド本拠地なら更に魔術に詳しい情報を握っているはずだと、ガドウが言っていたが——。
「総司郎、前見て前!」
「んあ?」
気を抜いたせいか、目の前に突然現れた巨大な幹に頭を打って落下した。
シエロと遠野を緩衝素材で包むように指示したのは覚えているが、受け身を取る事を忘れて俺はそのまま地面にたたきつけられた。
いつまでも妹の心配をしていたので部下に促されていたが、シュラクがしっかり守ったということで、何とも複雑な表情で俺たちの元を去った。
ガドウ率いるマギアハウンド部隊は、ガドウが遺跡前を守り、レウィンリィとクロエが遺跡調査を行ってきたらしい。レウィンリィのこれまでの研究成果もあり、あたりを付けて探索を行った結果、収穫といえば当時の石板のみといっていた。
見せてもらうと俺にはどうもフロッピーディスクにしか見えなかった。
遠野の話では記録媒体だし、中身は分からないが再生できるものを開発できないだろうから、魔法には繋がらないと思うと話していた。
「結局何だったのかしら今回の襲撃は」
俺の左わきに抱え込まれながら、遠野は顎に指をあてる。
「首謀者も掴まったし、遺跡も結局は二国共同の研究対象としてまとまった。なんだか狐につままれた気分だわ」
「アウルムたちが奴らがグロウスを使役している理由などを突き止めるだろうが、今後はグロウスを狩るやつらは、より一層増えるのかもしれない」
人はより扱いやすいと思ったものに集まる性質がある。グロウスを使役するのは今は隠れた技術だが、更に民間まで広がれば争いの火種にもなるだろう。
「そうじろう、シエロ気になる事があるの」
俺の右わき腹に抱えられながら、シエロはぼんやりといった。
「人の魂とグロウスを繋げるのは、当たり前だけど出来ないんだよ。もし行うにもそれなりの術式の構築が必要になるの。なんだかこれは——魔女の匂いがするの」
「シエロ以外の極彩色の魔女……?」
「魔女にもいろいろな役割を持った者がいるけど、魔術側に着く魔女も勿論いるの」
「なら早くその情報を手に入れた方が良いな、人にグロウスを憑りつかせまくる技術は危険だ」
俺が身体の中にパルカルを飼っているように、アトラスを着用しなくてもそれなりの火力を発揮する。
「ガドウの話じゃ、ここからずっと先に海沿いの街がある。そこにマギアハウンドの本拠地がある」
アトラスで夜通し走れば休憩を入れても数日で到着するだろう。
だから俺はこうして直線距離で山や谷を、少女を二人担ぎながら疾走している。
マギアハウンド本拠地なら更に魔術に詳しい情報を握っているはずだと、ガドウが言っていたが——。
「総司郎、前見て前!」
「んあ?」
気を抜いたせいか、目の前に突然現れた巨大な幹に頭を打って落下した。
シエロと遠野を緩衝素材で包むように指示したのは覚えているが、受け身を取る事を忘れて俺はそのまま地面にたたきつけられた。
0
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
底辺から始まった俺の異世界冒険物語!
ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。
しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。
おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。
漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。
この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる