中年おっさんサラリーマン、異世界の魔法には賢者の石搭載万能パワードスーツが最強でした ~清楚幼女や錬金術女子高生と家族生活~

ひなの ねね

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極彩色の灰魔女

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「一年前の魔女夜会以来ね、元気してた?」



 シエロは小さく頷く。



 ハイネと呼ばれた彼女を警戒しているようだった。



「シエロの黒騎士様は、鎧を脱いでいただいても大丈夫です。そちらの古代英雄のお嬢様も身構えずに楽にしてください」



 俺と遠野ははっと息をのむ。それもそうだ素性は一切話していない。



「大丈夫、ハイネは大丈夫だよ、そうじろう」



 そういうシエロの声は堅いが、シエロが言うのならば信じよう。俺はアトラスを解除して、スーツ姿へと戻る。



「申し遅れました、私は極彩色の魔女の一人、灰魔女のハイネと申します」



 ハイネは何処を見ているのか、遠くを見つめている。



「お二人の名は」



「総司郎、義贋総司郎だ」



「遠野真耶佳」



 俺たちを見ずにハイネは頷く。この子もしかして目が見えないのかもしれない。



「総司郎、あなた達がここに来るのは分かっていました。そしてこの先の道も」



 俺が首をかしげると、シエロが補足してくれた。



「シエロが鎮魂を司る白魔女のように、ハイネにも役割があるの。未来を司る灰魔女なの」



「このように視界を奪われてからは。確実に何度も未来を選び、引き寄せることはできなくなりましたが」



「もしかしてある程度の未来を取捨選択できるのか?」



「魔女にとって概念を自由自在に扱うことは造作もございません」



 魔女はそんなこともできるのか。



 魔術や魔法なんかとはやれることの次元が違うような気がした。



「さて本題ですが——義贋総司郎、貴方を引き寄せたのは他でもありません。貴方にお願いがあるのです」



「お願い、だと?」



「ええ、今この世界には二つの黒が存在します。それは黒甲冑という魔術を広める派閥、そして黒騎士という魔術を殲滅する派閥——黒騎士に関しましてはまだ上り詰めるのは先の未来ですが」



 黒騎士というのは俺の事だろう。彼女は一番初めに俺の事を黒騎士と呼んでいたのだから。



「私の願いは、シエロと同じ。魔術を殲滅すること」



「俺は元からそのつもりだ」



 そうですね、と彼女は同意する。



「ですが義贋総司郎。あなたは次の街で死にます」



 ——死?



 突然の事に俺はハイネが何を言ったのか、いまいち理解できなかった。



「それはあなたが回避できたとしても、シエロかそちらの女性が代わりとして死んでしまう」



「それが未来予知なのか」



「ええ、黒甲冑がそこにいますからね」



「黒甲冑——」



 今まで俺は黒甲冑に間違われてきた。



 どんな奴かは知らないが魔術を世界で広げているという話しか知らない。



「ですが、魔術の殲滅には黒騎士である義贋総司郎、鎮魂の魔女であるシエロと、錬金術師である遠野真耶佳さんの力が必要になります」



「誰も死なせやしない、このスーツもあるしな」



 アタッシュケース化したアトラスを見る。動力源が確保された対異世界兵器さえあればこの異世界では問題なく生きていけるだろう。



 しかしハイネは首を左右に振った。



「それでもです。あなた方三人には、これより新たな未来を引き当てて欲しいと考えています」



「どういうこと?」



 遠野が白衣に手を突っ込みながら答える。



「本来時間とは存在しないものであり、人間が人間らしく生きるための定義として存在しているだけです。過去の現在も未来も全ては同一時間軸上に存在しています」



「まさかここでスポットライト理論を聞く事になるとはね」



 やれやれと遠野は溜息を吐く。俺には何のことだかさっぱり分からない。



「私はすべて同一に存在する未来だけに関して、カードを引き当てるように引くことができます。ですが、ないカードは引けません」



「読めたわ。つまり私たちに新たな未来のカードを引けということ。誰も死なないカードを作ればあなたがそれを引き当てる、そうよね」



「仰る通りです」



 目を細めてハイネは頷いた。



「義贋総司郎、遠野真耶佳は流転未来の儀を、そしてシエロは《鎮魂》の鎖を一つ、解き放つように学びましょう」
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