3 / 12
第一章
人間は嘘をつきます。
しおりを挟む「なんとかなったな…」
「君何したの?ココ、さっきの所じゃないけど…」
「あぁ、ただの移動魔法ですよ」
俺と亜美は先程の路地とは違う路地にいた。
(思わず飛んじまったけど、ここどこだよ…とりあえず警察に相談しに行かないといけねぇよな)
「ほんと凄いですね魔法って!」
ほほぉと亜美は口をアングリと開いている。緊張感のかけらもない。
(何だ?今のがこの人の日常とかじゃねぇよな…?)
「あはは、そんな事ないですよ…別にあれは誰でも使えますし」
「そうですか?私あなたが欲しくなっちゃいましたよぉ」
亜美は口に指を当てる。結構あざとい。
「馬鹿なこと言わないで早く警察に行きますよ。というかここがどこか分かりますか?」
「警察…それなら案内しますけど、さっき足挫いちゃったみたいでぇ…」
亜美はケンケンすると足を抑える。
(やべ、さっき引き寄せた時か…?)
いかにあざとかろうが、一般女性。流石に置いて行けない。
「それならおぶります、道案内頼めますか?」
「任せて頂戴!」
俺は背中に亜美を乗せる。
ガチャン。
「へ?」
「…うふふ」
「え?亜美さん、何して…」
「うふふふ、アッハッハマジウケる!」
俺が後ろを向くと、大口を広げ笑う亜美がいた。手には金属の冷たさを感じる。
(手錠…?)
「何がウケるんですか、さっさとコレ外してください。警察に行かないと…」
「え?何言ってんの?折角いい金儲けの道具捕まえたんだから逃すわけないじゃん。警察に行ったりなんてもってのほかよ」
(金儲けの道具?この人何言って…)
「いやぁ、あの時はビビったなぁ…空飛んでるんだもん人間がさぁ」
亜美は嘲笑うかのように俺の背中をポンポンとする。
俺は全てを察した。
「最初のロボットの時から劇だったのか…」
ようするに空を飛んでいた俺を見て、金儲けに使えると思い騙しここまで持ってきたというところだろう。
「そうそう、よく分かったね。結構大変だったんだよ?あざと可愛い振りするのも、場所特定するのも…あ、そうそう命懸けで信用度を確認したのも、ね」
(まじか、あの銃弾撃ってた奴らもグルかよ…)
「で、俺をどうするつもりなんだ?こんな小細工で捕まえられたって言えんのかよ。魔法使いだぞ?」
「なにぃ?もしかしてこの手錠ナメちゃってる?」
小馬鹿にした顔をする亜美。
「あぁ?っていうかよく鉄の輪っかで止められると思ったよな…」
「あ、そういう考えなら安心ね。その手錠、あなたじゃ絶対に外せないわ」
「うるせぇ」
(人を馬鹿にするのも良い加減にしろ!)
「飛び散れ"インパクト"」
俺を中心に衝撃波が広がる。亜美は背中から弾き飛ばされた。ビルのガラスは割れ、破片が飛び散っている。
「ぎゃっ!痛いわね何すんのよっ。外せないって言ってるでしょ!」
手首を見ると、確かに無傷の手錠がハマっていた。
(マジかよ、傷すらついてねぇ…鉄製じゃねぇのか?)
「もう怒った!遊ぼうと思っていたけれどもういいわ…仲間を呼んで連れて行ってもらうわ」
(それはヤバい…何とかして…)
「"テレポート"…は?て、"テレポート"…」
「あはは!まだ諦めてないの?それはエネルギーをほぼ無効化する手錠なのよ?」
(なんだよそれ、ここの科学技術発展しすぎじゃねぇのか!?)
「あーあ黙っちゃってぇ、安心して?私が可愛がった挙句にオークションで売り捌いてあ、げ、る」
彼女はそう言いながら、トランシーバーのようなもので仲間に連絡する。
(ヤバいヤバいヤバい)
「"グランドファイア"」
ドゥン。
爆音と共に路地に爆風が駆け抜ける。
亜美は路地の入り口まで吹っ飛ばされていた。服は焦げ髪は少し焦げている。
グランドファイア、炎の大魔法だ。大地を焼き尽くし、湖を干上がらせる、炎系の魔法ではトップクラスだ。
(くそっ、ちょっとは焦げたけど、まだ壊せてない…)
手錠をかちゃかちゃと鳴らしながら舌打ちをする。
「ていうか結構頑丈だなこのアスファルト…」
煙が晴れると、そこには基点に半径5メートルに渡るクレーターが出来ていた。ビルは今にも崩れそうな勢いで、破片がボロボロとこぼれ落ちている。
「な、何よ…それ…」
「何って、炎の魔法だよ。魔法使いだからな。魔法で壊そうとしてんだよ。"アイシクルスクエア"」
俺が唱えると、瞬時に道から壁、雑草に至るまでが氷と化し路地全体が氷で覆われる。
これは冬を再現するため、無理矢理一部の季節を変える氷の大魔法だ。
(これならどうだ…!)
パキィン。
手錠が弾ける。
「ふぅ、流石にやりすぎたか?なぁ亜美さん…?」
俺は内心の動揺を飲み込むと氷漬けの路地入り口へ行く。
「…ひぃっ!?」
亜美はというと、路地の入り口で手をバタバタと動かしていた。凍らされた足を必死に動かそうとしているが、願い叶わず完全に凍りついている。
(これは完全に追い詰めたしもう関わってこなさそうだな…とりあえず俺は警察系の人に…)
「そこまでよ!!」
いきなり元気な声が路地に響くと何かが膝をえぐる。
(痛ってぇぇぇ!)
「痛っ!?ひ、"ヒール"。…な、何すんだよ!」
血が垂れる膝に手を当て修復しながら路地の入り口を振り向く。
「アンタ女をいじめて何が楽しいの!?」
「はぁ!?」
路地の入り口、そこには亜美を庇う形で銃をこっちに構えた銀髪の少女が立っていた。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
魅了の対価
しがついつか
ファンタジー
家庭事情により給金の高い職場を求めて転職したリンリーは、縁あってブラウンロード伯爵家の使用人になった。
彼女は伯爵家の第二子アッシュ・ブラウンロードの侍女を任された。
ブラウンロード伯爵家では、なぜか一家のみならず屋敷で働く使用人達のすべてがアッシュのことを嫌悪していた。
アッシュと顔を合わせてすぐにリンリーも「あ、私コイツ嫌いだわ」と感じたのだが、上級使用人を目指す彼女は私情を挟まずに職務に専念することにした。
淡々と世話をしてくれるリンリーに、アッシュは次第に心を開いていった。
備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ
ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。
見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は?
異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。
鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる