亡き侯爵令嬢と自動人形ためのゾートロープ

桃千あかり

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王子様と美しい花売り娘

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 むかしむかしあるところに、一人の王子様がおりました。眉目秀麗で社交的な彼は、堂々と自信に満ちており、とても人気がありました。

 ある晴れた日、王子様は平民の変装をすると、お忍びで城の外へ出かけました。高貴な身分を隠して、楽しく町をそぞろ歩いておりますと、若く美しい花売りの娘と出会ったのです。

 彼女は貧しく、オダマキの花を摘んでは町に出て、親切な人たちへ売り歩く仕事をしておりました。王子様と美しい花売り娘は、一目で恋に落ち、将来を誓いあったのでございます。

 けれど、この運命の恋に抗議した不届き者がおりました。彼女は侯爵令嬢で、名前をシスルと申します。

 シスルは父親の身分をふりかざし、訳知り顔で小言ばかり口にする、棘花のように意地悪な令嬢でした。表向きは従順なふりをして、人目が無くなると楯突いてくる、鼻持ちならない振る舞いばかりしていたのです。

 口喧しく底意地の悪い彼女は、王子様とご友人たちから嫌われておりました。穏便に遠ざけようとした王子様たちのお心遣いを、感謝する素振りはありません。
 強欲なシスルは見目麗しい王子様へ、烏滸がましくも恋情をいだいておりました。また、その強欲さから未来の王妃の座を狙っていたのです。

 醜い嫉妬と権力への執着から、シスルは王子様と花売り娘の尊い愛を非難し、邪魔ばかりしてきます。心清らかな花売り娘は理不尽にいじめられ、悲嘆に暮れておりました。


 あるパーティーの夜です。

 勇気ある王子様が悪党シスルへ、正義の鉄槌をくだしました。ご友人たちと花売り娘を引き連れて、彼女を糾弾したのです。花売り娘へ行ってきた過酷な嫌がらせの数々は、すべて公表されました。

 愚かなシスルは泣きだして、そのまま逃げていきました。パーティーのお客様は拍手喝采。みんなで負け犬を大笑いし、王子様と花売り娘を褒め称えます。

 その日以来、シスルは人前から姿を消しました。大恥をかかされて、ようやく反省したのでしょう。王子様とご友人たち、そして花売り娘へ二度と嫌がらせをしませんでした。

 こうして、邪魔者を退けた王子様と美しい花売り娘は、素晴らしい結婚式をあげました。真実の愛が、ここに成就されたのです。二人の結婚は、大勢のご友人たちや国中の庶民たちから祝福されました。

 後に人々は両陛下を『純愛王』と『花売り王妃』とお呼びして、大変尊敬したそうです。お二人は睦まじく寄り添って、生涯離れることはなかったと言われています。
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