【BＬ】小さな恋の唄…盲目の私が恋をしたのは…

２章

17話

「ティア様、お顔の色が優れませんね、温かいお茶ですのでどうぞ」

キラがそっと机に陶器を置いてくれた。
ふわりと香る花茶は、心を落ち着かせてくれた。

「キラ、ありがとうございます」

キラに笑みを向けるけれど、レイジュの方は見ることが出来ない。

「ティア、怒っているのか？」

恐る恐る顔を覗き込んでくるレイジュ。

「怒っているわけではありませんが、どうしていいかわからなくて」

目まぐるしく変わっていく周囲。
自分の思いが追いついて行かなくて、何だかもどかしいがどうしていいかわからない。
レイジュを愛している。
それは間違いないけれど。

「怖いのです。何がと問われるとわからないのですが、目が見えるようになって世界が広がってから……周囲の視線が。
レイジュの伴侶になる覚悟ができていないのです」

レイジュの身分や取り巻く環境はわかっているのだ。
一日も早く伴侶をと望まれていることも。
ただ、望まれているのは自分でないこともわかっている。

「ティア、ゆっくり深呼吸してからお茶を飲め......それからゆっくり話をしよう」

レイジュも自分の陶器を手にして中のお茶を口にする。

「悪かった……俺が先走り過ぎたんだな。ティアに伴侶になって貰えると思って」

頭を下げたレイジュに驚いてその腕に触れる。
レイジュが謝る必要は無いのだ。

「レイジュが悪いわけじゃないんだ。私はレイジュを好きだし伴侶になるのも嬉しいけれど、王妃になるのは無理だと思う。それなりの知識が必要なのも……でも、レイジュに他に伴侶を娶って欲しくもない……私はわがままなんだ。
レイジュの後を継ぐ子供を設けなければならないけれど、私にはできないから……だから、あの場所で皆に紹介してもらう資格なんてなかったんだ」
「ティア、俺にはティアしかいないんだ。幼い頃にティアの両親に助けられていなかったら、今の俺はもう居なかった。色々あってこうしていられるけれどティアが王妃になりたくないなら、俺が退けばいいし……俺が居なくなってもキラがいるだろ？だから王家の血筋は耐えないから大丈夫だ」

私の手をそっと包み、レイジュはさらりと凄いことを言い放つ。
レイジュの言葉を反芻してから私は動きを止めた。

「待って、レイジュ……」

何をどう伝えればいい？
上手く言葉にならなくて、私はギュッとレイジュを抱き締めた。