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2章 幼竜との出逢い

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「はぁ…」


セラフィリーアは何度目かの溜め息を吐く。
アイヴィスから漸く騎士団入団の許可がおりたのだ。
と言っても白い騎士団服を着るのは自分だけだし、契約をした飛竜はまだ幼竜で飛ぶこともままならない。
だからといって自分だけが特別扱いをされたくはないのだ。
自分だって男だし?
確かにスポーツは得意じゃなかったけど…
影であんなことを言われてしまっていたのを聞いたら…さ。


「いいよな、他国とは言え王子だもんな?厳しい訓練も夜の勤務だって無いんだろ?見た目だってなよっちいし、飛竜が宝の持ち腐れだよなぁ…」
「だよなぁ、何で他に飛竜騎士になりたいやつはいくらでもいるのに、アルトリアの国民であるそいつらじゃないんだよな」


ふと、耳に入ってしまった言葉。
それを聞いて、シュクラの身体が怒りに震えているのにセラフィリーアは気づかなかった。
自分の方が震えてしまっていたからだ。
たぶん、飛竜騎士とは着ている服が違うため、彼らは騎士なのだろう。
それに気付いた付き添いの飛竜騎士が腰の剣に手を掛けたのに気づいて、そっと止めると頭を振った。
確かに自分でもわかっていた。
まだシュクラが子供だから問題ないが、成竜になったときにシュクラに跨がり空を駆けることができるか。
シュクラが自分を振り落とすことはないと思いたいが、戦いに参戦できるかと言われれば…否。
大変な思いをして騎士になり、飛竜に選ばれて飛竜騎士になるのだ、それを確かに訓練もしないで飛竜騎士の称号だけ貰ったのならば良く思わないものもいるだろう。
また、アイヴィス陛下もまだ若かった頃は騎士団に入り、飛竜騎士となったと聞いている。
だから本当は騎士団に入るために筆記や実技の試験を受けて騎士団から始めたかったがそれは許されず。
飛竜騎士の訓練に混ざる事と、訓練が終わったら必ず王宮に帰ってくること、シュクラを一番に気にすること、夜の勤務は行わないことなどを絶対条件に何とか入れて貰ったのだ。
たぶん、アイヴィスには報告が行っている。
それでも何も言わずに条件付きながら許可をしてくれた。


「アスラン、何度も言うけど…騎士団員が従者を連れてくるなんて無いんだし…最初から無茶はされないと思うから大丈夫だって」


朝食後から、自分でなければわからないくらいそわそわしだしたアスランに苦笑しながらお茶を淹れて貰う。
先ずは任命式。
飛竜のお披露目式でもあり、飛竜騎士の入隊式でもある。
最初の頃はシュクラの誕生祝いのお披露目式だけにするつもりが、先日の一件とルディアス達飛竜から一斉にダメ出しがされたからで。
『シュクラが契約者がいることを知らしめたいと言っている』
そうで、急遽慌ただしくこちら側が予定を変更をした。
確かにあんな陰口を言われたら、騎士団に入って認められたい。
ただ、困ったことにセラフィリーアはファレナスの王族だ、アルトリアには戸籍がない。
苦肉の策として使われたのが2重国籍。
ファレナスに許可を貰い、アルトリアでの称号も付与する。
そして授かるのは侯爵の称号。
男爵くらいでいいと言ったのに…
隣国の王子に侯爵ですら申し訳ないとアイヴィスが謝ったのを見て、侯爵で妥協した。
大公あたりを持ってこられたら目も当てられない。


「とりあえず…時間に合わせて正装だよね…」


キラキラしている服は嫌いじゃないけれど、仕方ない。
アスランのお茶を飲み干してからちらりと水時計を見やり椅子から立ち上がった。

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