【BL】空と水の交わる場所~ゲーム世界で竜騎士になりました。

梅花

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4章 想い

4-9

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「カイル…兄様」

セラフィリーアの動きが止まる。
何故、どうして。

「セラ…」

カイルに名前を呼ばれてから漸く動き出したセラフィリーア。
カチンと音がしてカトラリーがテーブルから落ちるのをそのままにセラフィリーアは立ち上がり頭を下げる。

「おはようございます…何か御用でしょうか?」

セラフィリーアの硬い声。
セラフィリーアの事だから、一緒に朝食でもいかがでしょうかと切り出すかとアイヴィスは思ったが、それは言わないため、アイヴィスは不思議そうに見上げつつ、自分を紹介するつもりもないようなため、あえて何もこちらから言わずに座ったままでいた。

「セラ…昨日は…」

「本日、お父様とお母様にご挨拶をさせていただいたら、アルトリアへ帰るつもりです。
カイル兄様とお会いするのもまた今度…でしょうか。
アルトリアへ発つ前にお逢いできて良かったです、あ、シュクラが参りますのでお兄様はお戻りになってくださいませ?あの子達はヒトの機微には敏いですから」

だから、帰ってくれとは直接言わない。
その辺りが皇族や貴族の言い回しだ。
だが、相手も兄様と呼ばれているくらいだから、親族だろう。
こう言われても、カイルと呼ばれた男は視線を彷徨わせてから言葉を紡ごうとする。
近寄って来るのであればと、アイヴィスは直ぐに動けるように体勢を整える。

「だが、セラ…」

「私の大切な子ですが、飛竜です。
お兄様に何かあったらファレナスは困ってしまいますから」

その次の瞬間、頭上に影を見る。
ゆっくりと滑空しながら降りてくるのは白飛竜、シュクラだ。
そして、草木を避けて中庭へと降り立つと、珍しく唸り声を上げた。

『嫌い、こいつ嫌い!』

「シュクラ…駄目」

『凄く嫌…』

セラフィリーアが踵を返し慌ててシュクラを撫でるも、その唸り声が消えることはなく、そして直ぐに城の上や城外で飛竜の唸り声がしはじめる。

「セラ、ルディアスが怒っている。シュクラの叫びに呼応して。外の飛竜も臨戦態勢になる…このままだと、アルトリアからも飛竜が飛んで来そうだ」

アイヴィスが立ち上がると、セラフィリーアは城の屋上を見上げる。
ルディアスの翼が動いた次の瞬間。

「カイルを連れていけ」

鋭い声が放たれる。
それはセラフィリーアが初めて聞くような父親の冷たい声だった。

「待って…待ってくれ!陛下っ…」

テーブルの向こうにいたカイルが、父と一緒に来た騎士達に抱えられながら建物へ連れていかれる。
あっという間の出来事だった。

「お父様…」

「セラ、食事時にすまなかったな。アルトリア王にもお詫び申し上げる…」

「いえ、少しお待ちください」

アイヴィスは、大丈夫と頷くとルディアスと会話をするのか、上空を見上げて何かを呟いていた。
シュクラの唸り声もいつの間にか収まっている。

『キュッ』

「シュクラ、もう大丈夫ですからね?」

いつもの優しさを取り戻したシュクラを抱き締めてから、父を見上げる。その数歩後ろに母と兄もいた。
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