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本編
89話
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え。
ミト…さん。
俺が絶句したのを察したのだろう。ミトさんは優しげな笑みを浮かべた。
「やっぱりね…アタシ達も理由はわからないわ、でもそうなのよ」
「そうだな…理由はわからない…」
ルーファスさんも頷いた。
「リボン…ですか?」
「えぇ、リボンに夫婦の名前を刺繍するの。リボンの色を決めて、刺繍糸の色を決めて…そして聖樹の木の枝を選んで結べば実ができるけれど、何故か実ができない夫婦もいるわ…その理由はわからないの…私達も何度か試して漸く授かったのがリルなのよ」
嬉しそうなミトさんに、ほっこりとしてしまう。
「そうなのですね…でも俺…」
「大丈夫よ、何度も試せばいいの…それに、もし子供ができなかったらね、きっと夫婦仲良く添い遂げろと言う事なのよ…ね?」
その辺りは、リルともレヴィとも話し合わなくちゃ…子供が欲しいなら他の人と番になってもらわなきゃ。
俺、この世界の人間じゃないから…たぶん子供ができないよね。
「そうなんですね、ありがとうございます」
何となく複雑なような、ホッとしたような感覚に息を吐くと、冷めてしまった食事に気付いて慌てる。
「ごめんなさい、冷めちゃった…新しいの焼きますから…」
立ち上がろうとした俺を大丈夫よ、私がやるわとミトさんが制す。
ルーファスさんは冷たくなった料理をゆっくりと食べ始めた。
「でも、リクトちゃんは手伝って頂戴?」
おいでおいでとキッチンから手招きしているミトさんに、俺もそちらに向かう。
「リクトちゃんはリルたちとまだしてないわよねぇ、番の匂いはするけど…まだ薄いもの…」
耳元で囁かれた言葉にミトさんを仰ぎ見る。
一気に顔が赤くなるのがわかった。
「えっ…あ…」
その通りだと俺の反応を見たミトさんは、可愛いわねと笑う。
何だかんだであのあとそれっぽい行為はしていないのだ。
ふたりには申し訳ないのはわかっているけれど、勇気が出ない。
「照れなくてもいいのに…誰しもする事なのよ?」
フライパンに油をひいてハンバーグを焼くミトさん。
火加減とか、凄く上手く焼いていく。
「でも、ちょっとダーリンの前じゃ話しづらいものね…アタシで相談にのれればいいんだけど…」
「あ、ありがとうございます…」
そうか、俺、誰にも相談できなかったんだ…そう思うとミトさんが救世主のように感じる。
「あの子たち、肉食獣だからたぶんリクトちゃんを可愛がりたがる方よね…だから、リクトちゃんはちょっと怖いのよ…ガツガツするのね、誰に似たんだか…」
ミトさんの呟きに、ダイニングから咳払いが聞こえた。
「ふふ。うちもね、どっちも肉食獣じゃない?最初はどうするか食い合いになったんだけどね、アタシの方がダーリンを愛してるから受け入れたの。
そんな事で別れる選択は無かったもの…でも、最初はやっぱり大変だったわよ?
でもね、触れあっているだけで気持ちいいのよ…物理的にじゃなくて…ね
だからゆっくり3人のタイミングでするといいわ…同時にじゃなくてもいいのよ…片方としたら、もう片方と…ただ、あまり差を付けたら可哀想よ?」
「あ、はい…っと、ミトさん焦げます!」
「あらやだ!ダーリンお皿!」
慌てたミトさんが焼けたハンバーグをルーファスさんのお皿にのせて、ソースをかける。
「リクトちゃん、次はリルが虎族になった理由ね?座って、話してあげるわ」
ミトさんは、ちゃっかり自分の分のハンバーグも焼いていたが、その半分を俺の皿に乗せてくれる。
いや、もうお腹いっぱいなんだけど。
とりあえず俺は座ってミトさんの話を聞こうと思った。
ミト…さん。
俺が絶句したのを察したのだろう。ミトさんは優しげな笑みを浮かべた。
「やっぱりね…アタシ達も理由はわからないわ、でもそうなのよ」
「そうだな…理由はわからない…」
ルーファスさんも頷いた。
「リボン…ですか?」
「えぇ、リボンに夫婦の名前を刺繍するの。リボンの色を決めて、刺繍糸の色を決めて…そして聖樹の木の枝を選んで結べば実ができるけれど、何故か実ができない夫婦もいるわ…その理由はわからないの…私達も何度か試して漸く授かったのがリルなのよ」
嬉しそうなミトさんに、ほっこりとしてしまう。
「そうなのですね…でも俺…」
「大丈夫よ、何度も試せばいいの…それに、もし子供ができなかったらね、きっと夫婦仲良く添い遂げろと言う事なのよ…ね?」
その辺りは、リルともレヴィとも話し合わなくちゃ…子供が欲しいなら他の人と番になってもらわなきゃ。
俺、この世界の人間じゃないから…たぶん子供ができないよね。
「そうなんですね、ありがとうございます」
何となく複雑なような、ホッとしたような感覚に息を吐くと、冷めてしまった食事に気付いて慌てる。
「ごめんなさい、冷めちゃった…新しいの焼きますから…」
立ち上がろうとした俺を大丈夫よ、私がやるわとミトさんが制す。
ルーファスさんは冷たくなった料理をゆっくりと食べ始めた。
「でも、リクトちゃんは手伝って頂戴?」
おいでおいでとキッチンから手招きしているミトさんに、俺もそちらに向かう。
「リクトちゃんはリルたちとまだしてないわよねぇ、番の匂いはするけど…まだ薄いもの…」
耳元で囁かれた言葉にミトさんを仰ぎ見る。
一気に顔が赤くなるのがわかった。
「えっ…あ…」
その通りだと俺の反応を見たミトさんは、可愛いわねと笑う。
何だかんだであのあとそれっぽい行為はしていないのだ。
ふたりには申し訳ないのはわかっているけれど、勇気が出ない。
「照れなくてもいいのに…誰しもする事なのよ?」
フライパンに油をひいてハンバーグを焼くミトさん。
火加減とか、凄く上手く焼いていく。
「でも、ちょっとダーリンの前じゃ話しづらいものね…アタシで相談にのれればいいんだけど…」
「あ、ありがとうございます…」
そうか、俺、誰にも相談できなかったんだ…そう思うとミトさんが救世主のように感じる。
「あの子たち、肉食獣だからたぶんリクトちゃんを可愛がりたがる方よね…だから、リクトちゃんはちょっと怖いのよ…ガツガツするのね、誰に似たんだか…」
ミトさんの呟きに、ダイニングから咳払いが聞こえた。
「ふふ。うちもね、どっちも肉食獣じゃない?最初はどうするか食い合いになったんだけどね、アタシの方がダーリンを愛してるから受け入れたの。
そんな事で別れる選択は無かったもの…でも、最初はやっぱり大変だったわよ?
でもね、触れあっているだけで気持ちいいのよ…物理的にじゃなくて…ね
だからゆっくり3人のタイミングでするといいわ…同時にじゃなくてもいいのよ…片方としたら、もう片方と…ただ、あまり差を付けたら可哀想よ?」
「あ、はい…っと、ミトさん焦げます!」
「あらやだ!ダーリンお皿!」
慌てたミトさんが焼けたハンバーグをルーファスさんのお皿にのせて、ソースをかける。
「リクトちゃん、次はリルが虎族になった理由ね?座って、話してあげるわ」
ミトさんは、ちゃっかり自分の分のハンバーグも焼いていたが、その半分を俺の皿に乗せてくれる。
いや、もうお腹いっぱいなんだけど。
とりあえず俺は座ってミトさんの話を聞こうと思った。
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