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2話
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王はそう言い放つと、騎士をそのままに王座を辞した。
その瞳には悲しみの色は無い。
むしろ、ギリギリっと奥歯を噛み締め苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべていたのだった。
あのあと、王は秘密裏に家族会議を召集した。
他者に聞かれると困るからだ。
「テトが、消息を断った」
円卓についた6人。
円卓の上には地図が乗っていた
「…本当ですか?父上」
確認をしたのは皇太子である長兄。
「そうらしい。困ったことになった」
「そうらしいというのは、違うこともあるのでしょうか」
次に問い掛けるのは次兄。
「遺体が上がっていない」
「なら、兄様は生きている可能性も?」
末弟が身を乗り出す。
「生きているならば、何処に行ったというのだ」
三兄が口を開く。
王妃は口を開くこともしない。
「テトの心配もあるが、テトが向かった神殿の水が枯渇した。それを何とかできる人間が私たちの中にはいないのだ…」
王は盛大に溜め息を吐いた。
テトは、国民に絶大な人気がある。
平凡な能力と容姿だが、困り事があると真っ先に飛び出して行く。
実際に自分の目で見ないと。そう言って。
水属性しか持たない王子だが、この魔力量は王をも凌ぐ。
「テト兄様、国内にはいないみたい…気配がないよ」
闇の属性をつ末弟が、魔力探知を使ってテトの存在を探す。
円卓の地図に掌を翳していたがやがて駄目だと肩を竦めた。
「困った…」
他国にまで探査の手をのばすにも、負担がかかる。
また、枯渇した泉を早急に何とかしなければならないのも頭痛の種だ。
水の都であるはずのこの国で水が枯渇したなどと、他国に知られたら酷いことになる。
「誰か強い水属性の貴族はいないのてしょうか…」
三兄が問う。
「いるわけが…1人心当たりはあるが、あれは神殿にいる」
「どなたの事ですか」
長兄には心当たりか無いようで、その他の子供達も首を傾げているが、さもありなん。
生まれつき直ぐに属性が開眼して水属性を持つとわかったあと隠されるように育てられてそのあと神殿に預けられた。
「公爵家のルトヴィア」
「ならば、その者に…」
「無理だ。神殿が許可しないし、彼の者の属性は水でもテトとは方向性が違うのだ」
「ならば貴族でなくても…」
「王子が失踪したと触れ回ることになるだろう?」
そうなってしまうと、全員が黙り込む。
いい案がない。
自分達の中に一人でも水属性がいれば、こうもならなかっただろう。
決してテトを蔑ろにしていた訳ではないし、存在に扱っていた訳でもない。
ただ、やはり心の奥底では水属性しか持たない第4王子としかみていなかった。
「父様、まずはテト兄様の捜索。極秘裏にならそうして。それと、早急に神殿と連絡を取って水属性の人を派遣しなきゃでしょ?考えていたって始まらないんだから。そもそもテト兄様は簡単に仕事を投げ出す人じゃないんだから、神殿に何らかの落ち度があるんじゃないの?」
いい放った末弟に王が動き始める。
「そうだな…先ずは神殿に派遣する人間…を」
「父様、それは僕たちの誰かが行かないと駄目でしょう。後は誰が行くか…」
「ならば、私が行きますわ」
今まで一言も話さなかった王妃が口を開いた。
「おい!本気か?」
「えぇ、私が参ります」
普段は王の後ろを歩く淑女の鏡のような王妃が、こんなにも自我を出すのは王としても初めてかもしれない。
「明日には此処を発ちます。馬車をお借りいたしますわ。
私は支度がありますので失礼いたします」
立ち上がった王妃は王に頭を下げるとその場から辞した。
その瞳には悲しみの色は無い。
むしろ、ギリギリっと奥歯を噛み締め苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべていたのだった。
あのあと、王は秘密裏に家族会議を召集した。
他者に聞かれると困るからだ。
「テトが、消息を断った」
円卓についた6人。
円卓の上には地図が乗っていた
「…本当ですか?父上」
確認をしたのは皇太子である長兄。
「そうらしい。困ったことになった」
「そうらしいというのは、違うこともあるのでしょうか」
次に問い掛けるのは次兄。
「遺体が上がっていない」
「なら、兄様は生きている可能性も?」
末弟が身を乗り出す。
「生きているならば、何処に行ったというのだ」
三兄が口を開く。
王妃は口を開くこともしない。
「テトの心配もあるが、テトが向かった神殿の水が枯渇した。それを何とかできる人間が私たちの中にはいないのだ…」
王は盛大に溜め息を吐いた。
テトは、国民に絶大な人気がある。
平凡な能力と容姿だが、困り事があると真っ先に飛び出して行く。
実際に自分の目で見ないと。そう言って。
水属性しか持たない王子だが、この魔力量は王をも凌ぐ。
「テト兄様、国内にはいないみたい…気配がないよ」
闇の属性をつ末弟が、魔力探知を使ってテトの存在を探す。
円卓の地図に掌を翳していたがやがて駄目だと肩を竦めた。
「困った…」
他国にまで探査の手をのばすにも、負担がかかる。
また、枯渇した泉を早急に何とかしなければならないのも頭痛の種だ。
水の都であるはずのこの国で水が枯渇したなどと、他国に知られたら酷いことになる。
「誰か強い水属性の貴族はいないのてしょうか…」
三兄が問う。
「いるわけが…1人心当たりはあるが、あれは神殿にいる」
「どなたの事ですか」
長兄には心当たりか無いようで、その他の子供達も首を傾げているが、さもありなん。
生まれつき直ぐに属性が開眼して水属性を持つとわかったあと隠されるように育てられてそのあと神殿に預けられた。
「公爵家のルトヴィア」
「ならば、その者に…」
「無理だ。神殿が許可しないし、彼の者の属性は水でもテトとは方向性が違うのだ」
「ならば貴族でなくても…」
「王子が失踪したと触れ回ることになるだろう?」
そうなってしまうと、全員が黙り込む。
いい案がない。
自分達の中に一人でも水属性がいれば、こうもならなかっただろう。
決してテトを蔑ろにしていた訳ではないし、存在に扱っていた訳でもない。
ただ、やはり心の奥底では水属性しか持たない第4王子としかみていなかった。
「父様、まずはテト兄様の捜索。極秘裏にならそうして。それと、早急に神殿と連絡を取って水属性の人を派遣しなきゃでしょ?考えていたって始まらないんだから。そもそもテト兄様は簡単に仕事を投げ出す人じゃないんだから、神殿に何らかの落ち度があるんじゃないの?」
いい放った末弟に王が動き始める。
「そうだな…先ずは神殿に派遣する人間…を」
「父様、それは僕たちの誰かが行かないと駄目でしょう。後は誰が行くか…」
「ならば、私が行きますわ」
今まで一言も話さなかった王妃が口を開いた。
「おい!本気か?」
「えぇ、私が参ります」
普段は王の後ろを歩く淑女の鏡のような王妃が、こんなにも自我を出すのは王としても初めてかもしれない。
「明日には此処を発ちます。馬車をお借りいたしますわ。
私は支度がありますので失礼いたします」
立ち上がった王妃は王に頭を下げるとその場から辞した。
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