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テトが歩いたであろう螺旋階段を下へとくだる。
歩きづらさと淀んだ空気に王妃は顔をしかめた。
何でこの男は何事もなく歩いて行けるのだろうか。
前をしっかりした足取りで歩くその背中を睨み付けながら重くなる足を動かした。
最下層には淀んだ空気と涸れかけた水源。
王妃はそっと風魔法で自分の周囲だけ空気を変える。
男の…神殿長の周りの空気を変えてやる義理はないのだから。
漸くまともに息ができるようになった気がして、王妃は深く息を吸い込む。
「それで、ここ…なの?王子が居なくなったという泉は」
あまり大きい訳ではなく、こんな泉に落ちても姿が見えなくなるような場所ではない。
「人が居なくなるような場所ではないでしょう」
「いやいや王妃様、実際に居なくなったのですよ。私だけでなく、そちらが一緒に連れてきた騎士二人もそう言っています。
おかしいと言われても、それが事実なのですよ?」
「そう、ですか?」
「はい、ですのでそう報告を致しました。それよりも民の命が掛かっていますので、早く泉が枯渇しないように…」
「黙りなさい!それよりもとは何ですか!決して民の命を軽んじる訳ではありませんが、こちらも人の命が掛かっているんですよ!!」
さらりと流そうとした神殿長に王妃は声を荒げる。
掌に爪が食い込むほど力を入れた王妃は叫び声にも似た声で吠えた。
王や王子達がいれば驚いただろう。
恐らく一度も王宮で声を荒げたことがないだろう王妃だ。
「ですが王妃様、4番目の王子は貴女様のお子では無いじゃないですか」
いきなりの検討違いな事を言い始めた神殿長を愕然と見る。
「何を…言っているの?」
「そうでしょう?あの王子だけが役に立たない水属性しか持っていない王子だ。
居ても居なくてもいい、そうだろう?王家の面汚しが!」
「何を…何を言っているの…お兄様!!」
石造りの壁に王妃の叫びは消えていった。
歩きづらさと淀んだ空気に王妃は顔をしかめた。
何でこの男は何事もなく歩いて行けるのだろうか。
前をしっかりした足取りで歩くその背中を睨み付けながら重くなる足を動かした。
最下層には淀んだ空気と涸れかけた水源。
王妃はそっと風魔法で自分の周囲だけ空気を変える。
男の…神殿長の周りの空気を変えてやる義理はないのだから。
漸くまともに息ができるようになった気がして、王妃は深く息を吸い込む。
「それで、ここ…なの?王子が居なくなったという泉は」
あまり大きい訳ではなく、こんな泉に落ちても姿が見えなくなるような場所ではない。
「人が居なくなるような場所ではないでしょう」
「いやいや王妃様、実際に居なくなったのですよ。私だけでなく、そちらが一緒に連れてきた騎士二人もそう言っています。
おかしいと言われても、それが事実なのですよ?」
「そう、ですか?」
「はい、ですのでそう報告を致しました。それよりも民の命が掛かっていますので、早く泉が枯渇しないように…」
「黙りなさい!それよりもとは何ですか!決して民の命を軽んじる訳ではありませんが、こちらも人の命が掛かっているんですよ!!」
さらりと流そうとした神殿長に王妃は声を荒げる。
掌に爪が食い込むほど力を入れた王妃は叫び声にも似た声で吠えた。
王や王子達がいれば驚いただろう。
恐らく一度も王宮で声を荒げたことがないだろう王妃だ。
「ですが王妃様、4番目の王子は貴女様のお子では無いじゃないですか」
いきなりの検討違いな事を言い始めた神殿長を愕然と見る。
「何を…言っているの?」
「そうでしょう?あの王子だけが役に立たない水属性しか持っていない王子だ。
居ても居なくてもいい、そうだろう?王家の面汚しが!」
「何を…何を言っているの…お兄様!!」
石造りの壁に王妃の叫びは消えていった。
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