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2話
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馬車が止まり、外から扉が開く。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
侍従が迎えてくれた。
「お父様はまだ起きていらっしゃるかしら……お会いしたいの」
「伺って参りますのでどうぞお部屋でお待ちください」
「悪いわね」
ライラックは無意識に溜息をつきながらロビーから自室へ向かう。
早くこの重いドレスを脱ぎたかった。
エリックが望むからと、できるだけ彼が好むようなドレスを選んでいた。
だが、エリックからドレスを贈られることはそう言えば無かったなと思い出した。
「誰か手伝って頂戴?」
少しでも細くとコルセットで腰を締め付けるスタイルは、ひとりでその紐を解くことは出来ないのだ。
部屋に入る直前に二人のメイドが来てくれ、着替えを手伝ってくれた。
コルセットが外れると安堵の吐息が漏れた。
「お嬢様、果実水です」
「ありがとう、後は大丈夫よ。遅い時間までごめんなさいね、下がっていいわ」
「では失礼いたします」
二人が部屋を出るのを確認してから髪留めや宝飾品を外しテーブルに並べる。
これは明日片付けてもらわないといけないと思いながら結い上げていた髪を解いて櫛を入れていると扉にノックがあり、父が呼んでいるとの事であったためそのまま父の書斎へと向かった。
「ライラックです」
「入りなさい」
父の声にホッとしながら、扉を開けて中に入る。
髪を下ろし眠る直前だったのだろういつもより若く見える父がソファーに座っていた。
「どうした、帰宅も早かったようだが?まずは座りなさい」
父に促され、向かい合うように座るとライラックは目を伏せた。
「お父様、本日エリック様より婚約破棄の話がございました……わたくしの見目が良くない事が原因との事でしたので、お父様に相談をすると持ち帰りました」
そう告げると、一瞬父はきょとんとしてからわなわなと拳を震わせた。
「本当にそう言われたのか?」
「はい。性格の不一致であれば何とかできたかもしれませんが、見た目の事であればわたくしにはどうする事もできませんので……」
悲しいが、仕方がない。
「ライラの何処が悪いと言うのだ!」
「……わかりませんわ、ただ、エリック様の好みではなくなってしまったのかと」
本当の事を言えば、お父様もお母様も悲しむのはわかっている。
だからライラックはその事を隠した。
「おそらく近日中にはクレマチス伯爵家より婚約解消の書類がお父様あてに届くと思いますので……まずは一報をと思いましたの、申し訳ございません」
ライラックは深く頭を下げた。
カタンと椅子の音がして、顔を上げると父が目の前にいた。
「謝る必要はない。明日、こちらから正式に抗議をする。心配するな」
「いえ、お父様……エリック様には他に好いた方がいらっしゃると聞きましたし、それならば解消も仕方ないかと」
貴族たるもの政略結婚も一般的であるためライラックもその心積りはあったのだ。
エリック様が後から側室を娶る事もあるだろうと。
「わかった、ならばもっと良い縁談を見つけてきてやろう」
「えぇ、お父様……無理はなさらないで……いざとなればどうとでもなりますから」
ライラックは父から抱き締められ、その背中を抱き返した。
「ではお投様お時間をいただきありがとうございます。おやすみなさいませ」
抱き締めていた腕を外し、ライラックは頭を下げる。
「あぁ、ゆっくり休みなさい」
父は頷いて執務机の椅子に座り直すのを見ながら、ライラックはそっと部屋を辞し自室に入ると眠れない夜を過ごしたのだった。
「そうよね……私は、大きいのよね……」
ライラックは自室でひとりごちた。
婚約破棄に父が抗議をし、婚約を破棄した手続きを取ってから7日ライラックはまだ、婚約破棄を引き摺っていた。
ライラックのドレスは必ず特注で、シャツ等は男性のものしか入らない。
男性も、どちらかと言えば優男ですらりとした見た目が好まれるため、父や兄たちのような筋骨隆々とした男性は野蛮視されてしまうが、騎士である父たちはそれが誇りだと笑い飛ばしていた。
母も、父たちの見た目は好みだと言い、子供たちが大きくなった今でもふたりは仲が良かった。
そんな父と母のような家庭を築きたいと常々思っていたライラックだったが、その夢は潰えてしまった。
父は次をと言ってくれたが、もうとうの立った行き遅れの見た目に難がある女を嫁に欲しい男などいるはずが無い。
早いうちに婚約をする風習があるため、残っているのは難があるか伴侶を亡くしてしまっているか年の差があるかなのだろう。
手紙を読んで肩を落とす父に申し訳なくなる。
もう、生涯一人でもいい。
ライラックは次の手紙を最後にして欲しいと言おうと父の部屋に向かった。
「失礼します、お父様、ライラックです」
「ライラックか、入れ。ちょうど良い所に来た。少し座って待ってくれ」
扉を開くと、父が手紙にナイフを入れるところだった。
「……まさか」
ライラックがソファーに座ると同時に父の唇から言葉が落ちた。
「どうかされましたかお父様」
置かれた紅茶に口をつけていたライラックは顔を上げる。
「いや、だが……」
何度か天井と手紙とを交互に見てから考えるように目を伏せた父はライラックをて招いた。
ティーカップをソーサーに戻し立ち上がる。
「読んでみろ」
差し出された手紙をライラックは受け取り、綺麗な文字を読み始めたのだった。
「お嬢様、お帰りなさいませ」
侍従が迎えてくれた。
「お父様はまだ起きていらっしゃるかしら……お会いしたいの」
「伺って参りますのでどうぞお部屋でお待ちください」
「悪いわね」
ライラックは無意識に溜息をつきながらロビーから自室へ向かう。
早くこの重いドレスを脱ぎたかった。
エリックが望むからと、できるだけ彼が好むようなドレスを選んでいた。
だが、エリックからドレスを贈られることはそう言えば無かったなと思い出した。
「誰か手伝って頂戴?」
少しでも細くとコルセットで腰を締め付けるスタイルは、ひとりでその紐を解くことは出来ないのだ。
部屋に入る直前に二人のメイドが来てくれ、着替えを手伝ってくれた。
コルセットが外れると安堵の吐息が漏れた。
「お嬢様、果実水です」
「ありがとう、後は大丈夫よ。遅い時間までごめんなさいね、下がっていいわ」
「では失礼いたします」
二人が部屋を出るのを確認してから髪留めや宝飾品を外しテーブルに並べる。
これは明日片付けてもらわないといけないと思いながら結い上げていた髪を解いて櫛を入れていると扉にノックがあり、父が呼んでいるとの事であったためそのまま父の書斎へと向かった。
「ライラックです」
「入りなさい」
父の声にホッとしながら、扉を開けて中に入る。
髪を下ろし眠る直前だったのだろういつもより若く見える父がソファーに座っていた。
「どうした、帰宅も早かったようだが?まずは座りなさい」
父に促され、向かい合うように座るとライラックは目を伏せた。
「お父様、本日エリック様より婚約破棄の話がございました……わたくしの見目が良くない事が原因との事でしたので、お父様に相談をすると持ち帰りました」
そう告げると、一瞬父はきょとんとしてからわなわなと拳を震わせた。
「本当にそう言われたのか?」
「はい。性格の不一致であれば何とかできたかもしれませんが、見た目の事であればわたくしにはどうする事もできませんので……」
悲しいが、仕方がない。
「ライラの何処が悪いと言うのだ!」
「……わかりませんわ、ただ、エリック様の好みではなくなってしまったのかと」
本当の事を言えば、お父様もお母様も悲しむのはわかっている。
だからライラックはその事を隠した。
「おそらく近日中にはクレマチス伯爵家より婚約解消の書類がお父様あてに届くと思いますので……まずは一報をと思いましたの、申し訳ございません」
ライラックは深く頭を下げた。
カタンと椅子の音がして、顔を上げると父が目の前にいた。
「謝る必要はない。明日、こちらから正式に抗議をする。心配するな」
「いえ、お父様……エリック様には他に好いた方がいらっしゃると聞きましたし、それならば解消も仕方ないかと」
貴族たるもの政略結婚も一般的であるためライラックもその心積りはあったのだ。
エリック様が後から側室を娶る事もあるだろうと。
「わかった、ならばもっと良い縁談を見つけてきてやろう」
「えぇ、お父様……無理はなさらないで……いざとなればどうとでもなりますから」
ライラックは父から抱き締められ、その背中を抱き返した。
「ではお投様お時間をいただきありがとうございます。おやすみなさいませ」
抱き締めていた腕を外し、ライラックは頭を下げる。
「あぁ、ゆっくり休みなさい」
父は頷いて執務机の椅子に座り直すのを見ながら、ライラックはそっと部屋を辞し自室に入ると眠れない夜を過ごしたのだった。
「そうよね……私は、大きいのよね……」
ライラックは自室でひとりごちた。
婚約破棄に父が抗議をし、婚約を破棄した手続きを取ってから7日ライラックはまだ、婚約破棄を引き摺っていた。
ライラックのドレスは必ず特注で、シャツ等は男性のものしか入らない。
男性も、どちらかと言えば優男ですらりとした見た目が好まれるため、父や兄たちのような筋骨隆々とした男性は野蛮視されてしまうが、騎士である父たちはそれが誇りだと笑い飛ばしていた。
母も、父たちの見た目は好みだと言い、子供たちが大きくなった今でもふたりは仲が良かった。
そんな父と母のような家庭を築きたいと常々思っていたライラックだったが、その夢は潰えてしまった。
父は次をと言ってくれたが、もうとうの立った行き遅れの見た目に難がある女を嫁に欲しい男などいるはずが無い。
早いうちに婚約をする風習があるため、残っているのは難があるか伴侶を亡くしてしまっているか年の差があるかなのだろう。
手紙を読んで肩を落とす父に申し訳なくなる。
もう、生涯一人でもいい。
ライラックは次の手紙を最後にして欲しいと言おうと父の部屋に向かった。
「失礼します、お父様、ライラックです」
「ライラックか、入れ。ちょうど良い所に来た。少し座って待ってくれ」
扉を開くと、父が手紙にナイフを入れるところだった。
「……まさか」
ライラックがソファーに座ると同時に父の唇から言葉が落ちた。
「どうかされましたかお父様」
置かれた紅茶に口をつけていたライラックは顔を上げる。
「いや、だが……」
何度か天井と手紙とを交互に見てから考えるように目を伏せた父はライラックをて招いた。
ティーカップをソーサーに戻し立ち上がる。
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差し出された手紙をライラックは受け取り、綺麗な文字を読み始めたのだった。
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