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29話
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「ベルナルド様、婚約の話をお受けしたいと思います」
こう言うときにどうしたらいいかわからないが、フェンリエッタは自宅のサロンでお茶を飲みながらそう切り出した。
座って紅茶を飲んでいたベルナルドが、ガタンと椅子を鳴らして立ち上がる。
「本当に!?」
「はい。まだお父様には伝えておりませんので、正式な手続きは後日になるとは思いますけれど、ベルナルド様がまだ私でいいと思っているなら…」
「勿論です」
「ありがとうございます…このあとお父様にはご報告しておきますわ」
「いえ、私が。良ければ一緒に報告をしましょう」
「はい」
簡単に決まってしまった婚約の話。
こんなにすんなりと決まるなどとは思わなかった。
「ベルナルド様、私は…何もなければベルナルド様に嫁ぐ事になると思いますが、ベルナルド様の国に行くことになりますわよね?」
「えぇ」
「なので、できたらベルナルド様の国の事を知りたいのです。知らないことばかりなので」
花嫁修業はそれなりにしてきたつもりではあるが、嫁ぎ先が違えば内容も変わることだろう。
「わかりましたが、必要はありませんよ…歴史を学んでいただけるのならば、歴史書を用意しましょう…」
優しいベルナルドに、婚約者とはこういうものなのかと思ってしまう。
フェルディナンドはどうだったか。
こんな優しい言葉を掛けられたことがあったか。
幼い頃には仲がよかったが、学院に入る頃には挨拶くらいの接点しかなかったように感じる。
だが、それでも仕方ないと思っていた。
そんなものだと割りきっていた。
でも、もしかして違うの?
「はい…」
「侯爵様がお戻りになるのが待ち遠しいな…」
椅子に座り直したベルナルドが静かにお茶を飲み始める。
平静を装っているが、指先が小さく震えて、ティーカップがカタカタと鳴っているのに気づいて、ベルナルドが自分の手を押さえた。
「柄にもなく緊張してしまっているのですかね…恥ずかしい」
「私も、ベルナルド様のご家族にご挨拶をしなければならないのですね…」
どういう風に紹介をされるのだろうか。
そんなことを考えながら、ガタンと馬車が着いた音を聞いた。
ベルナルドは立ち上がりフェンリエッタに腕を差し出す。
それを受けて立ち上がり、父親である侯爵を待った。
こう言うときにどうしたらいいかわからないが、フェンリエッタは自宅のサロンでお茶を飲みながらそう切り出した。
座って紅茶を飲んでいたベルナルドが、ガタンと椅子を鳴らして立ち上がる。
「本当に!?」
「はい。まだお父様には伝えておりませんので、正式な手続きは後日になるとは思いますけれど、ベルナルド様がまだ私でいいと思っているなら…」
「勿論です」
「ありがとうございます…このあとお父様にはご報告しておきますわ」
「いえ、私が。良ければ一緒に報告をしましょう」
「はい」
簡単に決まってしまった婚約の話。
こんなにすんなりと決まるなどとは思わなかった。
「ベルナルド様、私は…何もなければベルナルド様に嫁ぐ事になると思いますが、ベルナルド様の国に行くことになりますわよね?」
「えぇ」
「なので、できたらベルナルド様の国の事を知りたいのです。知らないことばかりなので」
花嫁修業はそれなりにしてきたつもりではあるが、嫁ぎ先が違えば内容も変わることだろう。
「わかりましたが、必要はありませんよ…歴史を学んでいただけるのならば、歴史書を用意しましょう…」
優しいベルナルドに、婚約者とはこういうものなのかと思ってしまう。
フェルディナンドはどうだったか。
こんな優しい言葉を掛けられたことがあったか。
幼い頃には仲がよかったが、学院に入る頃には挨拶くらいの接点しかなかったように感じる。
だが、それでも仕方ないと思っていた。
そんなものだと割りきっていた。
でも、もしかして違うの?
「はい…」
「侯爵様がお戻りになるのが待ち遠しいな…」
椅子に座り直したベルナルドが静かにお茶を飲み始める。
平静を装っているが、指先が小さく震えて、ティーカップがカタカタと鳴っているのに気づいて、ベルナルドが自分の手を押さえた。
「柄にもなく緊張してしまっているのですかね…恥ずかしい」
「私も、ベルナルド様のご家族にご挨拶をしなければならないのですね…」
どういう風に紹介をされるのだろうか。
そんなことを考えながら、ガタンと馬車が着いた音を聞いた。
ベルナルドは立ち上がりフェンリエッタに腕を差し出す。
それを受けて立ち上がり、父親である侯爵を待った。
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