完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。

梅花

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75話

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「先触れはしたのでしょう?何処かで行き違いになったのかと思いますから。誰のせいでも無いのでしょう。騎士様……大変申し訳ございませんが、シルフェ騎士団長様にルーカスが参りましたとお伝えください。こちらは私が焼いたパウンドケーキですので皆様でどうぞ」
フェイが開けてくれた馬車のドアから降りると、俺は目の前の騎士に頭を下げた。
手紙とペンは預けたくはなく、バスケットを差し出し俺は笑みを浮かべる。
躊躇いながらもバスケットを受け取った騎士によろしくお願いしますともう一度頭を下げた所ですぐ側に馬が止まった。
「ルーカス嬢?いや、ルーカス様」
馬上から声が掛かりそちらを見上げると其処に居たのはアサド様だった。
「アサド様、ご無沙汰しております」
ひらりと軽快なステップで馬から降りたアサド様は俺に騎士の礼をとる。
慌てたのは俺と傍に居た騎士達で。
「アサド様、いけません……俺なんかに」
「シルフェ団長の奥方になる方なのですから」
良く通る声。
それはシルフェ様と同じよう他人に聞かせる為の声だ。
「でも、まだ違いますので。どうか……あの、これをシルフェ様にお渡しいただけますか?」
アサド様なら託しても大丈夫だろうと持ってきた手紙とペンの包みをそっと差し出して渡して貰えるようお願いした。
「手紙の内容は詳しくは言えませんが、こちらはシルフェ様が呼ばれた件の情報です。それと、こちらは使わなければ一番だと思うのですが有事の際に……シルフェ様がどうにも出来なくなった時に開けて下さるよう伝言をお願い致します」
俺は、予めフェイに渡して置いた封筒を返してもらいアサド様に差し出した。
「お預かりいたしますが、団長にはお会いして行かないのですか?」
「はい」
敷地に入ることが出来ないとは言えない。
もし、アサド様に迷惑を掛けてしまったらと笑みを浮かべて誤魔化した。
「団長はルーカス嬢がいらっしゃるのはご存知なのですか」
「手紙で伝えたのですが……もしかしたら行き違いに」
「おい、急いで団長に来客だと走れ!大至急だ。ルーカス様、私が先導しますのでまずは馬車を馬車止めに。こちらです。ケーキと手紙等は一度お返し致します。馬車に戻ったら着いてきてください」
最後の一言はフェイに向けた言葉らしく、フェイがバスケット等を受け取るとアサド様はひらりと馬に跨る。
それを見て俺は慌てて馬車に戻った。
大丈夫だと、馬車の窓から手を振ると頷いたアサド様がゆっくりと馬を進めていく。
馬車もそれを追うようにして追従するのだった。
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