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アテナたんと定置網漁
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堅物息子が何やら試作品を担いでいって半刻ほど。意気揚々と何やらジタバタ動いている網の塊を担いで戻って来た。脳天にアテナを貼り付けたままで。
「父上、大漁ですよ」
「たいりょうです!!いきがいいのです!!」
イイ笑顔で上機嫌に見せてくれた、網の中でジタバタと激しくもがく「獲物」は、もちろん魚などではなく……
「むがー、むがむが、む~~!!!(テメエ何しやがんだ、さっさと離せ!!!)」
「んむぅ、むぅぅ、むぅぅ(ねぇアナタちょっとした出来心なのよ、赦してちょうだい)」
言わずと知れた不倫カップルである。二人とも全裸で、あらぬところがつながったままだ。あまりに間の抜けた姿に笑いが巻き起こり……はしなかった。
何しろ我が正妃ヘラがずっと苦虫を噛み潰したような顔で押し黙っているのだ。ピリピリした空気に気おされ、ごく一部を除いては恐々と神々の女王の顔色を窺っている。
「うっわ、兄上だっさ。さすがに退くわ~」
その数少ない例外の一人、光明神がやたらとキラキラしたエフェクトをまき散らしながら軽薄な口調で言った。ワシの息子たちの中でもアレスと並んで一二を争うイケメンだが、芸術家肌のコイツは血生臭い激戦が大好きな脳筋闘神とは折り合いが悪い。逆に、太陽神と共に乗り回す戦車の整備や改造をしてくれる堅物息子のことは慕っている。
当然の事ながらこの場は全面的に堅物息子の味方だ。
「まったくもって穢らわしい......同じ十二神とは思われたくありません」
吐き捨てるように言うのは男嫌いで有名な月光神。ただでさえ性行為を毛嫌いしているのだ。まして夫の留守を狙っての不貞を働き、そのままの姿を晒している性愛女神に嫌悪を隠し切れないのも致しかたない。
「おい伝令神、お前あの尻軽女神と仲良しだろう?兄上はどうやら気分が殺がれたようだ、代わって差し上げたらどうだ?」
「いえいえ、美女神様はこの期に及んでも闘神殿と離れがたいようで。私は彼ほど閨の技に自信がございませんのでご遠慮申し上げます」
からかう光明神に伝令神が皮肉たっぷりに答えると、それまで笑いをこらえていた神々がたまらず噴き出した。恥をかかされた闘神は怒りのあまりしゃにむに暴れ、ついに頑丈な網を引きちぎって、そのまま全速力で遁走する。
「……あ、逃げた」
後に残されたのは、やはり全裸のままの性愛女神。美と色香の他に取り立ててとりえのない彼女は逃げ出すわけにもいかず、愛想笑いで必死にごまかしている。網の切れ端を集めて何とか身体に巻き付け、身体を隠そうとしているが……しょせんは網だからなあ……
「とにかく、これだけ派手に不貞を働いたんだ。賠償金を払って離縁する他あるまい」
嘆息しながら海洋神が言い放った。結婚の仲人を引き受けた我が正妃は静かに怒り狂っている。
「追って沙汰するので、今日のところはいったん帰宅するように」
冷たく言い放たれた海洋神の言葉にこくこくと頷くと、尻軽女神はよたよたと逃げ出した。
「父上、大漁ですよ」
「たいりょうです!!いきがいいのです!!」
イイ笑顔で上機嫌に見せてくれた、網の中でジタバタと激しくもがく「獲物」は、もちろん魚などではなく……
「むがー、むがむが、む~~!!!(テメエ何しやがんだ、さっさと離せ!!!)」
「んむぅ、むぅぅ、むぅぅ(ねぇアナタちょっとした出来心なのよ、赦してちょうだい)」
言わずと知れた不倫カップルである。二人とも全裸で、あらぬところがつながったままだ。あまりに間の抜けた姿に笑いが巻き起こり……はしなかった。
何しろ我が正妃ヘラがずっと苦虫を噛み潰したような顔で押し黙っているのだ。ピリピリした空気に気おされ、ごく一部を除いては恐々と神々の女王の顔色を窺っている。
「うっわ、兄上だっさ。さすがに退くわ~」
その数少ない例外の一人、光明神がやたらとキラキラしたエフェクトをまき散らしながら軽薄な口調で言った。ワシの息子たちの中でもアレスと並んで一二を争うイケメンだが、芸術家肌のコイツは血生臭い激戦が大好きな脳筋闘神とは折り合いが悪い。逆に、太陽神と共に乗り回す戦車の整備や改造をしてくれる堅物息子のことは慕っている。
当然の事ながらこの場は全面的に堅物息子の味方だ。
「まったくもって穢らわしい......同じ十二神とは思われたくありません」
吐き捨てるように言うのは男嫌いで有名な月光神。ただでさえ性行為を毛嫌いしているのだ。まして夫の留守を狙っての不貞を働き、そのままの姿を晒している性愛女神に嫌悪を隠し切れないのも致しかたない。
「おい伝令神、お前あの尻軽女神と仲良しだろう?兄上はどうやら気分が殺がれたようだ、代わって差し上げたらどうだ?」
「いえいえ、美女神様はこの期に及んでも闘神殿と離れがたいようで。私は彼ほど閨の技に自信がございませんのでご遠慮申し上げます」
からかう光明神に伝令神が皮肉たっぷりに答えると、それまで笑いをこらえていた神々がたまらず噴き出した。恥をかかされた闘神は怒りのあまりしゃにむに暴れ、ついに頑丈な網を引きちぎって、そのまま全速力で遁走する。
「……あ、逃げた」
後に残されたのは、やはり全裸のままの性愛女神。美と色香の他に取り立ててとりえのない彼女は逃げ出すわけにもいかず、愛想笑いで必死にごまかしている。網の切れ端を集めて何とか身体に巻き付け、身体を隠そうとしているが……しょせんは網だからなあ……
「とにかく、これだけ派手に不貞を働いたんだ。賠償金を払って離縁する他あるまい」
嘆息しながら海洋神が言い放った。結婚の仲人を引き受けた我が正妃は静かに怒り狂っている。
「追って沙汰するので、今日のところはいったん帰宅するように」
冷たく言い放たれた海洋神の言葉にこくこくと頷くと、尻軽女神はよたよたと逃げ出した。
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