頭が痛すぎるのでとりあえず斧でかち割ってみたら中からフルアーマー美少女が出てきた件

歌川ピロシキ

文字の大きさ
14 / 23

アテナたんと定置網漁

しおりを挟む
 堅物息子ヘパイストスが何やら試作品を担いでいって半刻ほど。意気揚々と何やらジタバタ動いている網の塊を担いで戻って来た。脳天にアテナを貼り付けたままで。

「父上、大漁ですよ」

「たいりょうです!!いきがいいのです!!」

 イイ笑顔で上機嫌に見せてくれた、網の中でジタバタと激しくもがく「獲物」は、もちろん魚などではなく……

「むがー、むがむが、む~~!!!(テメエ何しやがんだ、さっさと離せ!!!)」

「んむぅ、むぅぅ、むぅぅ(ねぇアナタちょっとした出来心なのよ、赦してちょうだい)」

 言わずと知れた不倫カップルアレスとアフロディーテである。二人とも全裸で、あらぬところがつながったままだ。あまりに間の抜けた姿に笑いが巻き起こり……はしなかった。
 何しろ我が正妃ヘラがずっと苦虫を噛み潰したような顔で押し黙っているのだ。ピリピリした空気に気おされ、ごく一部を除いては恐々と神々の女王ヘラの顔色を窺っている。

「うっわ、兄上だっさ。さすがに退くわ~」

 その数少ない例外の一人、光明神アポロンがやたらとキラキラしたエフェクトをまき散らしながら軽薄な口調で言った。ワシの息子たちの中でもアレスと並んで一二を争うイケメンだが、芸術家肌のコイツは血生臭い激戦が大好きな脳筋闘神アレスとは折り合いが悪い。逆に、太陽神ヘリオスと共に乗り回す戦車チャリオットの整備や改造をしてくれる堅物息子ヘパイストスのことは慕っている。
 当然の事ながらこの場は全面的に堅物息子ヘパイストスの味方だ。

「まったくもってけがらわしい......同じ十二神とは思われたくありません」

 吐き捨てるように言うのは男嫌いで有名な月光神アルテミス。ただでさえ性行為を毛嫌いしているのだ。まして夫の留守を狙っての不貞を働き、そのままの姿を晒している性愛女神アフロディーテに嫌悪を隠し切れないのも致しかたない。

「おい伝令神ヘルメス、お前あの尻軽女神アフロディーテと仲良しだろう?兄上はどうやら気分が殺がれたようだ、代わって差し上げたらどうだ?」

「いえいえ、美女神アフロディーテ様はこの期に及んでも闘神アレス殿と離れがたいようで。私は彼ほど閨の技に自信がございませんのでご遠慮申し上げます」

 からかう光明神アポロン伝令神ヘルメスが皮肉たっぷりに答えると、それまで笑いをこらえていた神々がたまらず噴き出した。恥をかかされた闘神アレスは怒りのあまりしゃにむに暴れ、ついに頑丈な網を引きちぎって、そのまま全速力で遁走とんそうする。

「……あ、逃げた」

 後に残されたのは、やはり全裸のままの性愛女神アフロディーテ。美と色香の他に取り立ててとりえのない彼女は逃げ出すわけにもいかず、愛想笑いで必死にごまかしている。網の切れ端を集めて何とか身体に巻き付け、身体を隠そうとしているが……しょせんは網だからなあ……

「とにかく、これだけ派手に不貞を働いたんだ。賠償金を払って離縁する他あるまい」

 嘆息しながら海洋神ポセイドンが言い放った。結婚の仲人を引き受けた我が正妃ヘラは静かに怒り狂っている。

「追って沙汰するので、今日のところはいったん帰宅するように」

 冷たく言い放たれた海洋神ポセイドンの言葉にこくこくと頷くと、尻軽女神アフロディーテはよたよたと逃げ出した。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

処理中です...