頭が痛すぎるのでとりあえず斧でかち割ってみたら中からフルアーマー美少女が出てきた件

尻軽女神と逆恨み

「ああもう……あのクッソ出歯亀太陽神ヘリオスめ……っ。あいつが告げ口しなければあの鈍感旦那ヘパイストスが勘付くこともなかったのに……」

　全裸で、しかもあらぬところがつながったままの姿でオリュンポス十二神の前に晒される羽目になった性愛女神アフロディーテ。あの屈辱はこの世の終わりまで忘れられそうにない。挙句の果てに、結婚の仲介をした神々の女王ヘラの顔に泥を塗ったと彼女の怒りを買ったのだ。今後ほとぼりが冷めるまでの数世紀は「おしおき」と称して何をされるかわかったものではない。

　結局、大海神ポセイドンの仲裁により、尻軽女神アフロディーテは堅物鍛冶神ヘパイストスと離婚することになった。それは良いのだが、莫大な賠償金を浮気者カップルアレスとアフロディーテが支払うことになった。

「冗談じゃないわ。この美の化身アフロディーテがあのクッソつまんない不細工ヘパイストスと結婚してやっただけでもいくら感謝されても足りないくらいなのに」

　どう考えても自業自得なのに、太陽神ヘリオスと元旦那ヘパイストスを恨み続ける尻軽女神アフロディーテ。実は浮気の件は太陽神ヘリオスが告げ口したわけではなく、たまたま現場を見てしまったアテナがとんちきな言動に走ったため事実確認にきた本人ヘパイストスがやはり現場を見てしまっただけなのだが。ワシも現場にいたため、うかつにそれを言うとどちらからも恨まれそうな悪寒がするので黙っておくことにする。沈黙は金、多弁は銀。

「とにかくあいつら何とかぎゃふんって言わせなきゃ……絶対におさまらない……」

　ワシが見ている事にも気付かずぶつぶつ恨み言を零し続ける性愛女神アフロディーテの姿はかなりコワい。正直、美しさも色気も一切感じられない。ちなみに知性と品性は元々感じられないので問題ない。

「まずはあのクッソ太陽神ヘリオスから目に物みせてやるわ……覚悟してなさいよ……」

　あぁ、光明神アポロン相手じゃお前さんアフロディーテ程度の美貌じゃ動じないもんな。かといって、鍛冶神ヘパイストス相手じゃ、なまじ毎日槌ふるってて無駄に腕力溢れているうえに天上界オリュンポスの便利な生活の大半がヤツの発明によるものだからシンパも多い。どちらも本気で敵に回すと自分の首を絞めるのがわかっているのだろう。

　まだ辛うじて勝ち目がありそうな太陽神ヘリオスに目を付けたのだろうが……一体何を企んでいるのか。小賢しい馬鹿の思い付きほど面倒なものはない。また厄介なことになりやしないかと背筋が凍る思いをしたワシであった。