輝く泉

歌川ピロシキ

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自分に帰る

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「まったく…何なのよ…」

 一人取り残された私の呟きは優しい夜風にふわりと溶けた。苛立ち紛れに泉の水をけ飛ばすが、波紋がゆるりと広がるだけで、彼の姿は現れない。

「……帰ろう」

 結局、願いをかなえてくれる精霊なんていなかった。忘れたい記憶も消せなかった。何もかもうまくいかない私はやっぱり運が悪い。

「本当に?」

 柔らかな声に尋ねられた気がした。

「本当に運が悪いだけ?君自身の選択は?」

 本当はわかってる。無数に訪れる巡り合わせの中から、見映えのするもの、マウントを取れそうなものを選んできた。その結果がパワハラ上司や不毛なマウント合戦、顔だけが取り柄のDV彼氏だ。何もかも見る目のない私のせい。文句を言うだけで全て忘れてしまえば、何度でも同じことを繰り返す。嫌な経験だって次に同じ過ちを犯さぬための大事な教訓なのだ。

 そう気持ちを切り替えると、ひときわ大きな光が私の目の前に飛んできた。そのまま案内するかのようにふよふよとゆっくり飛び回る。

 誘われるまま階段を上り、山の斜面を下ると、眼下には街灯に照らされた見覚えのある宿の看板。

「ありがとう」

 ここまで連れてきてくれた親切な「光」にお礼を言って、もと来た世界に歩き出した。嫌な記憶も、愚かな自分も全て抱きしめたまま。

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