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森の王の不出来な息子(1)
しおりを挟む「シュネー、また失敗したの?」
「キルシュ姉さん……」
「おかしくない? いつまで経ってもそんな種一つまともに育てられないなんて」
この森の妖精は、髪や瞳に緑を宿し、植物たちを育む力を持っている。にもかかわらず、白い髪に白い肌、赤い瞳に生まれついた彼は、木々を育むどころか、小さな草の種を芽吹かせることすら出来ない。
「ごめんなさい……」
「別に、責めてるわけじゃないのよ。あんたが薄気味悪い出来損ないなのは生まれつきなんだし」
「……」
「でもね、出来損ないなら出来損ないなりに努力ってものが要るんじゃないの?」
「……はい」
「森の王の息子がそんな事で恥ずかしくないわけ? なにもあたしみたいに枯れ木に花を咲かせろって言ってる訳じゃないのよ。あんたは優秀なあたしとは違うんだから」
「……はい」
「でもね、草の芽吹きなんて、子供だって簡単にできるわよね? こんなことも出来ないなんて、怠けすぎにもほどがあるんじゃないの?」
弟がおとなしく言われっぱなしなのをいいことに、姉は一気にまくしたてる。うつむいたままの弟がどんな表情をしているかなんておかまいなしに。
「……ごめんなさい」
「あんたが出来るのは気色悪いカビやキノコを生やすだけ。そんなの、この美しい森には要らないわ。いえ、あっちゃいけないのよ」
「……っ」
姉のあまりの暴言に、弟はついに涙ぐんだ。
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