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森の王の不出来な息子(2)
しおりを挟む「ベソベソしないでよ、気持ち悪い」
「……はい」
「そういえば、あんたに寄って来るのも気持ち悪い蟲ばっかよね。あんたのせいで私がどんだけ恥かいてるかわかってんの?」
「……わかりません」
「何が悲しくてこのあたしが……枯れ木だってよみがえらせられる、森の女神の使いとまで言われるこのあたしが。そこらのただの凡庸な連中に『出来損ないの弟を持ってかわいそう』とか、『少しは弟の面倒見てやったらどうだ』とか、言われなきゃなんないのよ」
「申し訳ありません」
「あんたね、本気で申し訳ないと思ってる? あたしがあんたのせいでどれだけ恥かかされてるか、どんなにひどい目に遭わされてるのか、本当にわかってんの?」
キルシュに弟をいじめてるつもりは全くない。ただ、不出来な彼のせいで、優秀な自分がどれほどイヤな思いをしているか、教えてやっているだけだ。
だから、うつむいたままただ謝るだけの弟に苛立ちはつのる一方で、どんどん声は大きく上ずっていく。もうほとんど怒鳴り声と言っていいくらいだ。
「出来損ないのあんたも、気持ち悪い蟲やキノコも、この綺麗な森にはいらないの! いいえ、いちゃいけないのよ!! まともな妖精になるまで二度とあたしの前に顔を見せないで!!!!」
「……はい」
もはや金切声としか言いようのないヒステリックな叫びを弟に浴びせると、小さくうなずく彼を「ふんっ」と鼻を鳴らしてねめつけた。あごをあげ、眉をしかめてほとんど土下座するようにうずくまる弟を見下ろし、傲然と腕を組む。
これだけ言ってやれば、いくら馬鹿な弟でも発奮して少しはましな妖精になるはずだ。こんなできそこないにすら貴重な時間を割いてやって教育してやるなんて、自分はなんと心優しい姉だろう。いくら感謝されても足りないくらいだ。
キルシュは自らにまとわせた美しい蝶たちとともに意気揚々と引き揚げた。弟が涙をこらえて森を去ったことにも気づかずに。
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