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本編
ピンク頭と断罪パーティー
ショックを受けた様子の二人には悪いのだけど、この衝撃が醒めやらぬ間に校舎裏の動画も見てもらおう。
懲りずにアマストーレ嬢を呼び出して一方的に吠えているエステルが映っている。
『なんなのよアンタは!?悪役令嬢のくせにイジメもしてこないし階段じゃ自分が落ちて邪魔するしっ!!
あげくにヴィゴーレにお姫様抱っことかわけわかんない!!あれはあたしのイベントなのっ!!お高くとまった公爵令嬢の癖して人のもの盗って恥ずかしくないわけっ!?』
『え……?えっと……??咄嗟の事でしたがあのままじゃクリシュナン嬢が大けがをしてしまうと思って……
うっかり自分が落ちてしまったのはお恥ずかしい限りですが、ポテスタース卿が助けてくださったのはたまたまです。なぜそんなにお怒りなのかわかりません』
かわいそうに、アマストーレ嬢はわけがわからなくてオロオロしてるよ。実は意味不明な言いがかりに怯えているようで、よく見るとアメジストみたいな瞳が潤んでいる。
エステルはよほど階段で罠にはめ損ねたのがお気に召さなかったのだろう。音質が悪く途切れがちだがキンキンした罵詈雑言がひっきりなしに録れている。
『何イイ子ぶってんのっ!?あのイベントはあたしのなのよ、あたしのっ!!
いい、ヴィゴーレにお姫様抱っこで助けられるのも、そのあと保健室で初キスするのもあ・た・し。ヒロイン様のこのあたしなの。悪役令嬢のアンタなんかお呼びじゃないのっ!!
ただでさえお前のせいで攻略が進なくて大迷惑してるのにっ!っざっけんなっ!!
断罪パーティーで婚約破棄されて処刑されるためだけに存在する悪役令嬢のくせにっ!!!』
「どうでもいいけど、僕はどちらともキスしてないし、これからもしないと思うよ」
さすがにあんな戯言を信じるとは思えないけど、念のため身の潔白を主張しておく。
それにしても、目を血走らせ、喉も張り裂けんばかりにぎゃんぎゃんと喚きたてるエステルの貌は醜く歪み、いつもの可憐な姿は見る影もない。
『おっしゃることが全然わかりませんわ……』
涙目で呟くアマストーレ嬢の心境は僕たち三人と同じく疑問符でいっぱいだろう。
『そりゃ頭の出来が違いますからぁ?アンタごときじゃわかんないかもねっ!!』
「ふふんっ」という鼻息が聞こえてきそうなドヤ顔で言い捨てるエステルの顔を、オピニオーネ嬢は呆然と、コニーは呆れたような冷たい目で眺めている。
「エステルさんは一体なにを言ってるのでしょう……」
「わかるわけないだろう……むしろわかったら恐ろしすぎる……」
吐き捨てるようにボヤいたコニーの言葉は僕たち三人の心を何より正確にあらわしていたと思う。今ここに、みんなの心が1つになった。
このまま怯えていても話が進まないので、ずっと引っかかっていたことを訊いてみる。
「なんかエステルがアハシュロス公女のこと『断罪パーティーで婚約破棄されて処刑されるための存在』とか言ってたけど……断罪パーティーって何だろう?」
初めてエステルがアハシュロス公女を罵倒している時にも言っていた『断罪パーティー』。
エステルは心待ちにしている様子だが、なんとも不穏な響きの上、セットで語られる「処刑」という言葉が不安をそそる。
「エステルが卒業記念パーティーで公女による嫌がらせを明らかにしたいって言ってたからそれの事だろう?全校生徒の前でさらし者にするのは剣呑だから、きちんと証拠を揃えて裁判で訴えるなり通報するなりした方が良いとさんざん言ったのだが聞く耳を持たん。
おかしいと思っていたのだが、何か企んでいたんだな」
「やっぱりそれだよね。……で、コレ見た感想として、エステルが言ってる『イジメ』って本当にあったと思う?
エステルは『イジメてこない』って言ってたけど……」
「全てではないかもしれませんが、誇張が大きいように思います」
「でっちあげだと思っていたが……この様子ではむしろ自作自演だろうな」
「だよね。……さて、これからどうしよう?」
「「……」」
三人で頭を抱えてしまう。
エステルの目論見について、うすうす察しはついているものの、いきなりそれを認めることも難しい。
彼女が罵詈雑言を並べながら鬼の形相でいただきもののドレスを破いたり、夜叉のような形相でアハシュロス公女に支離滅裂な言いがかりをつける様をさんざん見た僕たちは無言になってしまった。
いやもう怖い。当分エステルの顔見たくない。むしろ女の子全般怖い。みんなあんなに裏表あるの?
……いやここでしょんぼりしてるオピニオーネ嬢を見る感じだと、あれが異常なんだよね?
たぶん。きっと。メイビー。……ちょっとは覚悟しておいた方がいい……?
「「「……」」」
黙っていては始まらないから今後どうするか話し合わなきゃいけないんだけど……
「「……」」
いかん。二人ともフリーズしとる。まぁ、あんなの初めて見たら頭の中真っ白だよね。
僕もフリーズしてしばらく動けなかったし。
「とりあえず、さ。当分は録画を続けることにしない?もしかすると、本当にイジメもあるかもしれないしさ」
「そうですわね。たった一日で結論を出してしまうのは早すぎますし」
「ああ。早く尻尾を出させて本当の目的を見極めないとな」
うん。オピニオーネ嬢はすっごく親身になってあげてたから、エステルが悪意に満ちていて故意にアハシュロス公女を陥れようとしているって考えたくないよね。
僕だって正直信じたくなかったし。
コニーは最初から彼女を疑っていたようだけど、さすがにここまで無茶苦茶だとは思ってなかったみたい。どこまで悪質なのかきちんと調べたいと言い出した。
とりあえず今後も証拠集めは続けることにした。エステルへのイジメの証拠なのか、エステルがやってるイジメの証拠なのかはさておくことにして。
懲りずにアマストーレ嬢を呼び出して一方的に吠えているエステルが映っている。
『なんなのよアンタは!?悪役令嬢のくせにイジメもしてこないし階段じゃ自分が落ちて邪魔するしっ!!
あげくにヴィゴーレにお姫様抱っことかわけわかんない!!あれはあたしのイベントなのっ!!お高くとまった公爵令嬢の癖して人のもの盗って恥ずかしくないわけっ!?』
『え……?えっと……??咄嗟の事でしたがあのままじゃクリシュナン嬢が大けがをしてしまうと思って……
うっかり自分が落ちてしまったのはお恥ずかしい限りですが、ポテスタース卿が助けてくださったのはたまたまです。なぜそんなにお怒りなのかわかりません』
かわいそうに、アマストーレ嬢はわけがわからなくてオロオロしてるよ。実は意味不明な言いがかりに怯えているようで、よく見るとアメジストみたいな瞳が潤んでいる。
エステルはよほど階段で罠にはめ損ねたのがお気に召さなかったのだろう。音質が悪く途切れがちだがキンキンした罵詈雑言がひっきりなしに録れている。
『何イイ子ぶってんのっ!?あのイベントはあたしのなのよ、あたしのっ!!
いい、ヴィゴーレにお姫様抱っこで助けられるのも、そのあと保健室で初キスするのもあ・た・し。ヒロイン様のこのあたしなの。悪役令嬢のアンタなんかお呼びじゃないのっ!!
ただでさえお前のせいで攻略が進なくて大迷惑してるのにっ!っざっけんなっ!!
断罪パーティーで婚約破棄されて処刑されるためだけに存在する悪役令嬢のくせにっ!!!』
「どうでもいいけど、僕はどちらともキスしてないし、これからもしないと思うよ」
さすがにあんな戯言を信じるとは思えないけど、念のため身の潔白を主張しておく。
それにしても、目を血走らせ、喉も張り裂けんばかりにぎゃんぎゃんと喚きたてるエステルの貌は醜く歪み、いつもの可憐な姿は見る影もない。
『おっしゃることが全然わかりませんわ……』
涙目で呟くアマストーレ嬢の心境は僕たち三人と同じく疑問符でいっぱいだろう。
『そりゃ頭の出来が違いますからぁ?アンタごときじゃわかんないかもねっ!!』
「ふふんっ」という鼻息が聞こえてきそうなドヤ顔で言い捨てるエステルの顔を、オピニオーネ嬢は呆然と、コニーは呆れたような冷たい目で眺めている。
「エステルさんは一体なにを言ってるのでしょう……」
「わかるわけないだろう……むしろわかったら恐ろしすぎる……」
吐き捨てるようにボヤいたコニーの言葉は僕たち三人の心を何より正確にあらわしていたと思う。今ここに、みんなの心が1つになった。
このまま怯えていても話が進まないので、ずっと引っかかっていたことを訊いてみる。
「なんかエステルがアハシュロス公女のこと『断罪パーティーで婚約破棄されて処刑されるための存在』とか言ってたけど……断罪パーティーって何だろう?」
初めてエステルがアハシュロス公女を罵倒している時にも言っていた『断罪パーティー』。
エステルは心待ちにしている様子だが、なんとも不穏な響きの上、セットで語られる「処刑」という言葉が不安をそそる。
「エステルが卒業記念パーティーで公女による嫌がらせを明らかにしたいって言ってたからそれの事だろう?全校生徒の前でさらし者にするのは剣呑だから、きちんと証拠を揃えて裁判で訴えるなり通報するなりした方が良いとさんざん言ったのだが聞く耳を持たん。
おかしいと思っていたのだが、何か企んでいたんだな」
「やっぱりそれだよね。……で、コレ見た感想として、エステルが言ってる『イジメ』って本当にあったと思う?
エステルは『イジメてこない』って言ってたけど……」
「全てではないかもしれませんが、誇張が大きいように思います」
「でっちあげだと思っていたが……この様子ではむしろ自作自演だろうな」
「だよね。……さて、これからどうしよう?」
「「……」」
三人で頭を抱えてしまう。
エステルの目論見について、うすうす察しはついているものの、いきなりそれを認めることも難しい。
彼女が罵詈雑言を並べながら鬼の形相でいただきもののドレスを破いたり、夜叉のような形相でアハシュロス公女に支離滅裂な言いがかりをつける様をさんざん見た僕たちは無言になってしまった。
いやもう怖い。当分エステルの顔見たくない。むしろ女の子全般怖い。みんなあんなに裏表あるの?
……いやここでしょんぼりしてるオピニオーネ嬢を見る感じだと、あれが異常なんだよね?
たぶん。きっと。メイビー。……ちょっとは覚悟しておいた方がいい……?
「「「……」」」
黙っていては始まらないから今後どうするか話し合わなきゃいけないんだけど……
「「……」」
いかん。二人ともフリーズしとる。まぁ、あんなの初めて見たら頭の中真っ白だよね。
僕もフリーズしてしばらく動けなかったし。
「とりあえず、さ。当分は録画を続けることにしない?もしかすると、本当にイジメもあるかもしれないしさ」
「そうですわね。たった一日で結論を出してしまうのは早すぎますし」
「ああ。早く尻尾を出させて本当の目的を見極めないとな」
うん。オピニオーネ嬢はすっごく親身になってあげてたから、エステルが悪意に満ちていて故意にアハシュロス公女を陥れようとしているって考えたくないよね。
僕だって正直信じたくなかったし。
コニーは最初から彼女を疑っていたようだけど、さすがにここまで無茶苦茶だとは思ってなかったみたい。どこまで悪質なのかきちんと調べたいと言い出した。
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*カクヨムにて先に連載しているものを加筆・修正をおこなって掲載しております